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トップページ > インタビュー > 『アウトレイジ 最終章』第74回ヴェネチア国際映画祭 囲み取材

『アウトレイジ 最終章』
第74回ヴェネチア国際映画祭 囲み取材

2017-09-24 更新

北野 武監督、森 昌行プロデューサー


アウトレイジ 最終章outrage17
© 2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野


 北野 武監督の「アウトレイジ」シリーズ3部作の完結編『アウトレイジ 最終章』(10月7日全国公開)が、第74回ヴェネチア国際映画祭のクロージング作品として満場の観客の前でお披露目を果たし、温かい拍手と声援に笑顔で応えながら会場を後にした監督と森 昌行プロデューサーは、深夜に近い時刻ながら、日本媒体向け囲み取材に出席し、大役を果たした喜びと安堵の思いを語った。


outrage17 まずは、森プロデューサーが「ヴェネチアに初めて『HANA-BI』で来ましたのが20年前で、それが金獅子賞という栄誉を授かりまして、それから監督共々、今回で9回目のヴェネチアになります。今回は初めてのクロージングということで、これまでクロージング上映というのは経験したことがなかったものですから、いろいろな不安があるなかで、無事にお客様に作品を観ていただくことができて、大変良かったと思っています」と語り、それを受けて監督は「好き嫌いが分かれるバイオレンス映画なんで、クロージングに向いてるか不安だったけれど、自分にとっても“バイオレンス映画はクロージング”ということで、うまくピッタリ合ったかな、と(笑)。お客はホントにいねえんじゃないかと思ったら、チケットはみんな売れたっていうから、あぁ、よかったな、と」といつもの“たけし節”で、上映を終えた喜びを口にした。

 これまで18作の監督作がある中で、ヴェネチア国際映画祭への参加はすでに9回目を数えるということで、数ある国際映画祭の中でも監督にとっては特別な場所であるはずだ。「15年くらい前か、ファン・クラブが急に現れて、それ以来ずっと、こっちに来るたびにいろいろな仕掛けで笑わしてくれるんで、ヴェネチアにもファンがいるなと思うとちょっとほっとするね」。確かに、監督作のみならず、「オフィス北野」製作であれば絶対に駆けつける、ファン・クラブTシャツを着た濃い一団を目にする。“世界のキタノ”となった今も、“萌え”度の高いイタリアのファンの反応が気になるという監督。「ファンがいるのはありがたいけれども、それが逆にプレッシャーになってね。今度はどんな作品なんだって期待されるのがちょっとしんどいし、緊張してしまう。だから上映が終わった後、ファンの顔をつい見ちゃうんだよね。で、“オッケー、オッケー!”って合図されると、ホント嬉しくてね」と相好を崩す。

outrage17 『ソナチネ』(93)で世界的に「キタニスト」を生むきっかけとなったカンヌ国際映画祭に比べても、『HANA-BI』(97)で金獅子賞を受賞したヴェネチアは、公式記者会見でも「自分のキャリアの中でヴェネチア映画祭というのは絶対に欠かせないひとつのエポック」と語っていたように、「賞をもらったこの映画祭は、他の映画祭とは違った意味がある」と繰り返す監督。「ヴェネチアのほうがバイオレンスに対して寛容だって気もする。まあ、ヴェネチアではなるべく、期待外れなことはしたくないというのはあるね。ただ、期待とは違っても、後になったら結構画期的な作品だったなと評価されることもあるんで、それはそれで楽しみなんだけど。これから映画を何本も作れるわけじゃないんで、くたばった後に評価されても仕方ないし、これからはバイオレンス一色に染まるのも嫌になってきたから、映画というエンターテインメントで自分がやりたいことを素直に、あまり興行成績にこだわることなく作りたいとは思ってる」と、70歳になった今もさらなる映画作りへの旺盛な意欲を示す。

outrage17 そんな監督にとって、「アウトレイジ」シリーズ3部作の完結はどのような意味をもっているのか。「『その男、凶暴につき』(89)から始まって、『3-4X10月』(90)、『ソナチネ』(93)があって、それまではかなり、良く言えば実験的な映画、悪く言えば自分の感覚に沿って撮ってしまったっていう感じがあるんだけど、今回の3部作では本職の監督になったような気がして、ちょっと歯がゆいというか、もっと冒険しなきゃっていう思いも生まれてきたんだよね。リアルと演出の自然なバランスはとれるようになったと思うけど、そういう職業監督って、俺はあんまり目指してないんだよな。まあ、でも一つの区切りにはなったかな。この3部作でバイオレンス映画は一旦中止だなっていう。また、なんか突拍子もないことを思いついたらやるだろうけど、今それよりも興味があるのは、『あの夏、いちばん静かな海。』(91)や『HANA-BI』(97)とかにあった男女の愛や、もうちょっと具体的な言葉のやりとりとかだね。大体、漫才師なのに何で言葉の掛け合いをやらないんだろうっていう。この間、純愛小説も書いたしね」と次回作への含みをもたせる。

 そして最後に、「またヴェネチアに来ることがあれば、全然違った種類の映画で来たいと思うね」と、世界中の“キタノ”ファンを期待で身悶えさせそうな言葉を残して、大雨が上がったばかりのリド島の夜のしじまに去っていった。


(取材・文・写真:Maori Matsuura)


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