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2020-02-25 更新
モトーラ世理奈、渡辺真起子、諏訪敦彦監督
第70回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門に出品されている『風の電話』のプレミア上映が、2月23日20時(日本時間2月24日6時)に会場となるUrania theaterにて行われた。800席を超える会場は満席の大盛況となり、ジェネレーション部門らしく10代を含めた幅広い年代の観客が集まった。上映が終了すると、観客からは3分間を超える拍手喝采で、上映後に登壇した諏訪敦彦監督、モトーラ世理奈、渡辺真起子はベルリンの映画ファンから熱い歓迎を受け、上映後に行われたティーチインでは、質問に対する回答の一つひとつに盛大な拍手や、ときには笑いが巻き起こるとても温かい雰囲気の場となった。
諏訪敦彦監督: ハルいう一人の少女の旅を通して、現代の日本のポートレイトを撮りたいと思いました。実際、津波からは9年という時間が経ちました。9年経って見た目にはその傷は見えなくなっているが、人の心にはまだ傷が残っていて、建物を建てかえるように綺麗には出来ないと感じています。実際、その傷が見えなくなっているからこそ、映画の中で様々な時間とというものを見せたり感じさせることが出来るのではないかと感じました。
モトーラ世理奈: 私も最初は、ハルという子がどういう子か分からなくて、でも、ハルと一緒にいろいろな所へ行って、いろいろな人と出会って、そこで感じたものと一緒に私の中でハルが出来ていったなと思います。
諏訪敦彦監督: 日本は常にいろいろな災害が常に起きています。映画を撮影する前年に西日本豪雨という非常に大きな災害がありました。なので、ロケ場所を探していて、広島という場所を物語のスタートの場所にしました。なので、初めはそれほど広島に重要な意味があったわけではないのですが、映画の中で、広島の被曝体験の話が出てきます。これは偶然で、演じた女優さんが実際に体験したことで、撮影の打ち合わせでこの話を聞き、強い印象を受けたので、映画の中でこの話をしてくださいとお願いして、広島という場所の主題が浮かび上がってきました。
諏訪敦彦監督: シナリオを作るプロセスで、一緒にやっている脚本家の狗飼さんの提案で、これは日本だけの問題ではなくて、世界中の人が傷ついているというような気持ちになったということで、難民問題をシークエンスに入れることになりました。調べるとあの地域には2千人を以上のクルド人が暮らしてみますが、誰一人ちゃんとした難民として認定されていません。映画の中で、ハルと同じ世代の女の子が出てきます。彼女も実際は看護師になりたい夢を持っていますが、現状では彼女が職につける可能性はありません。日本の人たちは、まだこの問題について関心がないが、実際にはこれは日本の中でも普通の風景だと思ってこのシークエンスを撮りました。
渡辺真起子: 私のパートは広島ですが、広島で起こった戦争の時の苦しみは広島で生まれていない私にとっても、今でもまだ感じるとても大きなことだと思います。だけども、今、毎日は普通に過ぎていき、小さく体の中に何かが刺さっているような感じでした。それから東北で起きたことに関しては、身近にまだあることで、今でもその場所に行かなくても、まだその時の夢を見たりして過ごしています。それでも日常は過ぎていきます。その中で、この作品に関わるということも日常的に関わりながら、作れて行けたのではないかと思います。
モトーラ世理奈: 私は2011年には12歳で小学校に行っていて、その時は何か大変ことが起きたと感じていても、私自身は何かをなくしたわけでもなくて、遠くで起きていることと思っていました。でも、私は20歳になって、この映画の撮影で初めて被災地に行ったとき、自分は12歳の時からすごく変わったけど、被災地は何も変わっていなくて、そのことが衝撃的でした。私の年代は、震災があったことをしっかり覚えている年齢だけど、学校とか勉強とか友達のこととかで自分のことに精一杯で、今まで震災に対して意識することができていなかったと気づいて、今私たちの世代がそのことに気づくことが大事だと思いました。この映画で、私たちの世代にもそのことが伝わってほしいと思うようになり、それが撮影で日本中を旅することで感じたことでした。
※ジェネレーション部門とは、「Generation 14plus」と「Generation Kplus」という2つのコンペで構成されており、発掘作品や若者が出演する作品を対象としたもの。ベルリン国際映画祭では本作の選出理由を「主人公の若い女性の視点から、まだ過去とは言えない日本社会のトラウマとその風景を幅広いキャラクターとストーリーで、繊細かつエモーショナルに描いたロードムービーです。これは、映画だからできる素晴らしい作品だと思っています。このことを、我々は、ぜひベルリンで称えたい」と述べている。諏訪監督作品で、同部門の選出は、2009年の『ユキとニナ』以来2度目となる。
(オフィシャル素材提供)
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