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2019-10-07 更新
是枝裕和監督
10月11日(金)より全国公開となる是枝裕和監督の最新作『真実』が、韓国南東部の都市釜山にて10月3日(木)~12日(土)まで開催されている第24回釜山国際映画祭で、Gala Presentation部門への出品と、また是枝監督がAsian Filmmaker of the year(今年のアジア映画人賞)を受賞したことを受け、10月5日(土)の授賞式と公式会見、Q&Aに出席した。
<Gala Presentation部門 公式会見>
会場には韓国現地の記者に加え、海外から訪れた記者も多数参加。マスコミ席は満席となり、立ち見や、会場に入れない方も出てくるほど大盛況。是枝裕和監督が舞台袖から登場するとスチールからのフラッシュの嵐に包まれた。いざ会見がはじまると、大勢の方から手が挙がり、最新作の『真実』について、監督のこれまでのキャリアについてといった質問が投げかけられた。会見終了の時刻となっても、挙手の手が止まることはなく、是枝監督の最新作への注目度の高さが伝わる会見となった。
是枝裕和監督: こんにちは。空港ついてここに直行しているので、まだちょっと落ち着かない気持ちもあるのですが、このような形でアジア映画人賞を頂きまして、今年韓国映画がちょうど100周年ということで本当におめでたい年に、釜山映画祭という僕のデビューとほぼ同じ年を重ねながら、困難を乗り越えながら成熟していった映画祭でこの賞を受賞させて頂いただくという、本当に光栄な時間をここで皆さんと分かち合えることを嬉しく思っています。よろしくお願いいたします。
是枝裕和監督: コミュニケーションはやはり、僕が日本語しかできないのでどういうふうに乗り越えていくかというのは最初の課題だったんですけども、とても素晴らしい通訳の方を見つけることができて、この5年一緒に仕事をしている女性ですけれども、彼女にベタで半年間現場についていただいた、それが本当に大きかったなと思いますし、いつにもましてなるべく、直接言葉が通じないが故にお手紙を書いて、スタッフにもキャストにもなるべく僕が何を考えているのかということを文字にして相手に残るように伝えていこうという、日本でもやるようにしていることではあるのですが、今回は意識的に多くして意思の疎通を図りました。
10年ほど前にペ・ドゥナさんと一緒に映画を作りました。その時ももちろんお互い共通の言語はなかったんですけど、お互いに何を求めているのか、何が欠けているのかというのを、撮影を重ねていくにつれて、言葉がどんどん必要なくなっていきました。カットをかけて次どういうふうにするのか、言葉を越えて次に進むべき道はお互いが歩調をあわせて進めるようになっていきました。今回もそういうことが現場でありました。映画作りの面白さと言うのは、そういう言葉を越えたところにあるんじゃないかと今回改めて思いました。
キャスティングは、10年以上前からジュリエット・ビノシュさんとは親しい付き合いがありまして、将来的には何か一緒に映画を作りませんかとオファーを僕が頂いた感じなんですけど。それにこたえる形で今回の話、ストーリーというものを、まだあらすじでしたけど渡したのが2015年。その段階では僕もカトリーヌ・ドヌーヴ、イーサン・ホークという名前をノートに書いていたものですから、3人ありきで考えていたものが、当初の予定通り夢がかなう形で今回作品になった感じです。
是枝裕和監督: 今回はファミリードラマというよりは、“演じるとは”という問いからスタートしておりまして、女優を主人公にしたものを撮ってみたいというところから一番最初にスタートしました。
その彼女を描くに当たって、じゃあ女優にならなかった娘の存在と若くして亡くなってしまったライバルの存在の二人を登場させて、三角形の中で一人の女優を描いてみたいということです。
オマージュという意識は自分の中にそんなになかったですけども、ただ撮らせていただいたカトリーヌ・ドヌーヴという、本当に映画史の中で輝いている、しかも今も現役で活躍されている女優さんの魅力を作品の中で出来るだけ多面的に瑞々しく描きたい、そのことをとにかく自分の中の課題というふうに考えて作りました。
是枝裕和監督: 映画の中にいろいろな母と娘の関係を登場させたいと思いました。それはある時は、立場が逆転して見えたり、ある時は演じている母親が演じることのなかったライバルに見えたり、庭から聞こえてくる言葉が娘のものだと錯覚したり、いろいろな場所で母と娘、娘と母というものを重層的に描いてみたいというのは最初からコンセプトにしていました。
それはカトリーヌ・ドヌーヴという女優をいろいろな側面から光を当てて多面的に描く一つの方法だったと思います。あとはやはり、祖母であり、女優であり、母であり、そして娘でもあるそういうことを目指しました。
是枝裕和監督: 自分の知らない、暮らしている場所ではない異国の地で撮影するというのは、いくつか注意しなければいけないことがあり、「エッフェル塔」を入れてみたり、「凱旋門」を入れてみたり、絵はがきに写っている中に人を歩かせりというのをまずはしないようにしようと。日常的な風景の中で、この町で暮らしている人が見ている風景の中で物語を描こうというふうに考えたのがまず最初でした。
難しかったのと面白かったのは、選んだあの家がとっても広くてですね、日本で撮ると家のなかってだいたいこう、部屋と部屋のあいだを何歩くらいで歩けるかってだいたい感覚的に分かるんですけど、全然違うんですよね。リビングと、ダイニングと、家の中での階段までの距離なんかまるで違っていて。
脚本の完成の前に、あの家に2晩泊まって台本を手に歩きながら、セリフを言い歩いてみたんですけど全然セリフが足りなくて。移動距離というのは、日本で撮るのとは違いました。家の中での撮影が一番“海外”でした。
女の子はオーディションで選んだんですけど、日本と同じやりかたをしようと思って、事前に脚本は渡さずにおばあちゃんちに遊びに来たお話だよってことだけ伝えて、あとはいつも通り現場で僕がささやいてそれを通訳の人にささやいてもらう「ささやき作戦」で全部やりました。
実はもともとの台本では学校でいじめられて不登校になっている女の子の設定だったんですけど、あのクレモンティーヌに会って、非常に勝気な女の子で、衣装合わせで夏休みあけに会った時に、「夏休みどこに遊びに行ったの」って聞いたら、すごいめんどくさそうな顔して僕のことを見て「あそこのおばさんにさっき話したからあそこのおばさんに聞いてくれ」って(笑)。衣装の担当の方だったんですけど。どうやら海へいったらしいんです。そういう感じが、これはいじめられて不登校じゃなくて、まさにおばあちゃんのDNAを受け継いだ孫としての存在として描いた方が面白そうだと思って、そこから脚本を随分変えました。
是枝裕和監督: 「真実」という嘘にまみれた自伝本があって、そこに娘がやってくるんだけれども、娘にもまだ書かれていない真実の言えない自分史がそこにはあって、その自分史を書きなおしている。むしろ、娘があそこにいた1週間の間に母と自分との関係を自分史に書き直している。そのために、お互いがお互いに演技を使って、マジックを使っている。その事で二人がかつて、今もたどり着きたいと思っている真実にちょっとだけ近づく……そういうお話になるといいなと思いました。
5年前になるのかな。この映画祭が政治的な圧力を受けて開催が危ぶまれた時期があって、その時に世界中の映画人が釜山映画祭を支えたいという声があがりました。僕も微力ながら声をあげてこの映画祭に対する意思を表明しました。そのことによって、困難な時を乗り越えてこの映画祭が存続し、また僕自身が呼んでいただけるような状況になっていると思います。その時の映画祭の対応は、よく頑張ったな、よく耐えたなと思っていますし、そういう形で映画人が、政治が困難に直面して出来ない連帯を、映画と映画人がより豊かにより深く示すことで、逆にこういう形で連帯が出来るということを見せていくのが大事なんではないかなと思っています。なので、ここに来ています。そういう映画の力というものを、信じている人たちが、作り手、ジャーナリスト関係なくこの場にいる人たちなのだと信じています。
是枝裕和監督: 映画自体の企画は2015年に動き始めているので、実は『万引き家族』の前から動き始めているものでした。『万引き家族』より後に動に始めた企画だったらそういうプレッシャーも感じたかもしれないけど。日ごろからプレッシャーというものを感じないものですから(笑)。もちろん今回は受賞直後ニューヨークに行ってイーサンホークに出演交渉した時に、はじめましての挨拶のかわりに「コングラッチュレーション」で、「このタイミングだと断りにくいんだよな」と言われて、パルムドール獲ってよかったなっていう、むしろそういう受賞の恩恵を直に受けたという記憶しか残っていません。
是枝裕和監督: そんなに暗くて重い映画ばっかり作ってきた自覚はないんですけども(笑)、そういう印象が多いのかな。先ほども言いましたが、ドヌーヴが母であり、娘であり、妻であり、多角的にどういうふうに魅力を引き出すかということを演出家としても考えましたけど、自分の感覚として外から見た時に、違うところから光を当ててみた時に、自分の中で陰と陽があるとするならば、今回は陽の部分をどういうふうに作品に反映していくかというのを、時々考えるのですが、今回は読後感がきちんと明るい着地点にたどり着くことを考えました。
是枝裕和監督: 普段映画を作っている時には日本映画を撮っているという意識はあまりないですし、今回もフランス映画にしなければというプレッシャーがあったわけではないんですね。とにかくいい映画を作りたいという意識だけで撮ってきていることは事実なんですけれども。それでもやはり自分がこの映画を撮っていて、同時代のアジアの監督たち、僕にとってはホウ・シャオシェンさんが大きな存在ですけども。ホウ・シャオシェンさんとか、イ・チャンドン、ジャ・ジャンクー、そういう同じ時代に映画を作っているアジアの同志、友人たちに触発され、刺激を受けながら自分も彼らに見てもらって恥ずかしくないものを作りたいというふうに思いながら25年間やってきたので、そういう意識、ようするにアジアの映画人である意識だけは自分の心の底のほうにあるんだろうなとは思ってましたので、そういう意味でも今回の受賞というのは感慨深いものがあります。
何故撮るのかって言うのは本当に難しい質問なんですけど、今回のように日本を出てフランスでフランスのスタッフ、キャスト、アメリカのキャストと一緒に映画を作ったり、本当に優れた映画祭に招待を受けて参加をしてそこで出会う映画人たちとの交流を通して、それこそ自分が目に見える形で所属をしている国であるとか共同体というものより、もっとはるかに大きな豊かな映画という共同体の中に居させてもらって、そこでフランスのようなナショナリズムとは無縁の地点で価値観を共有して映画を通して繋がっていけるという、そういう気持ちなんですよね。それは本当に幸せです。そういう時間は僕を映画の作り手としても一人の人間としても成長させてくれると思っているので、作り続けます。
<Asian Filmmaker of the year(今年のアジア映画人賞) 授賞式 & 公式上映>
『真実』のGala Presentation部門出品に続き、今年のAsian Filmmaker of the yearにも選ばれた是枝裕和監督。「Asian Filmmaker of the Year(今年のアジア映画人賞)」は毎年アジア映画産業と文化発展に最も優れた業績を残したアジア映画関係者および団体に与える賞で、昨年は坂本龍一が受賞したことでも大きな話題となった。
授賞式と公式上映に加えて、上映後には直接監督に質問ができるQ&Aイベントもあることから、840キャパの会場がチケット発売開始後たったの3秒で完売し、当日券も朝一で売り切れとなった本上映。会場の客層は、20代~30代が圧倒的に多く、全員がいまかいまかと監督の登場を待ちわびていた。いよいよ、会見を終えた是枝監督が、劇場の後方にある扉から客席を通って登場すると、大きな拍手と歓声が巻き起こり、大盛り上がり!
ステージに上がり、トロフィーを受け取った是枝監督は、「本当にありがとうございます。開幕式に参加ができずとても残念でしたが、こういう形で釜山映画祭に参加が出来て、皆さんの前で喜びの言葉を伝えられることが本当に嬉しいです」と喜びを明かし、「名誉賞を頂くことが増えてきて、そろそろキャリアの仕上げに入っていると思われるのではないかという不安がよぎっています(笑)。ただ今回映画作りをご一緒したカトリーヌ・ドヌーヴさんに比べたら、まだまだ駆け出しの若造で、これからの僕の映画人としてのキャリアの道のりは、これまで過ごしてきた25年間よりもさらに長くなるだろうと、長くしたいなと、思っておりますので、これからの作品も頑張って作っていきたいと思います」と今後の抱負を語った。
最後に、「このトロフィーは、尊敬するアジアの映画人から渡されたリレーのバトンだと思ってしっかり受け止めて、次の世代のアジアの作り手たちに渡したいと思います。いろんな対立や隔たりを超えて、映画と映画をつないでいく役割を担っていければいいなと今日改めて思いました」と明かすと、再び盛大な拍手が巻き起こった。
続けて、舞台挨拶として「この映画は、母と娘の物語です。いろんな母と娘が作品の中に登場します。ここ数作、重たい作品が続いたので、観終わった後に、気持ちが前向きで明るくなるような、少し遠回りして家までの道を歩きたくなるような、そんな作品を作りたいなと思いました。素直に楽しんでくださいと言える作品に仕上がっていると思います」と、これから映画を鑑賞する観客へコメントを寄せ、笑顔で会場を後にした。
<Q&A>
上映後、温かな拍手に包まれながら再び出迎えられた是枝監督。Q&Aが始まると、客席からは公式会見に負けないほどの手が挙がり、両手で必死にアピールする人も続出! 劇中の登場人物のカット割りを分析して質問したり、監督の過去作からの考察を述べるような猛者が現れたり、監督の言葉に何度もうなずいたりと、熱心なファンたちによって会場はヒートアップ! 質問の手が絶えないため、急遽Q&Aの時間を延長し、最後は監督が壇上から観客を当てる形となった。
Q&Aが終わった直後は、サインを求めるファンたちが監督のもとへ殺到! 監督は、会場が使用できる時間のギリギリまで笑顔でファンサービスに応え、その後バックステージ裏でも、スタッフたちからサインを懇願されたりと、韓国でも高く評価される是枝監督の確かな人気がますます明らかとなった。
是枝裕和監督: 僕の映画をずっとフランスで公開してくれているプロデューサーがいるんですが、彼女が“ジュリエット・ビノシュが会いたがっている”と僕に紹介してくれて、そこから一緒にお寿司を食べに行ったのが最初でした。2006年ぐらいだと思います。
是枝裕和監督: その食事から交流が続き、2011年に彼女を東京へ呼んで、僕がホスト役で長いインタビューをするというイベントがありました。それをきっかけに“将来的に何か一緒に映画をつくりませんか”という正式なオファーをいただいて、そこから8年かかってこの作品が完成しました。
是枝裕和監督: 今回のお話は、“小さな女の子がおばあちゃんの家に行くと、お城みたいなところに魔女がいて、その周りにいろいろな動物がいた”という、オズの魔法使いではないですが、おとぎ話のような感じをなんとなく作品全体に残したくて。リュックだったらうさぎ、ジャックはくま、というようにそれぞれの登場人物に何か動物を背負わせてイメージしています。
是枝裕和監督: 今回日本語で書いた僕のセリフを、全部フランス語に直すにあたって、文法的には日本語と全く違う文法、時制の統一や主語をどうするかとか、全部通訳の人と一緒に書き替えていくにあたって、結構大変でした。それでも、メインの女性4人の声を自分の中に思い浮かべながら、それぞれにみんな特徴がある声をしている……そのアンサンブルというのか、ハーモニーをどういうふうに捉えていくのか。例えばファビエンヌ、カトリーヌ・ドヌーヴさんというのはすごくセリフを言うのが速い、本人も話していたけれど「すごく短い時間でたくさん言葉が出てしまうの」と。それをこうなるべく活かそうと。娘のリュミールは、ビノシュさんのお芝居がそうなんですが、沈黙した瞬間に一番感情が出る女優さんなので、彼女が黙って見ている、というところで、すごくこう感情が伝わる。マノンさんは、オーディションで選んだ時、非常にこうハスキーな独特の声をされていて、テンポもすごくゆったりとしていたので、そういうバランス、それぞれの持ち味のテンポの違いみたいなものを重ねていく、そういう意識でやっていますね。
セリフの意味が分からないから、余計に、音楽的なことを頼りにしながら作っていきました。
是枝裕和監督: ドヌーヴさんは、すごく軽快にリズミカルにテンポよくセリフを言い終わって素晴らしかったな、って思って通訳に「今、すごく良かったよね?」と聞くと、「でもセリフが全然違います」となることが度々あって。彼女はリズムで覚えていくタイプで、現場に入ってからセリフをガンガン覚えていくという、現場を重視した方だったので、OKとNGのジャッジは常に不安でした。
是枝裕和監督: 瞬間? 例えばカトリーヌ・ドヌーヴさんは“あ、いまスイッチが入った”というのが分かるときはハッキリ分かって、僕がカットかけて通訳の人と相談する前に『いまのがOK』と自分で言ってくれるので。常にそれが正しい、後で見たときにそれが本当に正しいんですね。ビノシュさんは納得がいかなければ、同じようにカットと僕がかけるとすぐに僕の顔を見て『もう一回やらせて』って言うから、楽だっでしたよ(笑)。
是枝裕和監督: 細かく観ていただいて、ありがとうございます。カメラワークは基本的にカメラマンのエリックが決めている部分が多いです。あなたが言っていただいた顔を映さず、背中を映しているシーンもたしかに何ヵ所かありまして、例えば本読みのシーンでドヌーヴさんが前に出てきて、マノンの背中越しにセリフを言い続けるドヌーヴさんだけを撮る。そこにはマノンもいるけれど、ファビエンヌにはマノンがサラにしか見えていないから、そういうときはマノンの顔はいらない。存在だけがそこにいる、もしくは声だけが聞こえる。そういうように存在を消すために、もしくはその人の向こう側に何か別のものを見ているときに、背中を撮っていた気がします。
是枝裕和監督: そこまで自分で前作と比べながら作っているわけではないんですけど……(笑)。確かに今回はあの母と娘の関係を修復していく、娘側から演じるという行為を二人の間に挟んで、お互いが自分主義というのをリライトしていく、修正していく可能性を描いてみたいなと思った感じはあります。必ずしも自分の中にあるものが決まっているわけでもないし、家族観を更新させようとして作品を撮っているわけでもないので、この先どんな人間ドラマを撮るか今は白紙ですし、次の話をすると、この5年間で毎年映画を撮っていたので、さすがに飛行機に乗ってもアイデアがでてこず(笑)、しばらくお休みをしようかなと思っています。
是枝裕和監督: そこは本当にクライマックスで、ロケハンで家を探しているときに、あの円形の窓が何個もあるテラスが見つかって、“あ、ここで最後に母と娘が抱き合ったら”って決めちゃって。あそこだけはかなり細かくいろいろなことを決めて撮影をしています。
是枝裕和監督: あんまり家族を撮り続けているという自覚がなくて。撮っていて面白いと思ったのは、今作では母と娘があの家の中でいろいろな顔を見せていくんです。娘の顔や母の顔、妻の顔……ドヌーヴさんだったら祖母の顔、そして劇中劇では娘の顔にも変わっていく。一人の人間を反面的に多角的に描こうと思うと、ファミリードラマのほうが効率が良かったり、人間を立体に描きやすいんです。役割が変わってくると見せる顔が違うし、使う言葉が違うので、そういう魅力を感じているのは確かです。
是枝裕和監督: 『歩いても 歩いても』をという映画を撮ったときから、常にファミリードラマを撮るときは、“家族はかけがいのないものだけど、やっかいだ”という、その両面をどのように描きとるかは考えています。
是枝裕和監督: リアルだと思っていただけたとするならば、役者のカトリーヌさんであって、ファビエンヌではないですが、そういう人やものを観察して作品の中に落とし込めるものは落とし込むという作業を毎日やっていきます。
是枝裕和監督: 魔法は使ってないですよ(笑)。アドリブはほとんどないんです。ただ撮影をしながら脚本を書いていく、撮影して夜編集して、脚本を直して、翌日話してっていうやり方をしているので、現場でよく観察をしていて。例えばドヌーヴさんが「お疲れさま」って皆にハグをして帰るんですけど、良いお芝居ができて帰るときはキスの位置がここからここ(唇近く)に移るんです。それがすごく面白いなって思って、ハンクにそういうキスをして、それを聞いた妻のリュミールが自分の母親の女の部分に苛立つ、という話は僕が現場でキスされたときの経験を書きました。
現地の韓国では、『真実』は12月より公開予定。
(オフィシャル素材提供)
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