2019-11-16 更新
佐藤快磨監督
佐藤快磨監督
1989年秋田県生まれ。
2012年よりニューシネマワークショップ映画クリエイターコースを受講、『舞い散る夜』(12)、『ぶらざぁ』(13)を監督。
その後ニューシネマワークショップ制作部に所属し、初の長編監督作品『ガンバレとかうるせぇ』(14)が、ぴあフィルムフェスティバル PFFアワード2014で映画ファン賞と観客賞を受賞、第19回釜山国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど、国内外の様々な映画祭で高く評価される。
文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015」にニューシネマワークショップより推薦され、アスミック・エース制作で、『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』 (出演:太賀、岸井ゆきの)を監督。
2018年、「東映 presents HKT48×48人の映画監督たち」の監督の一人に選ばれ監督した松岡菜摘主演の『きっとゲリラ豪雨』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭に招待。また、バウムアンドクーヘンの役者を使った短編映画『ハッピーハッピーサタデー』が池袋シネマ・ロサにて公開された。
7月にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019で国内コンペティション短編部門の観客賞を受賞した映画『歩けない僕らは』が、11月23日(土)~新宿K's cinemaほかにて公開される。監督・脚本・編集の佐藤快磨監督のオフィシャル・インタビューが到着した。
■『ガンバレとかうるせぇ』について
ずっと公開したいと思っていたので、ちょっと時間はかかってしまいましたけれど、とても感慨深いです。
この作品で映画作りの面白さをとても感じましたし、映画を撮り続けていきたいと思いました。そういう意味で自分の中では原点だと思います。
撮影の2年前のワークショップで、当時中学生だった堀さんと出会いました。その時の彼女の号泣する姿が自分の中にこびりついていて、この『ガンバレとかうるせぇ』は、最初から彼女で撮りたいと思っていました。その後、準備など始動するタイミングでオファーしようと思ったんですけれど、その時は見つからなくて、撮影前にツイッターでまた探してみたら、前日に彼女が偶然ツイッターを始めていて、オファーをしました。運命的なものがあったと思います。
僕が当時バイトをしていた映画館のバイト仲間に細川君がいました。他の役者さんたちもたくさん働いていたのですが、その中でも細川君はなかなか違う雰囲気を発していたので、「一緒に映画を作らないか?」と企画の初期の段階から一緒に映画を作っていきました。元々は髪も長くてクールな印象があったので、最初はサッカー部のエース役でオファーしようと思っていたのですが、話しているうちに彼の中の熱さや泥臭さを感じて、キャプテン役をお願いしました。
11月の寒い秋田の中、夏の設定で撮ったことが大変でした。サッカーシーンは、母校のサッカー部の1年生たちに部員役で出てもらったり、秋田県サッカー協会に許可をいただいて大会を撮らせていただいたりと、リアリティは出せたのかなと思います。
堀さん演じる菜津と細川さん演じる豪の二人のシーンは、決して分かりやすく説明的には撮っていないので、関係性の変化の裏側を想像しながら観ていただけたらなと思います。
撮影が1週間しかなく、雨でも撮るしかないとなったシーンで、雷が鳴るほどの豪雨だったのですが、それが結果的にいい効果を発揮していて、ラッキーだったなと思っています。
堀さんの頭にボールが当たるシーンは、実際に本物のサッカーボールを当てています。堀さんの根性で、「痛くないです」と言いながらやってもらって。助監督も、カメラに映らないギリギリの至近距離から狙わなくてはいけないので、気合を入れて投げていたんですけれど、手がカメラに入っちゃってNGを出してしまった時は、辛そうでした(笑)。
■『歩けない僕らは』について
今まで自分の中から出てきたことや、過去にあったことなどを映画にしてきまして、外側にあるテーマを撮るというのは初めてでした。不勉強で回復期リハビリ病院という施設があること自体、知らなかったので、そういった場所を舞台に物語を描くというのは挑戦でした。
部長とリーダー2人からは、「セラピストとは」という基本的なことから教えていただき、ありがたかったです。監修があのお三方でよかったなと心から思います。
1年目の女性セラピストの方の悔し涙を見たときから、この映画がスタートしました。あの時あの涙を見ていなければ、現在の形にはならなかったと思います。そこでヒントをいただいて、1年目の女性セラピストの物語を描きたいと思いました。
患者さんがセラピストの方を逆に心配していたという話を聞いて、自分は一方的に、患者さんたちを枠にはめて想像していたんだなと反省した記憶があります。その笑顔の奥には、自分に想像できないほどのいろいろな思いがあるのだと思うのですが、それでも明るくお話をしていただいて、自分の患者さんへの視点が変わりました。「セラピストさんが患者さんを見る」という構図だと思っていたのが、一方向でなくて、双方向のコミュニケーション、視点の交わりがリハビリで生まれているというのが面白かったし、そういうものを映画の中で描いていきたいと思いました。
歩ける自分が歩けなくなってしまった方々を描くには、どういう描き方をしたらいいんだろうという答えがなかなか見つからなかったときに、セラピストの方から、「大切なのは歩けるようになることだけじゃなくて、歩いて何をするかという先まで一緒に考えてあげることが大切だ」というお話を伺いました。セラピストという仕事は決して技術だけでなく、その人のその先の人生まで一緒に考えてあげる仕事というところにより尊敬を覚えたし、なんて答えのない仕事なんだろうとも感じました。歩いて何をするかというのは歩ける自分もセラピストも患者さんも一緒なのかなと感じ、そこを脚本に描けたらと思いました。『歩けない僕らは』というタイトルも、患者さんのことだけを表しているのではなくて、セラピストの方も含め、私たちも含め、ということです。
素晴らしかったです。脚本執筆前にワークショップを見学させていただいたのが印象に残っています。お芝居に対する熱さとか、ある種、頑固な部分が見えて、それが今回書いた遥の役に反映されていったのかなという気もしますし、感受性が豊かで、目の前で起きていることを受け取る力がすごくある女優さんだなと思います。今回の映画の中ではセラピストさんの一挙手一投足だけではなくて、言葉一つひとつも繊細に拾っていかなくてはいけない役柄だったのですが、そこに宇野さんの魅力が重なればいいなと思っていました。宇野さんも目の前で起きていることをしっかり感じながら演じてくださったので、そういうものが映っていると思います。
『桐島、部活やめるってよ』で初めて落合さんのお芝居を拝見しました。作品が大好きだったこともあり、その時の印象が大変強く残っていましたが、実際お会いしてお話しすると、とても謙虚で、優しかったです(笑)。今回柘植という役は、自分で書いていて、正直演技が見えていないところがありました。特に半身麻痺の一つひとつの細かい動きは自分が不安だったところだったのですが、落合さんがそういう不安を払拭してくれたなと思います。どういった準備をされたのか細かいところは聞いていないですが、この役に誠実に向き合ってくださり、監督の想いというのもしっかり汲んでくださって、素晴らしい俳優だなと思いました。
劇団「ロロ」の舞台でお芝居を拝見していました。衣装合わせでお会いした時も明るく盛り上げてくださり、現場でもムードメーカーでいてくださって、とてもありがたかったです。自分の「こうしたい」という意見も楽しんで聞いてくださいましたし、「監督はそういうことをやろうとしていたんだね」と盛り上げてくださる心遣いもありがたくて、自分自身楽しく撮影できました。今まで僕が見たことのない板橋さんを撮れたらなというところで自分も板橋さんの胸を借りるつもりでぶつからせていただきました。
ある意味、自分が二人を見るというよりは、二人に見られているというか、「この5年でお前どう変わったんだ」と見られているような緊張感がありました。撮影が始まったら緊張はしませんでしたが、気合いは入りました。『ガンバレとかうるせぇ』で築き上げた関係性で、二人を信頼していましたし、二人も信頼してくれているのかなというのを感じながらやれて、嬉しかったです。この先も映画を共に作る仲間であり続けたいと思いました。
オーディションの時から親近感のある俳優さんで、撮影前にカフェで役についていろいろ話したのですが、安田の背景も細かく考えてくれていて、自分が教えられたことがたくさんありました。安田というのはシーン数としては少ないですけれど、柘植の背景を伝えるには大事な役割で、そこを門田君が生き生きと演じて下さり、結果的に柘植の深さみたいなところに繋がったと思うので、感謝しています。
こんなペーペーの監督を受け止めてくれるような包容力がありましたし、たくさんアイデアを出してくださいました。「北関東の方言を話す」という課長のキャラクターを山中さんが立ち上げてくださり、リーダーである田口との違いを生み出してくれたと思います。田口が剛ならば、日野課長は柔というような。大変勉強になりました。
本当に大きなものをこの作品に与えてくださったと思います。佐々木すみ江さんから映画というものだったり役者さんというものだったりを教えていただきました。佐々木さんとの衣装合わせや本番中に自分に足りないもの、自分の課題を感じ取りました。教えていただいたことをこれからも大切にして映画を作っていけたらと思います。撮影前、タエという役は、表面的な役割になってしまっているキャラクターという不安があったのですが、佐々木さんが演じてくださった瞬間に、過去を持った人物になっているのが、驚愕でした。
お墓参りのシーンは、あの映画の中でも主人公の分岐点で、軽くなりすぎてもダメだし、あまりにも意味を持ちすぎて、重くなりすぎてもダメなシーンだと思っていたんですけれど、佐々木さんの演技を見ると、亡くなったおじいちゃんとの日々が見えるような気がして、軽すぎず重すぎず、あのシーンが表面的にならなかったのは、佐々木さんのおかげだなと思います。
動きです。セラピストは施術の一つひとつの動作、落合さんだと、半身麻痺になってしまった患者さんの一つひとつの動きというのは、正直自分が演出できるのかというのはずっと不安だったのですが、そこは2人が役作りで準備をしてきてくれて、現場では医療監修でついてくれた3人がすべてのセラピストと患者さんの動きを監修して下さいました。本作は、動きから生まれてくる感情というのが絶対ある映画だと思っていたので、そこは僕以外の皆さんでこの映画にリアリティを与えてくれたと思っています。不安を皆さんのおかげで乗り越えられた気がします。
クライマックスの遥と拓殖のセリフの掛け合いは、注目してほしいなと思います。脚本上では、こういう言葉を実際に言うんだろうかという葛藤があったんですけれど、そこを2人が埋めてくれて、現実と地続きの言葉になっていたと思います。その言葉が本音なのか嘘なのか分からないということは、この映画で描きたかったことの一つなので、あのシーンを注目していただきたいです。
少なからず不安を抱えながら描いてきた題材なので、それを見ていただくというのは、とても覚悟のいることだったのですが、上映後に面白かったと言ってもらえたことに救われましたし、思っていたよりも多くの医療関係の方が観に来てくださっていて、「リアルに感じました」と言っていただき、現場の方にこの作品が届いた、その方たちに面白いと言ってもらえたということは、大変嬉しかったです。
この映画は、回復期リハビリ病院というある意味狭い場所を舞台にはしているんですけれど、歩ける私たちにも届くような広さを持った作品だと思います。『歩けない僕らは』というタイトルに込めた通り、歩ける私たちも、歩いて何をしていくのか、どう生きていくのかということをこの映画で一緒に考えていただけたら嬉しいです。
(オフィシャル素材提供)
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