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記者会見

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『歩けない僕らは』記者会見

2019-11-11 更新

宇野愛海、堀 春菜、山中 聡、佐藤快磨監督

歩けない僕らはarukenaibokurawa 配給:SPEAK OF THE DEVIL PICTURES
11月23日(土)より新宿K's cinemaにて公開他全国順次公開
© 映画『歩けない僕らは』

 初の長編監督作品『ガンバレとかうるせぇ』が、ぴあフィルムフェスティバルで2冠を受賞し、アジア最大の映画祭である釜山国際映画祭に正式出品された佐藤快磨監督が、本年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で観客賞を受賞した、回復期リハビリテーション病院の新人理学療法士と彼女を取り巻く人々を描く新作『歩けない僕らは』が11月23日より公開されることを記念し、記者会見が行われた。

 佐藤監督の他、岩井俊二プロデュースの連続ドラマ「なぞの転校生」、 映画『罪の余白』ほかで女優として活躍中の宇野愛海、佐藤監督の『ガンバレとかうるせぇ』で初めてカメラの前に立って主演デビューを飾り、『空(カラ)の味』主演で第10回田辺・弁慶映画祭 女優賞を受賞した堀 春菜、『運命じゃない人』の他、バイプレイヤーとして映画・ドラマなどで活躍する山中 聡が登壇した。


 佐藤監督は、プロデューサーから「回復期リハビリ病院が舞台の映画を作りませんか?」「ぜひ宇野愛海さんを起用したい」というようにお題が与えられての映画作りだったため、宇野が参加した他の監督のワークショップを見学したそう。「宇野さんが目の前のことに素直に反応するようなお芝居をされていたので、頼もしかったですし、その中で宇野さんの負けん気も感じて、結果的に遥役が宇野さんに近づいていったのかと思います」と述懐した。

 佐藤監督は、宇野と一緒に回復期リハビリ病院で理学療法士さんたちを取材し、「1年目のセラピストの女の子が、担当した患者さんの希望を叶えてあげられないまま退院させてしまったというお話をされている時に、悔し涙を流されていて、ぱっと横を見たら宇野さんも涙を流されていたので、そこがリンクしました。あとは、目の前の悔し涙に対しての宇野さんと自分との差を感じ、(落合モトキさん演じる)柘植だとか違う人の悔し涙までの距離の違いみたいなものも、この映画で多面的に描けたら広がりのある映画になるのではないかと思い、ヒントになりました」と話した。

 宇野は理学療法士さんたちを取材し、「人対人のお仕事で、正解がないからこそやりがいがあって、期間が決められている中での(回復期リハビリテーションでの)リハビリは緊張感や責任感があって、それはベテランになってもずっとついてくるものなんだなというのを感じました。涙を流しながらお話ししてくださったことは、遥役の役作りとして、すごく大きくて、気が引き締まりました」と感謝していた。「一番大切なのは距離感と聞きました。回復期リハビリテーションは、その人の将来を左右する医療機関で、責任感だとか言葉では表せないものがあるんですが、温かい職業だなと思いました」と話した。


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 佐藤監督が、堀の演技を初めて見たのも他の監督のワークショップだったそうで、「当時堀さんは中学2年生だったんですけれど、大人に混じって演技のワークショップを受けていてすごいなと感心していました。その中で堀さんが号泣されていたんですけれど、その姿・エネルギーに心揺さぶられたというか、演技が上手い下手ではない違うところで、自分の中で印象に残りました。」と印象を話した。

 今回『歩けない僕らは』と同時上映される、監督の長編デビュー作『ガンバレとかうるせぇ』で堀をキャスティングした際に、運命的なことがあったそうで、「堀さんの印象が残ったまま、2年後に『ガンバレとかうるせぇ』を撮るとなって、主演をぜひ堀さんにお願いしたいと思って堀さんを検索したんですけれど、堀さんは何もやられていなくて、最初は諦めました。けれど、諦めきれなくて、撮影直前にもう一度検索してみたら、ちょうど前日にツイッターを始めていました。それでツイッターで声がけをさせていただいて、お母様と三者面談をして、秋田に撮影に来ていただきました」と運命的な再会について話した。

 堀は、『ガンバレとかうるせぇ』が初めてカメラの前に立った映画初出演作で、初主演作。そのような作品がやっと劇場公開されることについて、「映画自体もそうですけれど、私自身の思春期を覗かれるような気もして、嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちがあります。6年経って公開できるって、映画のいいところだなと思います」と答えた。


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 堀は、『歩けない僕らは』で、佐藤組に戻ってきた感想について、「佐藤監督に6年間今までどういうふうに過ごしてきたかを見られる感じがして、すごく緊張しました」と話した。

 本作は、栃木県最南端の野木町の回復期リハビリ病院で撮影されたが、山中は、野木の隣の茨城県古河出身。撮影の前日に、演じた日野課長のモデルの方にお会いして、台本にはなかったアイデアを出したそう。「日野課長役のモデルの方が、ゴッドハンドだと聞いていたので、どんなマッチョな方かと思ってお会いしたら、普通の北関東のおっちゃんで。僕の実家も近所なんで、北関東の方言やこの方の温かさをヒントに演じました。(劇中で)訛っているの僕だけなんで、どうなんだろうとも思ったんですけど」と話し、笑いを誘った。


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 監督は「脚本上は訛りだとかを書いていなかったです。山中さんに演じていただいた日野課長と、板橋駿谷さんが演じたリーダーの田口の違いを脚本上に出そうと思っていたけれど、いまいち自分の中で違いが具体的に仕上がっていなかったところを山中さんに演じていただいて、日野課長の包容力を出していただきました。柔と剛じゃないですけれど、田口がどちらかというと堅い感じで、日野課長が柔らかいという違いを出していただいて、ありがたかったです」と話した。

 日野課長と、板橋駿谷さん演じるリーダーと、宇野演じる新人と、3世代の理学療法士が居酒屋で並んで座って話しているシーンが良いと評判で、板橋駿谷は、3人並んだので、役者について先輩と話している気分だったそう。日野課長の「なんでこの仕事選んじゃったんだろう。でも辞めなかったなぁ」というセリフについて聞かれた山中は、「印象に残るすごくいいセリフなので、あまり感情を乗せないほうがいいんだろうなと思いました。あまり感情的にやっちゃうとお客さんが入ってこれないので、さらっと言ったほうがいいんだろうなと思いました」と話し、監督も、日野課長のモデルの方の話がヒントになったセリフだと話した。監督は、「取材させていただくと、新人の方からベテランの方まで本当にやりがいを持って仕事をされています。脳卒中と言っても症状がそれぞれ違います。この職業って、決して歩けるようにするだけでなくて、その先の人生も一緒に考えていかなくてはいけないので、それからの人生を共有していくような仕事に対して皆さんやりがいを感じているというのを3人の背中で表せないかなと思っていました。脚本を書いている時は自分にはリンクしていなくて、セラピストの方のやりがいを表せたらなと思っていたのですが、山中さんと板橋さんのあのお芝居を見て、広がりを作ってくださったと思います」と話した。

 本年亡くなった佐々木すみ江が患者役で出演しているが、佐藤監督は、佐々木も、“役割”になってしまったかもしれないキャラクターを“人”として立ち上げてくれたと思ったそう。「佐々木さんに演じていただいた患者・タエは、3シーン位しか登場しなく、一番書けていない、“役割”になってしまっていると思っていたんですけれど、佐々木さんに衣装合わせで細かいコートの色から提案をいただきました。お墓参りのシーンで、おじいさんとの日々みたいなものが見えたような気がしたので、佐々木さんには勉強させていただきました」と話した。

 宇野は、佐々木との思い出を聞かれ、「すごく温かくて、かっこいい方でした。遥が悩んでいて落ち込んでいる時に、一緒にお墓参りに行くシーンがあったんですけれど、遥としても前向きな気持ちになれました」と答えた。

 質疑応答では、プロデューサーから提案を受けた時の感想を聞かれて、佐藤監督は、「今まで自主映画で撮ってきたんですけれど、テーマが自分の内側から出てきたものしか撮ってきていなかったので、いつか外側にあるテーマにどうリンクできるのかという外側にある舞台を映画にしたいと言うか、しなければいけないという気持ちがあったので、ぜひ挑戦させていただきたいという気持ちがありました。同時に、脳卒中になって歩けなくなってしまった方々を歩ける自分が描くということに対するおこがましたというものがずっと消えなくて、一年弱ずっと病院で取材をさせていただいて、少しずつかき集めて作っていきました。それでも今でも描き切ったということはなくて、考え続けなくてはいけないテーマをいただいたという感覚です」と答えました。また、「(疾患によって何日入院できるという)国で決められたルールがあるということを映画の中で提示することで、”回復期リハビリ病院の映画”だと狭くなってしまうのではないかと思いました。そこよりも外の社会まで描きたかったので、数字だとかルールみたいなものはぼかして描こうと思っていました」と話した。


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 登壇している役者陣に関して、「宇野さんは強さみたいなものが弱さにも見える瞬間がこの映画に映ればいいなと思っていました。宇野さんは感受性が豊かというか、目の前のものに反応する力があるので、今回落合モトキさんと宇野さんが、打ち合わせで決めずに、現場で目の前で起きたことに反応されて、お芝居がどんどん変わっていったような感覚があるので、そこは宇野さんと落合さんの力を感じました。堀さんは、宇野さんとは違う種類の頑固で、その頑固さがこの映画で対峙できる、ぶつかるようなシーンが描けたらなというのは最初から思っていました。山中さんは頑固ではないですけれど(会場笑)、包容力で僕自身も包んでいただきました。病院に見学に来てくださって、モデルの方とお話しされた時にどういうものを見たか分からないですけれど、現場に入ってくださった時にそこに日野課長がいて、この映画を包んで下さったので、俳優さんってすごいなと思いました」と話した。

 宇野演じる遥に挫折がいっぱい降りかかることに関して聞かれた監督は、「脚本上でのラストシーンは、より大きな挫折が降りかかっていたのですが、編集をしていて、作為的に感じてしまって、自分が挫折を遥に与えているような気持ちになりまして、閉じて終わらず広がっていくラストカットにしました」と制作秘話を話した。

 「最初から短編で考えていたのか?」という質問に監督は、「長さとかは最初からは決まっていなくて、いろいろな兼ね合いで短編になっていったのですが、長編にしないのかというご意見もたくさんいただいています。自分の中でこのテーマは描き切ったという感覚はなくて、考え続けていかなくてはいけないテーマではあると思うので、『歩けない僕らは2』なのか、今後長編映画につながっていくのかなと思っています」と話した。

 「本作を楽しみにしている方々に一言お願いします」と促された宇野は、「『歩けない僕らは』は、人間臭くて、すごく繊細な作品だと思います。歩くだとか、そういった当たり前のことについて改めて考えるきっかけになるといいなと思います」と語り、記者会見は終了した。




(オフィシャル素材提供)



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