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『ビー・デビル』チャン・チョルス監督 単独インタビュー

2011-03-21 更新

この作品に出てくる問題は世界中にあること。この作品を観て、そばにいる人々にもっと関心を持って欲しいです

ビー・デビル
(C)2010 Boston Investments Co., Ltd. and Filma Pictures. All Rights Reserved.

チャン・チョルス監督

 弘益大学視角デザイン科出身。キム・ギドク監督の『魚と寝る女』(00)を観て感銘を受け、押しかけ助監督としてデビュー。『春夏秋冬そして春』(03)、『サマリア』(04)の助監督を経て、クォン・サンウ主演の『恋する神父』(04)では、商業的な感覚も身につけた。
 2008年韓国映画シナリオマーケット最優秀作品賞を受賞したチェ・クァンヨンの脚本を元に本作を完成させる。同作が長編初監督となる。

配給:キングレコード株式会社
3月26日(土)より、シアターN渋谷 他で全国順次公開

 第63回カンヌ国際映画祭批評家週間正式出品、第6回オースティン・ファンタスティック・フェス2冠達成、第47回韓国アカデミー賞新人監督賞受賞、第14回プチョン国際ファンタスティック映画祭では最高賞とソ・ヨンヒの女優賞ほか3冠を達成した衝撃の問題作、韓国映画『ビー・デビル』がいよいよ公開される。
 昨年11月20~28日に東京で開催された第11回東京フィルメックスでは招待作品となった本作のチャン・チョルス監督に会って、映画について話を聞くことができた。


初の長編第一作目を撮り終えた感想から教えていただけますか?

 私は現在36歳なんですが、人生を70年だと考えると、ちょうど半ばに差し掛かったといえます。人生の一部を整理して、これから第二部へのスタートを切る時期ということもあって、大変意味深い作品となりました。

脚本のどんな点に惹かれて、映画化したいと思われたのでしょうか?

 この映画を撮影した当時は、韓国映画を取り巻く状況がかなり厳しくて、製作費がなかなか集まりませんでした。新人監督がデビューするには難しい時期でした。
 このシナリオを手にしたとき、(登場する二人の女性の)現代人的な姿と伝統的な姿の両方に惹かれました。そして、主人公が抱えている心の闇にもすごく惹かれたんです。映画監督として是非、撮ってみたいという強い気持ちから、低予算でも映画化しようと思いました。

キャスティングは難航したと伺いました。ヒロインを演じた人物をどのようにキャスティングされたのでしょうか?

 ボクナムの役を誰もやりたいと言ってくれなかったんです(苦笑)。
 ソ・ヨンヒさんは私の恩師・キム・ギドク監督のすすめもあって決定しました。ソ・ヨンヒさんのお母さんが嫁ぎ先で姑や小姑がいて、かなり辛い思いをしたそうなんです。よりどころになるはずの夫が母や姉の味方をしたといいます。誰にも頼れなかったそうです。ソ・ヨンヒさんはその時に「娘として感じた心の傷や母への思いを映画の中で演じられたら……」と言ってくれたんです。そんなこともあって、彼女なら信じて演じてもらえると確信しました。

島中の人間からイジメを受け、耐え続けるボクナム、観ていてとても辛かったのですが……。

 ボクナムには娘がいて、子供のために耐え続けました。そのような生き方をしている人は多いと思います。

監督は、人間がする行為で一番許せないことってどんなことだと思いますか?

 難しい質問ですね……。(しばらく時間を置いて)相手の弱点を掴んで、利用することですね。

耐え続けていたボクナムがある日、太陽を凝視してから復讐を決意する印象的なシーンがありましたが、監督があのシーンに込めた思いとは?

 あのシーンの演出には、かなり悩みました。太陽というのは、神のような巨大な力と言えます。自分の運命と闘って打ち勝つためには、まずそれ(神)に打ち勝ってからでないと勝てないという意味を込めました。あのシーンは主人公が、巨大な力と闘っているという場面なんですね。その巨大な力に打ち勝つことが出来れば、自分のやるべきことをしに行けるんだという思いが詰まっています。

傍観者であるへウォン(チ・ソンウォン)についてはどのようにとらえられていますか? 人は、傍観者であってはいけないという強いメッセージが伝わってきました。

 そうですね。人はそう簡単には変われない。実は他人の姿だと思っていたものが、実は自分の姿だったと思わせる演出になっています。

恩師であるキム・ギドク監督について聞かせてください。何かアドバイスはしていただいたのでしょうか?

 この映画は、どこの配給会社に持っていっても拒否されて、なかなか公開することができませんでした。でも、ギドク監督が作品を観て気に入ってくれて、後押ししてくれたんです。

 ボクナムの娘は、もともとはボクナムと夫の子供でしたが、父親を誰か分からない設定に変更したのはギドク監督のすすめからなんです。

最後に日本の観客に向けて、メッセージをお願いします。

 日本ではすべてに無関心な人が増えていると聞いています。この作品に出てくる問題は世界中にあることなので、是非この作品を観ていただいて、自分ではなく、そばにいる人々にもっと関心を持って欲しいですね。

ファクトリー・ティータイム

本作は血も凍る復讐劇だが、人間が抱える心の傷や心の闇を見事に切り取って描いている。キム・ギドク監督の愛弟子の演出力、恐るべし! 今後の作品にも注目したい。
(文・写真:Sachiko Fukuzumi)


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