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2018-05-20 更新
是枝裕和監督
配給:ギャガ
© 2018『万引き家族』 製作委員会
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞した『万引き家族』。授賞式の後に行われた公式記者会見と現地囲み取材リポート、および各キャストのコメントが到着した。
【公式記者会見】
ケイト・ブランシェット: この作品は、演技、監督、撮影など総合的に素晴らしかった。選ぶにあたって気に入っていた作品を落とさないといけないのはつらかったし難しかったけれど、最終的に私たちは意見が合致しました。『万引き家族』はとにかく素晴らしかったわ。
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督: この作品は私たちに深い感動を与えてくれました。とにかく恋に落ちてしまった。上品で素晴らしく、とても深い。魂をわし掴みにされました。
是枝裕和監督: 今回の作品のカンヌでの認知と受賞によって、「家族」ドラマの作家だという捉え方がまたますます強くなってしまうかもしれませんけど、自分ではそうは思っていないので、様々なジャンルにチャレンジできればと思っています。自分が年齢を重ねていって変化していくと、いろいろな家族の形、見えてくる家族の形というのも変わってくるので、決して同じことを繰り返していくのではなくて、60代、70代になった時にまた違う「家族」のドラマが出来るのではないかなと思っています。
是枝裕和監督: 子どもはいつも、オーディションでいろいろな子たちに会って、その年代の特徴を掴みながら、自分が撮りたいと思う子を残していきます。台本はいつも渡さないので、現場に入って僕が口伝えで台詞を伝えたり、時には役者に演出の一部を担ってもらいながら、子どもからどういう感情、表情を引き出すかということを手伝ってもらい、撮影現場で全部作っていくというやり方をします。なので、彼らは予習もしてこないし、宿題もないので、毎日笑顔で撮影現場にやってくる、そういう環境を目指しています。
是枝裕和監督: 家族を描くときに、どうすると日本的か日本的じゃないかということを考えては作りません。ただ、今の日本の社会の中で、隅に追いやられている、本当であれば見過ごしてしまうかもしれない家族の姿をどう可視化するかということは考えます。それは『誰も知らない』の時もそうでしたし、今回もそうでした。僕が子供の時に住んでいた家は、あの家と同じように平屋で狭くて、僕は自分の部屋がなかったので、押し入れの中に宝物と教科書を持ち込んで自分の部屋にしていた記憶があるので、その押し入れから大人の世界を見るということは自分の実体験としてあります。万引きをしていたわけではありません(笑)。
是枝裕和監督: どうして描こうと思ったかというのを後付けで語ると、監督はだいたい嘘をつくので、そんなに本当のことは話さないと思いますけど。一つは『そして父になる』は、「家族は時間なのか血なのか」ということを問いながら作った映画だったんですが、その先に、産まないと親になれないのだろうかという問いを立ててみようと思いました。今回の物語の中心にいるのは、自分の子どもではない子どもを育てながら父親に、母親になりたいと思う、そういう人たちの話をやろうと思ったのが最初でした。彼らをどういう状況に置こうかというのを考えたときに、ここ数年日本で起きているいくつかの家族をめぐる出来事を、新聞とかニュースで目にした時、経済的にかなり追い込まれた状況で、万引きとか年金を不正に受給することでかろうじて生活を成り立たせている家族というものの中に、そういうテーマ、モチーフを持ち込んでみようかなと思ったのが、今回の映画になりました。
【現地囲み取材】
是枝裕和監督: あまり緊張するタイプではないが、めずらしく緊張していたので、とりあえず通訳している間にしゃべることを考えていました。
是枝裕和監督: 発表される順番が毎年違うので、気が付いたらグランプリとパルムドールしか残っていなかった。残っている監督が誰かもはっきり分からなくなっていて、でも周りがザワザワしてきたので、不安な気持ちもありつつ……という感じでした。
是枝裕和監督: (トロフィーが)すごい重いです。ずっとトロフィーを持ち続けているので腕がガチガチなんですけど、これを頂くというのは、監督として本当に重い出来事で、この先、この賞をもらった監督として恥ずかしくない作品をまたつくらなければならないなという覚悟を新たにしています。
是枝裕和監督: 社会に対するメッセージを伝えるために映画を撮ったことはあまりないですし、それは正しい形ではないなと思っているので、僕が描いた家族とどう向き合って、見過ごしてしまうような環境だったり、感情だったりをどう丁寧に掬い取るかということだけを考えようと思いました。でもそれはいつもやっていることなので、そこからどんなメッセージを受け取るかは僕が発するのではなく、受け取る側が決めることなんじゃないかなと、いつも思いながらつくっています。
是枝裕和監督: 公式上映のときのリアクションも本当に温かったんですけど、その後の取材にくる記者の方たちも言葉の中に、「TOUCH」と「LOVE」という言葉がすごい溢れていて、ちゃんと届きたいところに届いたのかなという思いではいました。表面上の犯罪を犯している家族の話であるとか、今の日本の社会状況がどうとかということの奥に、やはり父になろうとすること、母になろうとすることという、普遍性みたいなものを受け止めてくれたから、そういう言葉が出たのかなとは思っていたので、そのことはとてもうれしく思っていました。
是枝裕和監督: 『誰も知らない』のときにも、社会から見えなくなっている子どもたちをどう可視化するかということを考えながら撮った映画だったんですが、今回もスタンスとしては同じなので、やはりそれを見過ごしてしまう、もしくは目をそむけてしまいがちの人々をどう可視化するかということが、全てとはいいませんが、僕自身は映画をつくる上では常に自分の中心においているスタンスだったりもするので、今回はかなりストレートに反映された映画だったというのは間違いなく思っています。ブランシェットさんの言葉はすごくうれしく聞きました。
是枝裕和監督: 今この状況でLINEのやり取りをしていて、合間にちょっとずつ写真を送ったり、まだちょっとバタバタしていて「おめでとう」「素晴らしい」ぐらいの会話しか交わせていないです。
是枝裕和監督: 「悲願」ってよく新聞に書かれていたんですけど、言ったことは一度もなくて……。賞というのは目標にするものではないといつも思っています。この場所に来て、クロージングセレモニーに立てるということはとても光栄なことですし、ましてや最高賞をいただくというのは、僕自身のキャリアにとっても大きなステップアップとなるでしょうし、これであと20年くらいはつくりたいなという勇気をもらった気がします。
是枝裕和監督: 発見していただいたのはヴェネチアですし、ずっと育てていただいたのはカンヌなのかなと思います。良い映画祭というのは、作り手を育てる場所だなと思うので、僕は7回呼んでいただいて、評価をいただいた回もあれば、そうでない回ももちろんありますけど、どの回もとても貴重な経験をさせてもらってます。今回は残念ながら授賞会場にはいらっしゃいませんでしたが、韓国のイ・チャンドン(『Burning』でコンペ出品)と中国のジャ・ジャンクー(『Ash Is Purest White』でコンペ出品)という同時代にすごく強い作家がいて、彼らと同じ時代に映画をつくれて、お互いにお互いの作品を認め合いながら、刺激し合いながら、この場に来られているというのはとても恵まれているなと思いますし、彼らがいるから僕も頑張ってつくれているし、彼らの映画との向き合い方がすごく僕に刺激を与えてくれているというのはすごく感じています。そういう監督たちとここで出会って再会して、肩を叩き合ってまた自分の映画つくりの現場に戻るというのは、ひとつ大きなイベントとして思っています。
是枝裕和監督: 華やかな場所だからここが素晴らしいわけではなくて、自分がやっている映画というものが世界と繋がっていて、映画の奥深さや歴史というものに触れられるとても良い経験ができると思います。どんどん若い人たちも目指すべきだというのはおこがましいかもしれませんが、それは監督も役者も同じく、経験するとおそらく何か捉え方が変わるので、そういう意味でも自分も周りにいる若手の監督の卵の子たちをできるだけここに来られるようにしているし、これからもそうしたいと思っています。
是枝裕和監督: 口にするとなかなか実現しないものですから、あまりしゃべらないようにしているんですけど、いろいろ一緒に映画をつくらないかといってくれる方たちが日本の外にいらっしゃるので、海外の役者たちと一緒に映画をつくるというチャレンジに向かってみようかなとここ数年思っています。
是枝裕和監督: こういう映画祭でお会いして、いつか一緒にやりましょうねって言っていただけるのはだいたい役者さんが多いので、そういった交流の中で次の企画の種を撒いているところですけど、実現するといいなと思っています。
是枝裕和監督: リリーさんとかサクラさんと子どもたちも含め、トロフィーを持って会えるといいなと思っています。
是枝裕和監督: 天狗にならないように(笑)。
是枝裕和監督: 全然そんな心配はしていないですね。目指していないというとかっこよすぎるかもしれませんけど、これで映画の企画が通りやすくなるなと(笑)。むしろこの先、どういうふうに自分で撮りたいものを実現していくか、この賞はそういうところでのエネルギーにはなるなと思っています。
【キャストからのコメント】
リリー・フランキー: 監督、本当に本当におめでとうございます! 獲ると信じていましたが、現実になると驚きと感動でじんましんが出ました(実話)。監督、めちゃくちゃカッコいいです!
安藤サクラ: やったー! 本当におめでとうございます!! こんな特別な瞬間を共有できること、心からうれしく思います! 万歳!
松岡茉優: あの家族はいたのだと肯定してもらったようでうれしいです。思い出をいつまでも愛しています。
樹木希林: 往きの飛行機の避雷針が雷を受けました。異様な響きと共に私の座席の天井が破け、酸素マスクや破片やゴミや、バラバラッと落ちて来ました。「是枝さん、もうくす玉が割れちゃったから賞はおしまい」……のはずが、めでたいことです。
城 桧吏: 是枝監督、関係者の皆さま、「パルムドール」受賞、本当におめでとうございます! 『万引き家族』という作品に出演できて、あらためてとてもうれしい気持ちです。監督と家族6人でカンヌへ行けて、一生の思い出になりました。本当にありがとうございました。
佐々木みゆ: やった~~~~~!!!!!!! かんとくおめでとうございます! みんなでさつえいがんばったから、とってもうれしいです。はやくかぞくのみんなにあいたいです!
(オフィシャル素材提供)
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