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2018-06-08 更新
是枝裕和監督
様々な“家族のかたち”を描き続けてきた是枝裕和監督が「この10年間考え続けてきたことを全部込めた」と語る渾身作『万引き家族』が本日6月8日(金)より全国公開となる。
第71回カンヌ国際映画祭【コンペティション部門】にて最高賞<パルムドール>を受賞! 21年ぶりの快挙を成し遂げた本作は、6月2日(土)、3日(日)の2日間限定で先行公開され、週末2日間で全国325館326スクリーン、動員:152,872名/興収:193,709,400円の好成績をあげる大ヒットとなった。また、劇場で行った出口調査では満足度90%と非常に高い数字を叩き出しており、「他の人に勧めたい」と答えた人の割合も92%に上るなど口コミ効果も大いに期待できる結果となっている。また、外国人の人々からのたくさんの問い合わせを受け、この度、英語字幕版の上映が決定! 6月21日(木)に是枝裕和監督が登壇する舞台挨拶付上映をTOHOシネマズ六本木ヒルズにて実施予定。6月23日(土)より新宿バルト9にて上映開始となる。
そしてこの度、日本中を沸かせその興奮冷めやらぬ中、是枝監督が、外国特派員協会にて記者会見を開いた。会場いっぱいに集まった日本外国特派員協会(FCCJ)に所属する記者たちからの質疑応答に応え、公開間近の本作に込めた熱い思いを語った是枝監督。会見最後には、当日6日は是枝監督の誕生日ということで、協会からバースデーケーキがプレゼントされるサプライズもあるなど、お祝いムードに包まれる中、会見は終了した。
パルムドール像を抱え会見場にやってきたこともあり、多くの拍手で迎えられ登場した是枝監督。
まず、映画委員会委員長のキャレン・セバンズより、本作に対する批評や政治的な様々な意見が世界で飛び交っている現状について質問が及ぶと、是枝監督は「僕自身、この映画ははじめから社会的、政治的なことを喚起してつくっているわけではない。なので、こんなリアクションが起きるとは思ってもいなかった。カンヌでの審査員たちの会話の中では、演出や役者やスタッフなど全ての調和がよかったといってくれたこと、審査員の女優たちがこぞって、この映画に出演する女優たちを褒めてくれたことがうれしかった。2000年代に入って、海外の映画祭に出品するようになり、日本映画は社会性、政治性がないことについて批判が含んだ形で指摘された。でもそれは現実。なぜならば、そのような映画をつくっても、日本では興行に結び付かないからだ。そのことが、日本の幅を狭くしていることは自覚していた。2000年代以降は、ファミリードラマにこだわってつくっていた。しかし、ここ2年はファミリードラマに一度ピリオドを打ち、今回は現在が抱える社会問題に“家族”というものをおいて考えてみたいと思った。恐らく、21年ぶりのパルムドール受賞ということもあり、僕が思っている以上にメディアに取り上げられ、普段、映画は観ないような方もこの映画を知っていただいていることから、物議を醸している状況のようだ。しかし、通常の枠を超えて多くの方にも届いていることについては前向きに捉えている」と回答。
その後、協会員である記者たちからの質疑応答に応えた。
実在した事件を元にしたわけではないが、ここ数年、“家族”を巡って起きている事件は元にしている。<犯罪でしかつながれなかった家族>というフレーズが思い浮かんだとき、まずは「年金詐欺」をベースに、優しさで集まっているわけではなく、お金を目的として集まっている家族という設定にした。そこから、家族で万引きをしているという事件の裁判の記事の中で、「釣り竿だけお金を払わず家の中に置いてあった」という一文だけでまとめられているのが、とても気になった。釣り場屋さんには申し訳ない話だが、そのとき、きっとその盗んだ釣り竿で親子は釣りを楽しんだんだろうなというイメージが浮かんだ。
一番印象に残っているのは、養護施設を訪れたとき、小学生の女の子がふとランドセルから絵本の「スイミー」(レオ・レオニ作)を取り出し、突然それを読み始めた。職員の方は、迷惑だからやめなさいと止めたが、その女の子は結局その絵本を最後まで読み切った。その姿に感動し、スタッフみんなで拍手をしたら、その女の子がとてもうれしそうに笑った。きっと、この子は本当の親に聴かせたいのだろうと思った。それが頭から離れなくて、映画の中でもこの出来事を反映したシーンを書き加えた。
まだ正式発表の前なのに、いろいろと漏れていて不思議だ(苦笑)。秋にフランスでフランスの役者と映画を撮ろうと思っている。6月からはパリに渡って準備を始める予定だ。まだ発表前なのに、なぜか役者のギャラまで情報が出回っている(会場笑)。来月までには何かしらの形でお知らせできると思う。
その考えは全くありません。僕はTVをやっている時代から先輩に、母親でも友人でも誰でもいいから、誰かひとりのために作品をつくれと言われてきた。それが、結果的に伝わると20代の頃に教えられた。今、その質問を受けてはっきりと分かったことがある。この作品は、「スイミー」を読んでくれたあの女の子のためにつくっている。
花火のシーンは、審査員のひとりであった、チャンチェンも好きだと言ってくれた。審査員長だったケイト・ブランシェットが言っていた言葉を借りるならば、今回は「invisible people=見えない人々」の物語をつくっている。見えない、聞こえないものを観る側がどう捉えるかがモチーフにあった。花火のシーンは、そのモチーフの中心にあると思う。
撮影で使った家が見つかったことは、成功に好転している。あの家は、実際にある家とその家の中はセットもつくっているが、ロケとセットの見分けがつかないくらい精密につくられており、作品をみると、正直どっちが本当かも分からないほどで、それほどあの家がこの作品の中に馴染んでいた。こちらの要望に応え、あの家を見つけてくれたスタッフとそれを精巧に再現してくれた美術スタッフには感謝の気持ちでいっぱいだ。あの“家”がこの映画において、もう一方の主役だったのは間違いないと思う。
公式上映後は、ありがたいことに多くの取材依頼があり、他の作品を観る時間が全くなかった。観た中でいえば、『万引き家族』が一番よかったかな(会場笑い)。
(オフィシャル素材提供)
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