2019-08-28 更新
山田洋次監督、倍賞千恵子、佐藤蛾次郎、北山雅康、松野太紀
「祝!50周年 寅さんファン感謝祭」が都内にて行われ、山田洋次監督、倍賞千恵子(寅さんの妹・さくら役)、佐藤蛾次郎(寺男の源公役)が寅さんファンの前に登壇し、かつての作品や寅さんを演じた渥美さんとの思い出話でクロストークを繰り広げた。第1作目が公開されたのが、ちょうど50年前の8月27日。12月27日には、50作目となる『男はつらいよ お帰り 寅さん』の公開が控えている。寅さんの甥っ子・満男(吉岡秀隆)と、その初恋の人・イズミ(後藤久美子)が再会することで、寅さんとの日々がよみがえるというストーリー。今年の第32回東京国際映画祭のオープニング作品にも決定している。また、当日は新作にも出演している、北山雅康(団子屋の定員・三平役)と松野太紀の2人がMCを務めて明るく楽しいおしゃべりで会場を盛り上げた。
この日招待された観客が第1作目の『男はつらいよ』を4Kで鑑賞した後のトークイベントで、山田監督は、半世紀前に1作目が公開された当日に思いをはせた。
山田監督は新宿の劇場に足を運び、客席から観賞したという。「社内試写では会社のえらい人ばかりが観ていて誰も笑わないから、『真面目な映画を作ってしまったな、もうだめだ。おしまいだ』と落ち込んでいた」と不安な気持ちを抱えての鑑賞となったと話す。しかし、公開されると、プロデューサーから『客が入ってるぞ!』と言われ、映画館に行ったら、たくさんのお客さんがみんな笑っており、「今日のことを一生覚えてなきゃいけないなと思った」と感激のエピソードを披露した。
山田監督は、『男はつらいよ』の主人公・車寅次郎について「僕は撮影中、滑稽な男というよりは、出来の悪い弟に『どうしてもっと真面目に生きないんだ』と叱るような思いで寅さんを見ていたような気がする」と述懐した。
また、「第1作目が公開された当時は、日本人全体が元気だったんじゃないかな。映画館だけじゃなく日本中が活気に溢れていたと思う。今の日本は、寅さんのようなでたらめないい加減な男が気楽に生きていけない世の中になってしまった気がする」と寂しそうに語った。また、シリーズで撮るつもりがなかった寅さんだったが、公開されると大勢の観客に支持されたために、人気シリーズとなったことも明かしていた。
佐藤は、山田監督作品『吹けば飛ぶよな男だが』(なべおさみ主演)のオーディションに1時間半遅刻したという当時の様子を話す。さらに、佐藤は「僕は別に行く気なかった。山田洋次って誰?って(笑)。でも行ってみたら(受かった)」と告白すると、山田監督は「当時は、態度大きかったもんな~(苦笑)」と振り返った。改めて、佐藤は「山田監督に出会えて嬉しかった」としみじみと感謝。
また、佐藤は渥美に誘われて、山田監督らとタヒチ旅行をしたことがあったと話す。倍賞がビーチでビキニ姿になり、それを蛾次郎が8ミリビデオカメラで撮影したという秘話も明かして会場を沸かせた。
倍賞は、渥美さんとの思い出を聞かれると、「兄妹役を49本やって、相手の立場に立ってものを考えることがどれほど大事かということを教わりました。悩みがあるとそれを見抜いて、『おい、飯行くぞ!』って言って、ステーキなんかおいしいものを食べさせてくれたり、『欲しいものはないか?』と言って、何かを買ってくれたりして、幸せな気分にさせてくれました」とやさしくて懐の深かった渥美さんとの思い出を語った。
今年、50作目が公開されることになり、倍賞は「渥美ちゃんがよく『長い1本の映画を撮っているのかもしれない』と言ってたんです。それが今回できあがった映画なのかな」とつぶやくと、山田も「50年かけて長い長い映画を、僕たちは撮っていたってことかもね。今作を撮り終えて、俳優の皆さんのドキュメンタリーを撮ったような感覚。出来上がった作品を観たら、普通の俳優が持っていない渥美 清の独特の魅力を感じることができる不思議な映画になっている」と話すと、倍賞も「渥美ちゃん(寅さん)だけが歳を取らないのね……」としみじみ。2人は、「男はつらいよ」と歩んできた半世紀に思いを馳せていた。
(取材・文・写真:Sachiko Fukuzumi)
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