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『皆さま、ごきげんよう』来日記者会見

2016-11-11 更新

オタール・イオセリアーニ監督

皆さま、ごきげんようgokigenyou

配給:ビターズ・エンド
12/17(土)より、岩波ホールほか全国順次ロードショー!
© Pastorale Productions- Studio 99

 ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞し、日本でも大ヒットを記録した『月曜日に乾杯!』などで知られる世界的名匠オタール・イオセリアーニ監督の最新作『皆さま、ごきげんよう』が12月17日(土)より、岩波ホールほか全国公開となる。公開に先立ち、オタール・イオセリアーニ監督が『汽車はふたたび故郷へ』以来、約5年ぶりとなる来日を果たし、岩波ホール 会議室にて記者会見を開いた。約90分間話し続けた、82歳のイオセリアーニ監督が感じている、映画業界のいまとは。

 フランス革命の時代、どこかの戦場、現代のパリ――時代が違っても、変わることなく繰り返される人間の営み。争いや略奪、犯罪は決してなくなることはない。それでも、溢れるほどの愛や友情、希望がある。寒い冬の後には、必ず花咲く春がやって来る。明けない夜はない。そう、明日は今日よりも良いことが待っている。混沌とする社会の不条理を、反骨精神たっぷりのセンスの良いユーモアで、ノンシャランと笑い飛ばす。カンヌ、ヴェネチア、ベルリンなどで数々の賞を受賞し、世界各国でゆるぎない評価を得ているオタール・イオセリアーニ監督が、軽やかに謳いあげた夢が詰まった人間賛歌。『皆さま、ごきげんよう』は、極上のワインのような豊饒な輝きを放つ傑作だ。


■ 文学が映像化されるということを、改めて考えてみませんか?

 冒頭、イオセリアーニ監督が話し始めた内容は、昨今の映画の話だった。イオセリアーニ監督「文学は読まれるもの。私の友人である映画作家たちは、それらを映画化しようとは思いませんでした。なぜなら、映像化するということは素晴らしい文学を“映画に利用する”、ということだと考えているからです。例えば『戦争と平和』を映画で観た人は、その後に本を読むと、映画の登場人物たちの顔を思い出しますよね。それは、文学と真剣に対する権利を奪っていることにならないでしょうか」と、オリジナルの脚本でつくられていない映画が多いこと、そしてそれは文学の良さをなくす行為ではないかと問いかけた。


■ フェリーニが泣いた!? 彼らが嘆くいまの映画業界とは。

 イオセリアーニ監督「ある時、ボリウッドとハリウッドという映画業界を変える、二つの施設ができました。そのため映画は商売をするものへと変わり、自由な思想と発見の場ではなくなりました。いま、「映画」といえるのは映画作家の作品です。作家の映画というのは、作品に最初から最後まで“作家”として責任を持つこと。少ないですが、今もそのような作品はあります。でも若者は、悲しいことに映画作家の作品ではなく、商業映画を観ています……。(フェデリコ・)フェリーニの映画はイタリアでは観られていないそうなのです。 もちろん、フェリーニのことをみんなが知っています。以前、フェリーニと電話をした際「あなたの映画を観る時間がない」と言われたと、彼は泣いていました。「時間があればハリウッドの映画を観るからね」と。テレビを見慣れた人たちは、スーパーマン、蜘蛛男、義眼のシュワルツネッカー、そういったものが大好きです。人々を楽しませることを最優先する映画は、芸術ではなくなってしまいました」と、人々にとっての映画のあり方の変化を指摘した。


■ 灰皿がチェーンで囲まれている……。生き生きしていた東京の姿はもうない!

 パリの街並みを自由に切り取り、登場人物たちが行き交うのが印象的であった本作。「映画にとって街の風景とは大事なのでしょうか」という質問に対し、「撮影する場所はどこでも構わないのです。厚紙で書いた背景をバックに撮ってもいいんです」と答える監督。次いで、「いつか富士山を背景に撮ってみたいです。でも、東京は変わってしまいました。20世紀初めは無秩序で生き生きしていて、素晴らしかったです。でもいつの間にか、良くも悪くも規律正しくなってしまいました。いまの東京は灰皿の周りにチェーンをし、急いで一服させられます。落ち着いてタバコも吸えない。信じられません。そして、さらに危機的なのは、それに対して意義を唱えていないことだと思います」と、5年ぶりの来日で、変わってしまった東京の姿を憂いていた。


■ それでもまだ、日本の観客を信じている!

gokigenyou イオセリアーニ監督「唯一、映画作家の映画を鑑賞できる人たちは、我々の世代です。仕事に疲れた我々の世代が頑張って映画を観に行っても、映画館で上映しているのは大衆映画。次第に我々の世代は誰も映画を観に行かなくなり、作家の映画の観客もいなくなってしまいました。でも今回、なぜ私が日本に来たのでしょう? それは、日本にはまだ、良い趣味のカケラが残っているのではないかと信じているからです」と、日本の観客には映画を観る力があると語った。

 イオセリアーニ監督が思う、“映画とは”という問いを時間たっぷりに説きながらも、通訳者が話をしている最中、突如立ち上がり、「通訳をされている間に、一服してきます」と、一旦退出した監督の自由奔放さに会場から笑いが起きた場面も。本作からも溢れる、イオセリアーニ監督のユーモアを肌で感じられた超濃厚な記者会見となった。


(オフィシャル素材提供)




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