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2020-11-21 更新

原題:DOGS DON'T WEAR PANTS
ブレスレスbreath-less
© Helsinki-filmi Oy 2019

イントロダクション

 妻を不慮の事故で失い、死んだように毎日を送っている外科医のユハ。救いを求めた先は、ふと迷い込んだSMクラブだった。喉元を締め付けられ、窒息寸前の生死をさまよう中でだけ、妻と再会できるのだ。

 本作は、2019年カンヌ国際映画祭監督週間で上映。その斬新なストーリー、卓越した演出力で、多くの観客に衝撃と感動を与えた。監督は、前作『2人だけの世界』(14)が、ベネチア国際映画祭、トロント国際映画祭ほか、世界40カ国の映画祭で上映、さらに、ユッシ賞(フィンランド・アカデミー賞)で7部門にノミネートされ、作品賞と監督賞を含む4部門で受賞を果たしたユッカペッカ・ヴァルケアパー。ユッシ賞9部門にノミネートされた本作では、研ぎ澄まされた光や色調の息をのむ映像と、生と死の世界を時間や音で表現する繊細な演出で、美しい愛と再生の物語を見事に描き出す。

 主演の外科医ユハには、フィンランドを代表する俳優、ペッカ・ストラング。感受性豊かな繊細な演技で、妻を亡くした主人公の深い悲しみを巧みに表現する一方、限界まで過激に魅せるSMシーンでは、大胆、且つ超濃密な世界を作り上げ、観る者を圧倒する。

 SMクラブで働くモナには、数々の映画や舞台で活躍し、確かな演技力を誇るクリスタ・コソネン。昼は整体師をしながら、夜はSMのドミナトリクスという多面的で謎めいた役どころを見事に演じ切っている。

 失意の中を生きてきた男と、痛みを与えることでしか生きられない女。出会ってしまった二つの悲しみは、誰にも奪えない唯一無二の愛へと発展していくのであった。


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ストーリー

 外科医師のユハは夏の休日を、家族とともに湖畔の別荘で過ごしている。この日も、釣りを楽しみ、妻、娘と優雅でのどかな一日を過ごすはずだった……。

 うたた寝をしていたある日の午後、妻が湖の底に沈んでいた網に足をとられ、水死してしまう。不慮の事故により突然訪れた失意の日々。以来、ユハは、妻を救えなかったという自責の念から、毎日を無気力で死んだように過ごしていた。そんな父を心配する娘のエリ。

 十数年後、エリがピアスの穴をあけるために訪れた店に同行したユハは、隣接するSMクラブに迷い込んでしまう。そこには、ボンデージ衣裳に身を包んだドミナトリクスのモナがいた。客と間違えられたユハは、そこで思いもかけない体験をする。首を締め付けられ、苦しい息遣いの中で、目の前に現れた映像は妻の死の直前の湖の中だった。

 この先に妻がいる。僅かながらも生きる糧を見つけたユハは、その日を境にモナの元に通いはじめる。


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(2019年、フィンランド、上映時間:105分、R-15)

キャスト&スタッフ

監督:ユッカペッカ・ヴァルケルパー
脚本:ユッカペッカ・ヴァルケルパー、ユハナ・ルンメ
撮影:ピエタリ・ペルトラ
音楽:ミハル・ネイテク
出演:ペッカ・ストラング、クリスタ・コソネン、イロナ・フッタ、ヤニ・ヴォラネン、オーナ・アイロラ、イーリス・アンッティラ、エステル・ガイスレロヴァーほか

配給
ミッドシップ
12月11日(金)より ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

■ オフィシャル・サイトbreath-less.com (外部サイト)



ファクトリー・ティータイム

 申し分のない仕事と家庭に恵まれて、そのまま安泰な日々を送るはずだった男が、最愛の妻を亡くすという不幸に見舞われた後、偶然にも危険な方法でその妻と邂逅できることを知ってしまった後の端正な人生を瓦解させていく狂気への暴走が凄まじく、目を背けずにはいられないシーンが加速する。
 逆方向を周回し出合った欲望のヴェクトルは、魂と肉体の崩壊寸前でエクスタシーの火炎を解き放つ。
 隠微な美と醜がもつれ合い、生と死の境界に暴力的に誘われてしまった者の禁忌への惑溺が、観る者の感情を絡め取り、その世界に荒々しく引きずりこまんとする。
 その根源にあるのは、ただひたすら、愛する人に会いたいという悲しい想い。それ故に、娘も仕事も放り出し嬉々として犬になる彼の心に寄り添わざるにはいられなくなるのだ。そうだ、息することを止めてもかまわない、今は亡き最愛の人に再会できるのなら……。
 ラストの彼が見出したものはなんであったのか。箍の外れた生への帰還か、清明なる狂気への断崖に向かう道か。

(Maori記)

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