インタビュー・記者会見等、映画の“いま”をリポート!

Cinema Factory

Cinema Flash





広告募集中

このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Madia Player ダウンロード
Windows Media Playerをダウンロードする

記者会見

トップページ > 記者会見 > 『椿三十郎』製作発表記者会見

製作発表記者会見

2007-11-24 更新

織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、中村玉緒、森田芳光監督
千葉龍平(エイベックス・エンタテインメント代表取締役副社長)、島谷能成(東宝常務取締役)
角川春樹(角川春樹事務所特別顧問)

椿三十郎

配給:東宝
12月1日(土)日劇PLEXほかロードショー
(C)2007「椿三十郎」製作委員会

 黒澤明監督&三船敏郎のコンビによる不朽の名作『椿三十郎』をオリジナル脚本で、森田芳光監督が45年ぶりにリメイク! 撮影が続いていた東京・成城の東宝スタジオにて製作発表記者会見が行われ、“新・椿三十郎”の創造に挑む監督の期待に応えようと奮闘中の主演俳優・織田裕二と、主要キャストの豊川悦司、松山ケンイチ、中村玉緒、森田芳光監督、製作サイドからは、エイベックス・エンタテインメント代表取締役副社長・千葉龍平、東宝常務取締役・島谷能成、そして角川春樹事務所特別顧問・角川春樹が出席、本作に懸ける思いと意気込みを語った。

-----まずは、ご挨拶をお願いします。

角川春樹:この映画を再び撮りたいと思いましたのは、『椿三十郎』をはじめとして、『用心棒』や東映の時代劇を、私はそれこそ青春時代から親しんできたからです。ところが残念なことに、時代劇はもう、大人の年齢層しか観なくなってきています。そんな中でいま一度、青春時代劇を製作してあらゆる年齢層の方々に観ていただきたいと思い、この映画を撮ることにしました。そして、黒澤明監督の作品として大好きなこの『椿三十郎』をまずリメイクすることにしたのです。
千葉龍平:先日ラッシュを見てまいりましたが、もうその時点で非常に感動しまして、森田監督はじめ、全てのキャストが自己ベストを出して、この作品に懸ける思いというものを強く感じて帰ってまいりました。また、エイベックスとしましても、これから映像を手掛けていく上で、未来を担う、非常に重要な位置にある作品だと考えておりますし、若い世代に椿三十郎の持っている男気や優しさをこの映画を通じて伝えられたいいなと思っております。今後も一生懸命、製作と宣伝に携わっていきますので、皆様何卒よろしくお願いいたします。
島谷能成:今日は休日ですが、お忙しい中、遠い所にお集りくださいまして本当にありがとうございます。このお話を角川春樹プロデューサーからいただきましたのは、2006年の初春じゃなかったかと思います。黒澤明監督作のリメイクを角川さんがやられるということで、一も二もなく、「そのプロジェクトに乗りましょう」ということで始まりました。配給を全力をあげてやることになり、やがて監督に、これまで何度もお仕事をさせていただいている森田芳光さんが決まりました。森田監督の口から後ほどお話しいただけると思いますが、「この椿三十郎は織田裕二さん以外考えられない」とおっしゃり、角川プロデューサーからもそういうお話を伺いましたので、旧知の織田さんにこの話をさせていただきました。織田さんにとっては、時代劇も初めてですし、初めて尽くしのチャレンジだと思うんですが、しばらく考えられた上で決断をされました。リスクもあると思いますが、今のスターでありながら、新しいものに挑戦していこうという彼の男気に、まずは敬意を表したいと思います。先ほど千葉さんがおっしゃったように、私もラッシュを見せていただいて、彼の決断は大成功に終わるだろうと思いました。
 監督と主演俳優を中心に、豊川さん、松山さんをはじめ、ベスト・キャストが揃いました。そして、いつの間にか、我々東宝映画の富山社長がこの作品の製作を引き受けてくださいました。やはり我々は黒澤さんのスタジオで育ってきましたから、ビジネスを越えてでも力が入ってしまうわけで、いつの間にやら走らされている感じです(笑)。
 2008年お正月映画を代表する大作品として、全国東宝系で大公開させていただきます。ここに並ばれた角川春樹事務所さん、エイベックスさん、それからテレビ朝日さんはじめ、製作委員会の皆様と力を合わせて、この作品を大きく、全世界の人々に向けて発信していきたいと思っておりますので、今日お集りの皆さん、ぜひご協力をお願いいたします。
森田芳光監督:黒澤明監督作品を自分がリメイクする、しかも台本が同じで、皆さんからは「とんでもないことだ、プレッシャーは相当あるだろう」と見られますが、仕事の上ではこんなに高い目標を持った仕事はないので、本当にスタッフ・キャスト一丸となって、前作を基本に、また日本映画の歴史を基本に、僕らはその流れを汲みつつ現在出来る最高の作品を作ろうと、日夜努力しております。いくら期待されてもいい作品になると思いますので、よろしくお願いいたします。
織田裕二:今、連日のように報道でいじめだとか、権力を握った人たちの汚職などのニュースが流されていますが、今回台本を頂いたときに、 45年前の台本、そして時代劇ということで、相当時代を感じるのではないかと思っていたのですが、ここに書かれていたのは現在流れているニュースと全く同じようなことでした。椿という男は、正義感がありながらもなかなか実行に移すことのできない若者たちと一緒になって、権力を持ちながら汚職や不正に走っている者たちと闘います。今こういう男と出会えて良かったなと思っています。弱い人たち、困っている人たちを放っておけない、見て見ぬふりができない、そういう男が椿三十郎です。21世紀の新しい『椿三十郎』を森田監督と共に、そしてここにいるキャストや素晴らしいスタッフと共に作り上げたいと考えております。どうぞご期待ください。
豊川悦司:僕は黒澤監督の映画が昔から大好きで、特にこの『椿三十郎』は大好きでして、何度も見ています。まさか自分がそのリメイクに出演することになるとは思ってもみませんでしたが、大変光栄なことだと感じました。あとはとにかく、長年一緒に仕事をしてみたかった森田芳光監督とご一緒できるということで、この仕事を心からありがたい気持ちで引き受けさせていただきました。今、織田さんもおっしゃっていましたけど、本当に現代に通じる話だと思います。そして、これは僕が現場で受けている印象ですけど、映画の基本中の基本であるエンタテインメント、楽しさがいっぱい詰まっている映画に、森田監督は日々仕上げていくと思います。本当に楽しい映画になると思いますので、ぜひ劇場にお越しください。
松山ケンイチ:『男たちの大和/YAMATO』『蒼き狼 地果て海尽きるまで』、そして『椿三十郎』と、角川春樹作品にまた出演することができて本当に幸せに思っています。僕も時代劇は初めてですが、本当に楽しく撮影をやっていますし、勉強になります。僕の他に若侍が8人いて、全員で9人なんですけど、監督は毎回この9人にいろいろな注文をされます。すごく面白い演出で、みんなアタフタとしながらも必死で食らいついています。僕も全て細かいところまで、監督の演出に応えられるよう頑張ります。
中村玉緒:私も映画が大好きだったんでございますが、なかなかご縁がなくて、14年ぶりに出させていただきます。30〜40年ほど前までと違って、今は私もちょっと役柄が変わってまいりましたが、今回は40年前、結婚前にやっておりましたような役をいただくことになりました。大映の時代劇女優と呼ばれていた頃の奥方役に戻ったんでございまして、今しゃっべいるのも“自分じゃないな”という気もするんでございますが(笑)、こういう奥方役は二度とないと思っておりましたので、こうやってお話をいただいたときには夢じゃないかと思いまして、うれしいのが半分、ドキドキが半分という感じでおります。でも、撮影の現場に入りますと、40年間の思いがムラムラッ!と出てまいりまして、今はとても楽しくやらせていただいております。クランクインの日は眠れなかったくらい、うれしくてうれしくて、織田さんとも初めてですし、豊川さんとは残念ながらご一緒できなかったんですけど、森田監督からいろいろと注文もされながら、楽しくワクワクとした気持ちで、毎日演じております。女優冥利に尽きる日々を過ごさせていただいております。ありがとうございます。

-----織田さん、リメイクは非常にリスクがあると思いますが、引き受けようと思われた決め手を教えてください。

織田裕二:この作品に出演しようと思った理由は大きく言って二つあります。一つは、森田監督からのラブ・コールでした。「お前でやりたい。お前じゃなきゃダメだ」というその一言にどうしても応えたいと思いました。僕も森田監督の数々の名作を拝見していますけど、その監督にこんな言葉を言っていただいたら、“やりたい”と思わないわけにはいきません。それともう一つは単純に、僕はこのお話を頂くまでは『椿三十郎』をちゃんと見ていなかったんですが、見てみたらこれがまた面白く、この作品を知らなかったのは損だったなと思ったのと、今の時代に合った作品だと感じたんですね。今の時代だからこそこの作品をやる意味があると思いましたので、「ぜひに」と引き受けさせていただきました。

-----織田さんは、椿三十郎という役をどのように解釈して演じていらっしゃいますか?

織田裕二:前作を拝見しますと、非常に殺陣が多いですし、かと思うと、肉体派というだけでなく、頭脳も優れているんですね。両方兼ね備えた男で、当初は“出来るかな……”と思ったんですが、殺陣やその他もろもろ、ワンカット・ワンカット全て自分で演じています。この三十郎という男はそれだけ聞くとスーパーマンなんですけど、結構人間臭いところ、短気だったりなど欠点もありまして、森田監督の演出の下、人間らしい味付けもされています。ぜひ前作と見比べていただいてその違いを味わっていただけたら、一層楽しめるのではないかと思っております。

-----皆さん、織田さんの三十郎をご覧になって、どのような感想をお持ちになりましたか?

豊川悦司:織田さんの三十郎は、僕の私的な印象ですけど、三船さんよりもさらに温かいというか、すごく柔らかい感じがしています。先ほども織田さんがいじめの話をされていましたが、少しくじけそうになっている方たちが頼りにできそうな大きさがあると思いました。
松山ケンイチ:ものすごく懐が深いと感じました。9人対1人という形で芝居をさせていただくことが多いですが、9人全員を一人で受け止められる器のでかさがあります。役柄の外でも、織田さんご自身がそういうところを持ち合わせていらして、現場の雰囲気を作り上げてくださっています。織田さんが三十郎で、僕は本当にうれしいです。
織田裕二:……何、企んでいるんだ(笑)?
中村玉緒:この2〜3日ずっとご一緒していますが、血がグラグラと煮えたぎっていると申しますか、当時の三船さんと同じくらいの年だからでしょうか、私は三船さんもよく存じ上げてお付き合いさせていただいておりましたが、織田さんは三船さんと同じようにギラギラとされていて、でも抑えるべきところはちゃんと抑制できている、その二つの面を持った三十郎さんだと思います。
織田裕二:(爆笑)怖いですが、頑張ります(笑)。
中村玉緒:いえいえ、時々可愛らしいところもあるし……なんて、(カッカッカッと笑い)失礼いたしました、地が出てしまいました(笑)。

-----織田さん、時代劇に出演されるのは初めてということで、ご苦労なされている点や、うれしいこと、驚かれていることなど感想をお聞かせください。

織田裕二:実は15年以上前になるでしょうか、時代劇を2本ばかりやったことはあるんですが、今回は全く印象が違って、時代劇ってこんなに面白いのかと感じています。時代劇といってもいろいろな種類があると思いますが、その中でもこの『椿三十郎』という作品には素直にエンタテインメントとして入っていけましたし、こんなに面白いことをあの時代にやっていたということに親近感も覚えました。最初は黒澤監督の作品ということでプレッシャーを感じた時期もあったんですが、“そういうことじゃない、もっと面白いものだ”という思いのほうが勝って、今は“時代劇も現代劇も関係ない。面白いものは面白い”というのが僕の結論です。

-----ここまでの撮影の感想をお聞かせください。

森田芳光監督:そうですね、普通の映画作りと違うのは、すでに教科書があるので、その教科書に沿って応用問題を解いていくような、すごく不思議な感じがあります。例えば、椿屋敷にしても、前作で記憶していた、邸内を流れる小川に椿が浮いているシーンなどは、僕らは撮らなきゃいけないのに、まずそのセットを見て感動したりしてます。そこで演出できるということがうれしいですし、そういった意味ではスタッフ・キャストにとって毎日がワクワクの連続で、日本映画の歴史を遡りながらタイムスリップしてやっているような不思議な感覚があります。
織田裕二:ストレスを全く感じさせない現場で、最近はスタッフが自分より年下の人が多い現場が続いていたんですが、今回は全て身を委ねられるというか、監督はじめ、ものすごくベテランのスタッフ、そして若いスタッフに至るまで、一緒に仕事をさせていただいて気持ち良いんですね。こんなに気持ちの良い現場に出合うことはそうそうなくて、毎回こうだといいなと……(笑)。感謝しております。
豊川悦司:本当に楽しい現場で、時代劇ということ自体が今の僕たちにとってリアルじゃありませんから、それだけですごく楽しいですし、何よりも、逆に黒澤監督の作品があったからこそ、現場でみんながこの映画の撮影を楽しんでいる感じがあります。監督の演出のアイデアはたくさんありますし、「これもいいんじゃない?あれもいいんじゃない?」という具合に、監督から小道具のスタッフに至るまで常にアイデアがあるんですね。全てがゼロからのオリジナルよりも、リメイクだからこそ、そう出来るのだと思います。それが本当に楽しいです。
松山ケンイチ:僕も今まで撮影して思ったのは、笑いが絶えない現場だということです。監督も演出しているとき、ずっとニヤニヤされているんですよ(笑)。僕もつられて笑っちゃって。それだけでも気分がスカッとします。今はまだ半分も越えていませんが、これからもっともっと楽しくなるんじゃないかと思っています。
中村玉緒:キャスティングをご覧になってお分かりのように、皆さん若くて、私は大体倍、二人分の年なのでございます(笑)。それで皆さん労わってくださり、屋根に登るシーンでは少しひっくり返ったんでございますが、本当に優しくしていただきました。それともう一つ、私はこの格好をしているだけで楽しいんでございます。このまま家に帰ってお風呂も入りたいくらいで(笑)。台詞を含め、この時代劇の格好が大好きで、何もかも忘れて夢心地で台詞を言わせていただけるのが、何とも幸せだと感じております。

-----織田さんと豊川さん、どうしても前作を意識しないわけにはいかないと思いますが、前作の三船敏郎さんと仲代達矢さんの演技で参考にした部分と、オリジナル色を出した部分を伺えますでしょうか?

織田裕二:実は僕、リメイクというのは初めてでして、ついつい前作を見てしまうと、負けそうな気持ちになってしまうんですね。でも、真似したところであの三船さんの素晴らしい味というのは僕には出せないですし、監督も「今の織田裕二が出来る三十郎をやれ」と厳しく叱ってくださり、何かあればはっきり言ってくださるので、それに応えられるように毎日やっています。
豊川悦司:前作で仲代さんがやられた室戸半兵衛はとにかく、目が異様にギョロギョロとしていたので、今回はなるべく目を開けないようにやっています(笑)。

-----監督は織田さんのどんなところが椿三十郎にピッタリだと思われたのですか?

森田芳光監督:本当に、直感としか言いようがないんですけど、やはりヒーロー像というのは時代と共に変わると思うんですよね。スポーツでもそうですけど、例えばF1だったら以前は(アイルトン・)セナ、今は(ミハエル・)シューマッハであり、野球であれば以前は長嶋茂雄で今はイチローという具合に変わっています。『椿三十郎』の場合は以前は三船敏郎で、今の映画界のヒーローは誰かなと考えたとき、“織田裕二だ”と直感的に思いました。
 それにまた、この映画は、過去の名作を今の若い人たちに見ていただけるチャンスになると思うんですね。やはり映画というのは、ワンカット・ワンカットみんなが熱を入れて作るものなので、スポーツで言えばホームランやシュートの映像を楽しむだけじゃなく、一球一球の動きやどういう発想で球が投げられたかなどを考えて楽しむように、映画の細かい面白さを分かっていただきたい、そして映画には歴史があるんだということを分かっていただきたいという思いで、僕もあえて台本を同じにしました。ですから、この映画を作ることで、黒澤明監督の『椿三十郎』が再び見られ、比べられるということが日本映画の歴史においては意味があると思うので、僕らも一生懸命頑張って撮影しています。すごく意義深いことを、僕らは今やっているんじゃないかなという実感はありますね。

ファクトリー・ティータイム

黒澤明監督の名作をリメイクするというリスキーな試みに敢えて挑もうという人々の、まるで少年のような熱く真っ直ぐな思いが伝わってきた会見で、これは面白くなるかも……と期待が高まった。会見後には、実際に撮影に使用しているセットに移動し写真撮影……にはますます興奮。
ちなみに、東宝スタジオの入り口の壁には、『七人の侍』の巨大な絵が描かれていて、それを眺めるといつも、“これが世界中で愛されてきた映画なのだ”と思ったり、何とも言いようのない気持ちになる。
森田監督も言っていたように、オリジナル版『椿三十郎』と森田版をぜひ、見比べてほしい。そして、昔の映画を見たことがなかった人たちは“世界のクロサワ”も発見してほしい。
(文・写真:Maori Matsuura)


関連記事

Page Top