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2018-06-11 更新
ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、夏木マリ、岩田剛典、美波、河瀨直美監督
河瀨直美監督最新作『Vision』が6月8日(金)より全国公開中だ。この度、6月9日(土)に、来日したジュリエット・ビノシュはじめ、永瀬正敏、夏木マリ、岩田剛典、美波、河瀨直美監督が登壇し、公開記念舞台挨拶が実施された。
映画の余韻が残る空気の中、今かと待ちわびた観客たちからの大きな拍手とともに、1年ぶり4回目の来日を果たしたジュリエット・ビノシュと、永瀬正敏、夏木マリ、岩田剛典、美波そして河瀨直美監督が登場。
淡いピンクのドレスで登場したビノシュは、この日のために覚えたという日本語で「コンニチハ、ミナサン。アイシテマス」と挨拶し、周囲を驚かせた。一方で永瀬が「ボンジュール、皆さん」とあいさつし、客席から笑いが。続いて夏木も流暢に「ボンジュール、ジュリエット・ビノシュです」と挨拶し、さらに観客を沸かせた。岩田も「皆さん、ボンジュール。今回初めて河瀨監督の作品に参加させていただきました。日本の美しさが表れている作品です。多くの方に届くよう盛り上げていきたい」と挨拶すると、美波も「ボンジュール、この映画で日本全体が吉野の森に包まれて、不思議な現象が起きるのではないかと期待したい」と作中のような独特の雰囲気をまとってコメント。本作が記念すべき劇映画の第10作目となった河瀨監督は、全国130館で同時に実施されているライブビューイング会場に向けて手を振り「全国の皆さん、ありがとうございます」と呼びかけた。「本当は一人ひとり挨拶をしたいけれど、想いは皆さんと一緒にいます。この深い森の中の出会い、絆を皆さんに届けたいです」と満席の観客に感極まった様子だった。
前日には関西の舞台挨拶について「平日だったけど、地元の奈良では多くの人にこの作品の誕生を祝ってもらえました。この映画の冒頭では、ジュリエットが近鉄電車に乗って奈良に向かう途中で涙を流すシーンがあるんです。台本には涙を流すということは書いていなかったけれど、その涙の意味を考えると心が震えました」という河瀨監督に対して、「あの涙は予感だったのかもしれない」とビノシュは回答。「この映画で本当に素晴らしい体験をさせてもらいました。日本に来ると、東京や大阪、京都と都会ばかりでしたが、今回吉野で大切なものに触れたと思います。河瀨監督は詩人だと思います」と日本と本作で初タッグとなった監督への想いを明かした。
本作を最初に見たときに眠れなかったという永瀬は「今も眠れません。ずっと震えっぱなしです。今日ビノシュと一緒にいることでさらにその気持ちがよみがえってきました」といい、撮影中に奈良の談山神社でビノシュとデートをしたことが明かされると「ジュリエットはずっと“美しい”と言っていて、その姿は彼女が演じるジャンヌとすごく重なりました」と思い出しながら語った。ビノシュも「あの森では空気や風、色彩や虫などすべてが生きていることを感じた。街にいると自然と離れているけれど、人は自然に還ると思っているので、森の中に身を置くことで落ち着きましたし幸せでした。特に今回は一人ではなく、監督たちといっしょで、そういう気持ちが倍増しました」と情感たっぷりに語り、撮影の時の気持ちを思い出したようだった。
撮影については岩田も「台本を読んだ時に英語で話すシーンがあって、最初はどうしようかと思いました。撮影中は奈良の中で生活しながらで、その間も自分のセリフとかアドリブとか努力していたんですが、いざ撮影に入るとビノシュさんの包み込むような母性にすごく助けられました。目と目が合うだけで伝わるものがあるんだと感じましたね。微妙な表情の違いなども伝わってほしいです」というと河瀨監督から「冒頭でジュリエットが泣いたように、彼もご飯を食べながら泣くシーンがあるんです。それは台本には無かった」と思わぬ暴露が。岩田は「日常生活を切り取っているような感じで撮影していたので、鈴の気持ちになったら自然に出てきたんです」と明かした。岩田の涙についてはビノシュも「今回初めて会ったのに、深いところでつながっている気がしました。まさか日本に息子がいるとは思わなかった」と言い、会場を驚かせると岩田も「僕もビノシュさんをフランスのお母さんだと思っています」と本作の撮影で深い絆が出来上がったことを思わせた。ビノシュのコメントについては、通訳が聞き逃してしまう一幕もあったが、本作でも通訳役として登場する美波が劇中同様にサポートするという通訳ぶりを発揮していた。
作中についてビノシュから夏木が披露するダンスについて触れると「(岩田や森山未來など)本作はダンサーがたくさん出演していて、その中で踊ってと言われたので、ちょっと時間がかかりました」と少し照れた様子。しかし、河瀨監督からは「本当に山の主のようでした。あの日はきれいな光が森に降り注いでいて、まるでvisionだった。映画史に残る美しさだったと思います」と太鼓判。
美波はビノシュとの共演について「役者としてのスタイルを盗もうって思いながら現場に入ったんです。でもジュリエットは古事記や空海のことなど、日本のことを徹底的に勉強してこられて、恥ずかしながら私がぜんぜん答えられなかったんです。自分の想像よりはるかに日本というものを知ろうとしていて、日本の文化とフランスの文化が溶け込んでいくことにゾクゾクしました」と語ると、永瀬からもビノシュが「一流とは努力すること」と言っていたことが明かされ、一同は納得の表情だった。「私は人々がどんなことを感じで、考えているのかをシェアすることが大事だと常に思っているの。今回のように映画を通して日本を深く知ることができて、すごく幸せだった」と笑顔で語るビノシュに、永瀬から特別に吉野の森をイメージしたという和傘がプレゼントされた。和傘を開いて見せたビノシュも「アリガトウゴザイマス。メルシー、メルシー」と大喜び。
最後に、永瀬が「この映画の中で僕はジャンヌとアキと鈴とコウを愛していて、愛が詰まっている作品です。この映画を観て、愛しい人のことを想って、その愛情を再び劇場にもってきてほしい」と語ると、ビノシュは「誰もが暗い部分に落ちこんだ時に、自分と向き合わなきゃいけない。そうやって成長していく可能性を感じさせてくれる、まるで神話のような作品」と観客を包み込むかのようにやさしく表現した。河瀨監督も「去年のパルムドールでプレゼンターを務めたジュリエットが『映画は光』と言っていました。光がなければ私たちは存在しないんです。そういう原点に返ってこの映画を作りました。ぜひ皆さんに『万引き家族』も『vision』も見てもらえるようにお願いします」と会場に語りかけ、イベントは本作の雰囲気と同じように和やかに終了した。
(オフィシャル素材提供)