2020-02-27 更新
窪田正孝、三池崇史監督
三池崇史監督×窪田正孝主演の映画『初恋』がついに、2月28日(金)より公開となる。2月25日(火)、外国特派員協会での上映会後に本作の主演・窪田正孝と監督・三池崇史が記者会見に登壇した。窪田と三池監督は会場いっぱいに集まった日本外国特派員協会に所属する記者たちからの質疑応答に応え、撮影時のエピソードや出会った当時の10年前を振り返ったり、共演した小西桜子について語るなど公開間近の本作に込めた熱い思いを語った。
上映後、会場では大きな拍手が巻き起こり熱気に包まれるなか登場した、主演の窪田正孝と三池崇史監督。まず、司会のキャレン・セバンズより、テレビドラマ「ケータイ捜査官7」(08)以来、約10年ぶりにタッグを組んだことについて質問が及ぶと、三池監督は「10年経ちましたが、常に何かの映画を作る現場にいる人間からすると止まる間もなく動き続けている。たしかに鏡を見ると10年経って歳をとったなと感じますが、窪田君はずいぶん出世したな、と。神様って冷たいなと思います(笑)」、窪田は「当時19歳で、右も左もわからない状態でカメラの前でひたすらに芝居をして、監督に届けという思いで演じていました。10年経って三池さんと会ってみると、サングラスも丸みを帯びたもので柔らかくなっていて(笑)。昔のピリッとした鋭利なものが丸くなっていて、緊張も解けたのか話しやすくなったことが一番10年の変化を感じました。錚々たる役者さんが、三池監督とやりたいと思う魅力が三池さんの現場にはあって、そんなワクワクする環境を右も左も分からない状態の一番初めに与えてもらったことは大きかったです」と回答。その後、協会員である記者たちからの質疑応答に応えた。
窪田正孝: アクション・シーンを一番覚えています。日にも当たらず、夜行性のように夜だけ働いていました。車の中の撮影では監督もカメラに映らない場所にちゃんと乗っていて、カー・アクションの方がアクセルを全開に踏んで運転する中で何度もガラスに頭をぶつけそうになりながら、体で体験して巻き込まれていくことってすごく大変だけど、後になって良い思い出になりました。
窪田正孝: いろいろな映画祭に行って“世界の三池監督”だと思ったし、この映画を撮っているときは、海外のマーケティングを意識したことはなかったけど、実際に現場で汗水たらして作った役が三池監督の手によって編集されたものが海を渡って、カンヌやマカオにも行かせてもらって、今日もそうですが、三池監督に連れてきてもらったという感覚でしかなくて。一役者としてこの作品に携われて、監督と主役として出来たこの喜びが全てであり、感謝です。
三池崇史監督: ハリウッドのプロデューサーと組むということは明確に違います。ジェレミー・トーマスというプロデューサーは日本の映画をとてもよく理解してくれているし、日本人が撮るに相応しい撮り方で映画に取り組んでいくことを後押ししてくれて、それで出来上がった作品を世界に持って出ていこうという基本姿勢で、かなり特殊なプロデューサーだと思います。そういう方と出会えて、一緒に映画を作れることは自分にとっては幸せで、ありがたい仲間という感じです。だからいつもと同じ環境で作れるし、いつも以上に自由を与えてくれる。意見も、あぁなるほど!という提案をいつも出してくれるけど、最後に判断するのはあなただからね、と委ねてくれました。
三池崇史監督: 正直に言いますと、クリエイティブな行為というと少し語弊があります。日本映画は皆さんご存じのようにソフトで、毒にも薬にもならない、みんなが安心して見られるものが多い。そして、最も海外と違うのは撮影時の危険なリスクを避ける。いまの日本は若い子がスタントマンに憧れるような環境ではなくなってしまっているので、日本のスタントマンはとても高齢になってしまいました。ベテランばかりで、腕のいい人たちは60歳を超えてしまっているので、あの高さから落ちたら腰にかなり負担が来る(笑)。だからといって、脚本はチャレンジしなくてはならない。ひとつの方法として、アニメーションを使いました。危険なことを脚本から削ろうという行為に対する反抗でもあります。
窪田正孝: 羨ましかったですね。ただ、キャストの中で一番準備したのが僕なのは間違いないです(笑)。
窪田正孝: 1ヵ月ちょっと前からほぼ毎日ジムに通い、2時間くらいひたすら打ち込みをし、縄跳びを飛び、沢山お肉を食べて見た目を良くしました。
三池崇史監督: まず、『初恋』というタイトルと「さらば、バイオレンス!」というコメントを表面に出すと、勘違いしたお客さんが観に来てくれると思いました(笑)。最近は、現在も放送している女の子向けのテレビ番組を作っているのですが、それは暴力ではなくて人を愛する力で力強く生きていこう、というのを描いている。そういう一面も自分の中にはあって、決して嘘ではない。ただ、この映画に出ているアウトローたちの馬鹿げているけど一瞬どこかで光るような、愚かに見える生き方に憧れるというのも事実。映画監督というのは得意なジャンルがひとつあって、自分の普遍的なテーマと格闘していくのが多くの映画監督の姿だと思うんですが、自分はホラーをやったりもするけど、それはホラーが好きというわけではなくて、いろいろな人たちとの出会いがあって撮っています。いろいろなものを撮って、いろいろな登場人物を作り上げて、その人の気持ちを台本の中から探っていくのですが、どの登場人物たちもさして変わらないことに苦悩して、さして変わらないことに幸せを求めている。基本的な部分というのは、ジャンルを超えて皆同じだということを改めて感じます。
三池崇史監督: 未知なるウィルスについては非常にデリケートな問題だし、ビジネスを超えて対応していかなければいけない。それは、いずれ何らかの方法で人間は克服していかなければならないと思います。それと、劇場という興業の形を変えて、他人と関わらず安全に、自分の家でプライベートで楽しめるネット作品も否定はしないし、そういう楽しみ方もあると思う。ただ、我々はやっぱり映画館でいろいろな登場人物を観て、時には満員のなかみんなと同じ場所で笑ったり泣いたりしながら、時には、自分とあと何人しかいないガラガラな環境で観た映画など、その環境そのものと、劇場で観た匂いそのものが映画とプラスになっているんですね。ですから、自分にとって劇場は必要な空間です。でも、自分もネット配信される作品で観るべきものはもちろん観ているし、ネットの世界でパーソナルに配信された自分の作品を観たときの感触というのも、今までDVDで観るのとまた違った感触もある。僕らが考えるネットとか以上に、これからどんどん映画は変化していくと思うけど、そのなかのひとつとして、劇場で観るというのはいつまでも残っていてほしいと思っています。
三池崇史監督: 新人の方はオーディションで選んでいます。オーディションでは演技をしてもらって可能性を見たり、本人のやる気を聞いたりするのですが、自分にとってオーディションの場所というのは、受ける人がドアから入って来たときに僕らが探していたこの役を演じる人が「あ、いた。」と思うかが大切。自分が役に近づくのではなくて、その役を演じるために生まれたんじゃないかと思えるようなエネルギーを感じるかどうかを一番大事にしています。今も自信を持って言えるのは10年前オーディションで窪田君がドアから入って来たときに「この番組の主人公いたよ」とホッとしたんです。小西さんは、技術的にはまだまだこれからなんでしょうけど、自分とこの作品にとっては、彼女はすでにこの企画が始まる前から、このために存在していたというように思えるエネルギーがある人です。出会えて良かったです。
窪田正孝: 10年やってきて、まだまだ未熟なのですが、知らない間になんとなく芝居の答えを技術で見つけてしまう癖が身についてしまっていたんだなというのを感じ、彼女を見ていて心が洗われる感覚になりました。芝居をしたことがないからこそ答えが無限にあって、監督の演出に純粋に答えていける柔軟さを痛感して、10年前のことを思い出したし、彼女が10年経ったときに僕は越されないように頑張ろうと思いました。
(オフィシャル素材提供)
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