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『流浪の月』ティーチインイベント

2022-06-13 更新

松坂桃李、李相日監督

流浪の月rurounotsuki ©2022「流浪の月」製作委員会
ギャガ
全国公開中

 2020年本屋大賞を受賞した作家・凪良ゆうによる傑作小説を原作にした映画『流浪の月』のティーチインイベントが6月12日(日)に都内で開催され、松坂桃李と李相日監督が揃って登壇。既に本作を鑑賞した観客からの質問形式でイベントは進められた。


 この日のイベントの進行は李が自ら担当。李は「松坂桃李のトークショーへようこそ!」などとジョークめかしながら、当の松坂は「すごいですね! この規模でのティーチインは初めてです!」と満席の会場に喜色満面だった。中には15回も本編を鑑賞している観客もおり、松坂は「えー! ありがとうございます!」と驚きの表情を見せた。

 早速司会を務める李から松坂に過去の舞台挨拶の発言で気になっていた「今回公開されるにあたって『かつてないほど緊張や怖さを感じる』とを話をされていたと思うんですけど、具体的に怖さや恐れを感じるシーンはありますか?」と質問。問われた松坂は自身が演じる文が小さな更紗(白鳥玉季)の唇についたケチャップを拭うシーンについて「あの場面は皆さんどう思われましたか?」と観客に逆質問しつつ、「映画の感想を見ていて、そういう解釈をしている方もいるんだなと思ったんです。僕はそのシーンを演じる時に、文は自分の持っている特性から解放されるのではないかという期待があった上で更紗の口を拭ったけれど、何も湧き上がってくるものがなかった。文からしたら絶望にまた引き戻された瞬間でもあって。そのような思いで演じていました」と心境を吐露。李も「暗闇にいた文が更紗という一筋の光で表に出てきた時に、最初に神秘に触れたのがあの時だったと思うし、二人の魂が神秘に触れた瞬間でもあると思う」と文を演じた時の心情を述べた。

 イベントは実際に映画を観たばかりの観客からの質問コーナーへ。最初の質問は『文がコーヒーを淹れるときに右手で淹れていたが、更紗が逃げ込んだあとは左手でいれていたのには意味がありますか?』というマニアックな質問。細かい動作を指摘された松坂は「よく観ていますね~!」と感心しつつ「特にそこに意味はありませんが、僕は普段左利き。普段の松坂桃李が顔を出したのかもしれません!」と笑わせた。


rurounotsuki

 次は『文がひとりで過ごしていた部屋で鳥の彫刻を作っていたのはなぜ?』という質問。李は「裏設定になりますが、文が過ごしていた部屋にある小さな窓から文が見ていたのは空・雲・そして鳥だったのではないかと思いました。自分と重ね合わせて自分は中に閉じ込められているから、逆に外を自由に飛び回っている対象として鳥が目に入ったのではないかと。しかし撮影時は鳥を呼ぶことができず、代わりに蝶を捕まえました。外に出られないという隠喩としての文と蝶、そして彼が心に思い描いていたのは空を飛ぶ鳥だったのではないかという意味を込めて作りました」と解説。松坂が「(撮影監督の)ホンさんも作中は鳥が飛ぶ姿を捉えていたりするので、文にとっては更紗も含めてそれは“自由”の象徴であったと思います」と分析すると、李は「鳥の目は世の中の目にも通じるというか、自由の象徴であり怖さの象徴にもなりえる。鳥は貴重なキーポイントです」とさらに解説を加えていた。


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 今日が初めての鑑賞となったという観客からは、文と幼い更紗の過ごす幸せ2ヵ月のシーンについて『今敏監督のアニメーション『パプリカ』や『妄想代理人』が劇中で使用されているのはどういう意図ですか?』という質問。松坂は「裏設定としてあるのは、この映画を選んだのは更紗のチョイスであるということです。前段として、自由奔放な更紗がピザを食べてゴロゴロして『次、映画見ようよ!』という時に、更紗が文と出会う前にお父さんとお母さんと幸せに暮らしていた時期に好きで見ていたラインナップのひとつにこの2作品があったということです」と映画には描かれていない二人が出会う前の影響を説明すると、李も「この二つの作品を観ている人には、『流浪の月』のストーリーにどのような繋がりがあるのか分かるはず。10歳の少女が単に好きだというのとは違う、更紗なりのチョイス。気になった方はぜひ観てみてください!」とおススメしていた。

 最後は原作を読んで2回目の鑑賞となった観客から『初めて原作を読んだときの感想は?』という質問。こちらに李は「脚本を読んだ感想も聞いてみたい!」と差し込むと、松坂は「まずった!と思った」と明かしながら「文字では伝わるけれど、自分の言葉で言い表すことのできない感情をどのように表現すればいいのか?という“まずった”がまずありました。脚本を読んで、文が更紗にすべてを打ち明けるシーンが小説と映画で違っていたので、どのように演じればいいのかということを悩みました。小説だから表現できることと映画だからこそ表現できることがあるわけで、このシーンが成立するのは自分次第だと思うと、現場中は李監督に『助けてください!』という思いで接していました」と不安があったことを吐露。しかし映画を観た人からは特に印象に残るシーンとしてよく挙がるシーンでもあり、松坂自身も「すべてを出し切るために準備期間も含めて向き合ってきたところもあるので、そのシーン撮影当日には緊張はありませんでした。撮影を積み重ねていく中で『いつ来てもいいな、このシーン』という気持ちになった。それは役者人生で初めての感覚でした」と万全の体制で臨めたそうで、李も「俳優・松坂桃李の到達点だと思う。次が楽しみ!」と太鼓判を押していた。

 時間が限られている中、満席の観客からは終始活発に質問の手が挙がり、質問者を指名するのも一苦労。李が「どのあたりに座ってる人がいいか、桃李くん決めて!」と促し、逆光となる照明に苦労しながら二人で満席の観客席を一生懸命見渡す姿も印象的だった。


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 ティーチインイベント最後には松坂から「この規模でのティーチインは初めてでしたし、皆さんと言葉を交わし合う機会はないなと思っていたので、すごく嬉しいサプライズでした。どれだけの人にこの作品の込められたメッセージを届けることができたか自分では分かりませんが、しっかりと皆様の中にこの作品に登場していた人たちの感情というものがいろいろな形で伝わっていけばいいなと思います!」とまだまだ公開が続く映画が一人でも多くの方に届くようアピール。続けて李からの「今日はこの場を借りて、松坂桃李にしかできなかったと思いませんか!?」という発声で客席からは拍手喝采。か李の「松坂桃李、ありがとう!」という感謝の言葉とともに、松坂と李はガッチリと握手していた。

 映画『流浪の月』は大ヒット全国公開中。



(オフィシャル素材提供)



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