このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Media Playerをダウンロードする
2013-11-12 更新
トム・ハンクス、ポール・グリーングラス監督
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
11月29日(金) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
© 2013 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
2009年に実際に起こったソマリア海賊・米船長人質事件をモチーフにしたポール・グリーングラス監督渾身の新作『キャプテン・フィリップス』。第26回東京国際映画祭のオープニング作品に選ばれた本作のプレミア上映に併せ、アカデミー賞の呼び声が高い迫真の演技を見せた主演のトム・ハンクスがポール・グリーングラス監督が来日、記者会見を開いた。
本作で描かれている海軍が救出劇を繰り広げた緊迫の4日間は全米に衝撃を与え、船員の命と引き換えに一人人質となったフィリップス船長の勇気にアメリカ中が感動。オバマ大統領も「フィリップス船長はアメリカ人の鑑(かがみ)」と賛辞を送ったこの人質事件を、『ユナイテッド93』のポール・グリーングラス監督が緊迫感溢れるドキュメンタリータッチな作品に作り上げた。
トム・ハンクスと監督は当初、16日に作品の記者会見を実施する予定だったが、台風の影響によりトム・ハンクスの到着が遅れ、記者会見は延期された。16日夕方、無事に来日を果たしたトム・ハンクスと監督は、17日の東京国際映画祭オープニングセレモニーに出席、華やかなグリーン・カーペットで安倍首相とも対面するなど、映画祭の幕開けを飾った。そして18日、延期となっていた記者会見に揃って登壇。各国からのジャーナリストも参加し、熱気にあふれながらもトム・ハンクスのお茶目な一面が垣間見える充実した記者会見となった。
ポール・グリーングラス監督: おはようございます。本日は来ていただいて誠にありがとうございます。初めての来日、東京で素晴らしい時間を過ごしています。東京国際映画祭のオープニングで上映いただいたことも非常に光栄です。
トム・ハンクス: おはようございます。幸運にも私は日本には、何度も来ています。本当にラッキーだと思います。マム(通訳:戸田奈津子:初来日からの友人)もここにいます。(ここで、戸田さんのメモを丸めて放り投げるトムに会場も戸田さんも大笑い。)東京国際映画祭では、楽しい仕事をしています。日本の監督、俳優、首相も来場していました。私には首相に投票できる権利がありませんが、とても楽しい一時でした。本当によく来ていただきました。ありがとうございます。
トム・ハンクス: もちろんニュースは知っていましたが、詳細は知りませんでした。フィリップス船長には製作前に2回会ったのですが、非常にノーマルな気さく方でとても驚きました。会った日も裸足でリクライニングチェアに座って、TVのバスケットボール・ゲームを見ながら、ビールを飲んでいたんですよ。事件のことは船長から非常に詳しく話していただきました。実体験も含め詳細を教えてくださって非常に参考になりました。
ポール・グリーングラス監督: とても大変な作業でした。救命艇の撮影ではジンバルも使用しましたが、ほとんどは実際の海での撮影でした。一日12~14時間の撮影で荒波の時もありましたし、肉体的に大変なことも多かったです。数日間を重ねると疲れが溜まってくるものです。驚くべきことに、私もトムも遺伝子的なものか分かりませんが、不安定な状況にも関わらず撮影を終えることができました。具合が悪くなるスタッフもいましたが、大変な撮影こそ映画製作のチャンスという姿勢で撮影していました。おかげで忠実に、本物のように出来上がりました。
トム・ハンクス: 救命艇の撮影では部屋に船がロックされている状況を作ってもらい、その中で撮影をしたのです。ドンと海に落ちるシーンはその部屋の中では出来ないので、俳優はそれによって具合悪くなることは避けられました。
ポール・グリーングラス監督: バランスはもちろん大切なのですが、自分にとって大切なのは観客が報われる体験を提供することです。その後についてくるものというのは、二の次なんです。例えば日本の皆さんが、土曜の夜に映画を観る時、鑑賞体験が報われるものであること。それがまず第一です。ですから、この素材で価値のある作品が提供できるかどうかをいつも考えています。劇場を出て素晴らしい映画だったという体験を与えたいと思っています。
トム・ハンクス: こういう映画を作るということは悪人が描かれるわけですが、この映画に関しては複雑な背景があります。この映画では、4人のやせ細ったソマリア人が描かれていますが、彼らの背景には腐敗した貧しい国があり絶望的で希望がない状況です。悪人の背後には複雑な状況があります。この映画では世界が不公平だということも伝わると思います。監督も言っていましたが、この世の中で一番いけないのは生きる希望のない若者に機関銃を与えることだと思います。悪を許すこととは話が違いますし、許しはしないけど複雑な背景を描くことに意義があると思います。
ポール・グリーングラス監督: 私もトムに同意します。この映画の興味深いところは、犯罪の物語だということ。犯罪の物語は、犯罪の結果がドラマティックに物語が展開していきます。そしていいドラマというのは、道徳的に明瞭であることだと思っています。それを軸として、何層もの奥行きとしての曖昧さが存在します。ドストエスフキー「罪と罰」やカポーティなどの作品が浮かびますが、同じようにそういうことが言えると思います。
ポール・グリーングラス監督: これが映画製作の現実なんですね。最後のシーンは違った場所での撮影を予定しておりました。フィリップス艦長が家に帰る用意ができた状況として撮影しました。実際のフィリップス艦長に救出された後、どこに連れていかれたのか聞いたところ医務室だということでした。ラスト・シーンで演じていた女性は衛生兵だったのですが、ただの訓練だと思って演技してください、と伝えました。皆、パニックに陥っておりましたがリアリティが出て良い結果になりました。
トム・ハンクス: 医務室で撮ることは予定外でした。監督の即座の決定で撮ることになったんです。監督の信念を信じて即興で撮影しましたが、このような撮影が監督の真骨頂だと思います。即興で自由な演技ができ、リアリティが出せるという貴重な体験をさせていただきました。
トム・ハンクス: 国際的なクルーと接触して、仕事の細かい部分を教えていただいて非常に参考になりました。特に副艦長を演じたマーフィーとは実際に1回海へ出たんですね。一泊する航海に乗せてもらったんです。船の動きなど詳細を学べたので体験から出た演技をすることができました。
トム・ハンクス: 冒頭で、海賊が侵入してきて去るシーンを1テイク撮影したのですが、監督がどうも物足りないということでもう一度撮影することにしました。あのシーンではフィリップス艦長の職業観が明らかになりました。この物語において、ポイントを置きたいことをクリアーにしていき、キャラクターを深く掘り下げていく監督の仕事に感銘を受けました。
トム・ハンクス: 本はとても素晴らしいのですが、映画化に関しては何も決定していないんですよ。もちろん指名は来ておりますが、ここで言えることは何もありません。
トム・ハンクス: ワールドカップとパンケーキが合わさったものですね(笑)。招かれたらパーティだと考えています。パンケーキをみんな貰える、というようなただで何かもらえるような嬉しさがありますね。実際アカデミー賞はただでタキシードが貰えるんですけどね。
ポール・グリーングラス監督: 映画をうまく終わらせることは本当に難しい作業です。正しく終えることも。いつもは何パターンか撮影してから最善の終え方を考えるのですが、1シーンだけ使えることも全く使えないこともあります。本作は正しい終わり方をすると文字通り完全に不完全に終わってしまう可能性がありました。感情的には満足いただけない状況になってしまうので非常に悩みました。個人的には『カサブランカ』『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』のラストシーンが好きです。
トム・ハンクス: (監督に同意しながら)『カサブランカ』のラストは私も好きです。あとは個人的には『ゴットファーザー』。あの終わり方もかなり好きです。
(オフィシャル素材提供)
関連記事
・シンポジウム・リポート