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トップページ > 記者会見 > 『光』第70回カンヌ国際映画祭 公式記者会見

『光』第70回カンヌ国際映画祭 公式記者会見

2017-05-24 更新

河瀨直美監督、永瀬正敏、水崎綾女、神野三鈴、藤 竜也
澤田正道(プロデューサー)

光hikari

配給:キノフィルムズ/木下グループ
5月27日(土)、新宿バルト9、丸の内TOEIほか 全国公開!
© 2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE
© Kazuko Wakayama

 5月23日(火)、第70回カンヌ国際映画祭にて、映画『光』の公式記者会見とフォトコールが行われ、河瀨直美監督、主演の永瀬正敏ほか、水崎綾女、神野三鈴、藤 竜也、澤田正道プロデューサーが出席した。


あり得ないことについての映画ですが、映画監督にとって目が見えなくなるというのは最悪の悪夢なのではないでしょうか?

河瀨直美監督: その通りです。その最悪の暗闇の中に指す一筋の光を表現しようと決意しました。


映画の元になった何かはありますでしょうか。

河瀨直美監督: 前作『あん』の音声ガイド制作者からの資料を見ていた時に、私たち制作者以上にこんなにも映画を愛していて,全ての人に届けようとしていると気づいたんですね。そういう人たちを主人公にした作品を作ることで、映画への愛を描けると思いました。


永瀬さんへの質問です。河瀬監督への演出についてどんなことを思いましたか。また、難しい役ですがどんな準備をされましたか。

永瀬正敏: 河瀬監督の世界というのは、演じるというよりは、役そのものを生きるということを一番中心におかれた現場です。“役”として生きるために監督が場を作っていただける、とてもスペシャルな場だと思います。「よーいスタート、カット」という声がかからない現場なので。いつ撮影されてもいいように、僕たちはいつも役を生きています。監督の生まれ故郷である奈良で撮影だったのですが、撮影に入る1ヵ月前から目の不自由な方に沢山お会いして、生活を見せていただいたり、気持ちを聞いたりしました。思い出したくないことも教えていただいたて、それを胸に抱えて、撮影で使う雅哉の家に2週間住んで、雅哉としての経験値を積んでいった感じです。日本でも河瀬監督ならではの、とてもスペシャルなやり方だと思います。


アルゼンチンで河瀬監督はかなり有名ですが、水崎綾女とは初共演でしょうか。その場合、どういった経緯で参加されることになったのでしょうか。

河瀨直美監督: オーディションで選び、初めて水崎さんと作品を作りました。彼女を選んだポイントは目です。彼女が見るまなざしのその先にある光を、私たちは作りました。


『光』というシンプルなタイトルについて。全ての映画は光を扱っていて、全ての映画につけてもいいタイトルだと思いましたが、タイトルを込めた意味を教えてください。

河瀨直美監督: とても勇気のいるタイトルでした。どこにでもあって、どこにでもみんなを照らしていて、だからこそ見えない、認識されない存在でもあると思っています。あたり前に今日も太陽が昇ってくる、その世界は当たり前に続いていくんだろうか。私たち人類はこの先どれくらい地球を生きられるんだろう。私はこの先映画をどれくらい作れるんだろう。それは誰にもわからない。韓国釜山映画祭のキム・ジソクさんは、この最高峰の場所に行かなければとやってきたその日に、この場所で亡くなりました。彼はとても映画を愛した人で、携わろうとする人をサポートした人でした。映画で本気で戦争を失くしたり、地球を豊かにしたい人がいると思っている人が沢山いると思っています。でも、この世界から戦争はなくならないし、私たちは必ずこの世界からいなくなる。でも、作った映画は永遠に残り続けると信じたい。私は魂を捧げました。その魂はこの俳優たちと共に、映画『光』に刻まれています。世界中の映画を愛する人たちに、『光』というタイトルで捧げたいです。


クローズアップが多かったことについて。もうひとつは、映画の中の映画は、存在しますか。

河瀨直美監督: 映画内映画は、私が作りました。作品の監督は藤 竜也さん演じる北林監督です。映画『光』と時を合わせて公開しようと思います。タイトルは『その砂の行方』です。
 クローズアップの多様についてですが、私はクローズアップが好きです。視覚障碍者の方たちの感じることは出来るが見ることはできないというか、心の中に浮かべている映像をクローズアップで表現したかったと言えると思います。


藤 竜也さんへ質問です。今年クラシック部門で『愛のコリーダ』が再上映されることについて一言。また、『アカルイミライ』以来の久しぶりのカンヌの感想。最後に、河瀨監督の演出について印象的な演出があれば教えてください。

藤 竜也: 『愛のコリーダ』で来たのは1973年です。今でも所々で上映されている。それは、あの映画が好きな人もいて、嫌いな人もいる。それがあの映画の長生きの秘訣ではないかと思います。
 久しぶりのカンヌについては、お金を出せば来られます。カンヌ映画祭はいくらお金を出しても来られません。今回来られたことはラッキーです。河瀨監督にいつもありがとうと言っています。
 河瀬監督のディレクションですが、とてもユニークです。河瀬さんは、ちょっと信じられないような、超人間的なパワーを感じることがあります。曇天の奈良の夜に、私が月明かりを出しますといって、出ちゃったんですね。演出する時の簡単な言葉、一言二言は、圧倒的力があります。強制的でもないし、心地良いんです。ただ、一瞬にして僕の映画の魂は放り込まれます。それは圧倒的な力です。でも、その後、抜け出すまでが大変です。出来れば抜け出すまで面倒を見てください。それは贅沢だと思います。


今朝プレス上映を観てきました。エンドロールで拍手が起こり、届いたと思います。奈良の森の風景や、雅哉にとっての支えである光や音が、映画の中にうまく取り入れている。そういったロケーションと音、音楽の使い方についてお聞かせください。

河瀨直美監督: 私の暮らしている奈良は海がなく、森があります。森の中の木々、土の匂いは私たちに計り知れない力を持っていたり、豊かなものをもたらしてくれる。でも時に、私にとっては森、誰かにとっては海かもしれません。そういった自然は人間に恐怖や脅威をもたらすこともあります。日本の文化の中で、自然に畏敬の念をもつことで祈りを捧げてきた。その祈りを捧げる中には、もう亡くなった人や、これから生まれてくる人との魂の交流があったと思います。今回撮影した森は、日本で一番古い国の形が出来た飛鳥という場所です。その土地の力を借りて、この映画にその世界を刻みました。自然を描くということは、人間だけが強いわけでない、人間が全てをコントロール出来るわけではない。もっと大きなものに見守られながら、この“生”を全うするんだろうなと考えています。


プロデューサーの澤田さんに質問です。前回の『あん』を制作された時に、脚本を見た段階で「この作品は行けると思った」と思ったと伺いました。実際にフランスでは30万人を動員しました。今回の勝算はどこにありましたか。

澤田正道: 勝算は予想でしかないですが、今回話をいただいて、音声ガイドという職業を知らなかったので、目立たない職業を映画化するというのはかなりの価値があると思いました。また、目が見えないという人たちに対して作る映画作りなので、面白いことが出来るなと思った僕の感としては、音でしたね。これからの映画は、まだまだ音に対して、主題歌に対してもそうですが、可能性があると思います。僕は河瀨監督とは3本やらせていただいていますが、1本1本緊張感があり、常に新しいことを考えさせてくれるので、退屈しません。


音楽のイブラヒム:マーロフさんとの制作について教えてください。

河瀨直美監督: 彼の音楽を初めて聞いたときは、音楽だけではなくて、表現力の豊すぎる豊かさといいますか、何事も音楽に変えていく感性について、表現に変えていく豊かさについて、リスペクトして今回ご一緒したいと思いました。クライマックスの音楽が大好きなんですが、即興なんですよね。


女優のお二人にご質問です。河瀨監督の演出は、直感的な何かを求めている演出でしょうか。

水崎綾女: なかなか日本では味わえないような演出ですし、河瀨スタイルというのは役者としては有り難い現場です。今ここに私がいることが信じられないです。誰よりも経験が浅く、知識もなく、空っぽな状態の私をヒロインに選んでくださって、命を吹き込んでくださって、光を当ててくださった監督です。撮影中は大変なこともありましたが、これから力になっていくと思います。私の今迄の経験を壊して、積み木を壊して、新たに作るという形で撮影しました。本当に連れて来てくださって、ありがとうございます。

神野三鈴: 私は藤 竜也さん演じる十三さんとの映画内映画のシーンから撮影が始まったのですが、最初から時枝として生きられるように、生まれた赤ちゃんを抱きしめてそっと現場に置いてくれるように、監督、キャスト、皆さんが場所を作ってくださいました。それは監督の体内のような、とても不思議な場所でした。これは初めての経験で、「あなたの時枝を生きてください」と渡されました。こんなに愛に溢れた場所はなかったので嬉しかったのですが、そんなこと考える間もなく時枝を生きていました。ひとつの宇宙みたいな世界で、私を謙虚にさせてくれました。監督の世界を作るひとつの細胞になれたような気がしました。


永瀬正敏さんがはじめてカンヌにいらっしゃたのは、『ミステリー・トレイン』でした。一昨年『あん』、昨年『パターソン』、今年『光』と3年連続でカンヌ映画祭に作品が出品されています。永瀬さんにとって、カンヌ映画祭とはどんな場所でしょうか。主演としてカムバックされたことについて、ご感想を御願いします。

永瀬正敏: 恵まれていますね。とても監督に感謝しています。何度も国際映画祭に連れてきていただいて、本当に嬉しいです。世界中に広がるきっかけになると思うので、特別な場所だと思います。また河瀬監督に連れていて欲しいです。

河瀨直美監督: 70 周年おめでとうございます。70年という時代をトップで走り続けることは、苦労が理解できます。映画人が映画を愛していると感じる場所です。70周年おめでとうございます。これからも仲間に入れていてください。


(オフィシャル素材提供)




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