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舞台挨拶・イベント

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『ここは退屈迎えに来て』
第19回「ニッポン・コネクション」Q&A

2019-08-16 更新

廣木隆一監督

ここは退屈迎えに来てtaikutsu 配給:KADOKAWA
© 2018「ここは退屈迎えに来て」製作委員会

 ドイツ・フランクフルトで開催された第19回「ニッポン・コネクション」にて、「R‐18文学賞」読者賞を受賞した山内マリコの処女小説を映画化した『ここは退屈迎えに来て』がヨーロッパ・プレミアを果たした。「ニッポン・コネクション」には4年ぶりに参加した廣木隆一監督が、上映前の挨拶と上映後のQ&Aに登壇した。

 本作は、東京への憧れを吹っ切れないまま、地方都市での日常に倦みながらもなすすべもなく日々を送る若者たちの、高校時代のアイドル「椎名くん」の思い出を軸に、過去から現在へと交差するさまざまな思いを映した群像劇。誰しもが覚えのある過去の日々へのノスタルジーと痛み、現在への失望とかすかな期待。日常の中に落とし込まれた記憶、うち側に抱えながら折り合いをつけようとしている葛藤を、廣木監督ならではの手法で、それぞれの登場人物に寄り添いながら丁寧に描かれている。


上映前の挨拶

MC: 廣木監督は2003年に映画祭のゲストとしてお越しくださいましたが、残念ながら作品(『きいろいゾウ』)の上映ができなくなるというハプニングがありました。その当時はまだフィルムだったのですが、フィルムに不具合があり上映が不可能となったのです。ですが、監督は映画祭を気に入ってくださって、その後も何回かゲストとしてお迎えすることができました。

廣木隆一監督: 4年ぶりにまた呼んでいただき、皆さんと会えることをすごく楽しみにしていました。『ここは退屈迎えに来て』という映画ですが、決して退屈じゃないと思うので(笑)、最後までご覧ください。上映後、Q&Aがあります。盛り上がっていきます!


taikutsu

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Q&A

廣木隆一監督: この映画は富山県という所で撮影しました。東京から新幹線で2時間半~3時間かかる場所です。魚と米が美味しい所ですので、ぜひいらしてください。原作者の出身地なので富山で撮影したんですが、今の日本の地方、田舎の風景はどこに行っても同じような感じで、日本人的にはそれがちょっと寂しいなという想いがしています。
 あと、『ヴァイブレータ』以来、久々にロードムービーが撮れてうれしいです。ロードムービーが大好きなんです。『パリ、テキサス』とか。


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ドイツ人観客: ロードムービーは音楽が大切だと思いますが、今回の音楽はどのように選びましたか?

廣木隆一監督: 日本のインディーズの音楽を使っています。それと、全員が口ずさむ歌は、彼らの世代でファンがすごく多い名曲です(フジファブリック「茜色の夕日」)。僕も映画の中の音楽が大好きなので、映画に使う音楽はすごく大切だと思っています。


ドイツ人観客: 村上 淳さん演じるカメラマンの須賀さんが写真をたくさん撮っていましたが、それらの写真は何かに使いましたか?

廣木隆一監督: 結構カッコいい写真がありましたけど、使ってないです(笑)。


ドイツ人観客: 監督の作品には、「退屈さ」「虚しさ」「自分から動かない」といったモチーフがあると思いますが、どうしてこのモチーフに関心があるのですか?

廣木隆一監督: 退屈というのは、その人が「退屈」と感じたら退屈だし、全然退屈を感じていない人もいると思うんです。「退屈」という概念はそういうものじゃないでしょうか。僕も、映画をやる前は「なんて自分の日常は退屈なんだろう」とすごく思っていたわけですが、映画に関わるようになって変わっていったという経験をしました。だから、昔の若かった自分がこの映画の中の登場人物の一人だったりもします。今僕は映画監督になり、若い人たちを僕なりに応援したいなと思って映画を撮っています。


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日本人観客: カメラがゆらゆらしているところと固定されているところがありましたが、こだわりがあってそうされたのですか?

廣木隆一監督: そうですね。固定カメラと手持ちカメラ両方で撮影しました。ドキュメンタリー的に感情をリアルに撮りたいという思いがあったので、いろいろなカメラを使ってみました。


ドイツ人観客: 登場人物たちを傍観しているカメラマンの須賀さん(村上 淳)はどういう存在なのでしょう。須賀さんは世代も主人公たちとは違いますね。

廣木隆一監督: 須賀さんに関しては、僕らみたいに大人になってもフラフラしている人がいてほしいなと思って、出しています(笑)。


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ドイツ人観客: 原作者はどの世代に属していますか?

廣木隆一監督: 原作者さんの山内マリコさんは、彼らよりもう少し上の世代です。今回の映画祭にいらしている山下敦弘監督の大学(大阪芸術大学映像学科)の後輩にあたり、映画を勉強して、その後は小説を書き始めた人です。


ドイツ人観客: そもそも、椎名くんはどうしてそんなに特別な存在なのですか?

廣木隆一監督: 椎名くん、カッコよくないですか(笑)? 椎名くんの役をやっているのは成田 凌という俳優なんですが、いま日本で目覚ましく活躍している人です。皆さんもきっと、これからいろいろな映画で成田くんを見ることになると思います。本当に現代的なカッコいい青年なんですが、そういうカッコいい青年が、自分は一体何が好きでどんな人間なのか分からないでいるという役柄をとてもうまく演じてくれたと思います。


ドイツ人観客: 若い人たちがたくさん出演していましたが、彼らはプロの役者なのですか? 富山県の人たちだったりしますか(笑)?

廣木隆一監督: みんなプロの役者さんたちで、日本映画界でこれから出てくる若手たちです。富山県の人たちはエキストラでたくさん出ていただきました(笑)。あと、原作者の山内さんは、プールサイドで落とされる先生役で出ています。


日本人観客: ご自身もかつては退屈さを感じてらして、今は若い世代たちの励ましになればという思いで映画を撮られているとおっしゃいましたが、描かれた世代特有の「退屈」さというイメージはお持ちでしたか?

廣木隆一監督: 今も若い世代には東京、都会への憧れというのはあると思いますが、もう少し時代が進むと、東京にはそれほど憧れず、自分の住んでいる場所が好きで、そこで何かを見つけていくという流れが出てくるんじゃないかと想像しています。ですから、この時代はまだ東京に憧れていた人たちがいっぱいいたんだという記録の映画にもなってほしいと思っています。


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ファクトリー・ティータイム

 昔何度かインタビューさせていただき、すっかりファンになった廣木監督のお元気そうなお姿を久々に拝見できて、とにかく嬉しかった。この映画をきっかけにフジファブリックの音楽を聴くようになったが、フジファブリックの背景と世界観を知ればそれだけ、ここに映し出された若者たちの心により深く触れられることに気づかされた。映画音楽、確かに大切だ。

(取材・文・写真:Maori Matsuura)




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