このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Media Playerをダウンロードする
2008-6-5 更新
三谷幸喜監督、佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか、小日向文世、戸田恵子、寺島 進、西田敏行、亀山千広(フジテレビジョン執行役員常務・映画事業局局長)、石原 隆(エグゼクティブ・プロデューサー、フジテレビジョン編成制作局局次長)、千田 諭(東宝専務取締役)
配給:東宝
6月7日 全国ロードショー
(C)2008 フジテレビ 東宝
大ヒット映画『THE有頂天ホテル』から2年、今やコメディの名手として日本では他の追従を許さない三谷幸喜監督・脚本の待望の新作『ザ・マジックアワー』がついに公開された。撮影真っ最中の頃に開かれた製作発表記者会見では監督をはじめ主要キャストが勢揃いし、作品への意気込みと期待を語った。また当日は、東宝スタジオ内に設けられた架空の街の巨大セットもマスコミに公開され、本物と見紛うばかりのその見事な造りに誰もが魅せられていた。
亀山千広:待望久しい三谷監督の新作をやっとご紹介できる日が来ました。あの『THE有頂天ホテル』から公開まで約2年以上になりますが、「お待たせいたしました」という感じです。偽物が本物を凌駕していく話でして、映画というのは役者さん、そして僕らが一生懸命、本物っぽく偽物を造っているわけで、今回は特に役者さんに対するリスペクトを込めた作品になっているのではないかなと思っております。
石原 隆:今回はハイパー・ノンストップ・コメディです。三谷さんとはテレビ・ドラマを中心に15年間くらいお仕事をさせていただきましたが、台本を読ませていただいて、本当に今までの作品とは格段に違うくらい笑いまくりました。ですから、その辺がハイパーと言われているところだと思いますが、とにかく面白い台本で、笑い転げて読んでしまいました。書いた本人が演出するわけですから、出来上がりのほうも間違いなく、笑える楽しい作品に仕上がると思います。そして、こちらに登場していただいた出演者の皆さん、こんなすごいキャストで素晴らしいノンストップ・コメディが観られるかと思うと、私も一ファンとして本当にワクワクしております。
千田 諭:三谷さんの監督作品というのは、フジテレビさんとご一緒してこの映画が4作目になります。このシナリオを読ませていただいて笑いを噛み殺すのが大変でした。本当に笑えて楽しいエンターテインメントな作品になるなと確信しております。我々のミッションはこの作品を一人でも多くの方に観ていただけるように取り組んでいくことです。万全の受け皿を作って、フジテレビさんと一緒にプロモーションを展開していきたいと思います。夏興行というのは非常に激戦でございます。洋画では19年ぶりにジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグの『インディー・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(6月21日公開)が公開される予定です。それから、『ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛』(公開中)、邦画では東宝の『劇場版ポケットモンスター/ダイヤモンド&パール ギラティナと氷空(そら)の花束 シェイミ』(7月19日公開)、スタジオ・ジブリの新作、宮崎駿さんの最新作になりますが『崖の上のポニョ』(7月19日公開)といった大作、話題作が目白押しでございます。この夏興行の先陣を切って、この作品は公開する予定です。『THE有頂天ホテル』をやりました日劇3を中心に、全国300スクリーン以上の編成を考えております。目標は『THE有頂天ホテル』超えで、動員数500万人以上を目標に取り組んでいこうと思います。フジテレビさんの力もお借りして、その目標をクリアしていきたいです。
三谷幸喜監督:今、『インディー・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』公開の話を聞いて胸がときめいています(笑)。この『ザ・マジックアワー』は、ハイパー・ノンストップ・コメディということですが、どういう意味か僕もよく分かっていないんです(笑)。とにかくハイパーであるということと、ノンストップである……じゃあ、今までのはストップしてたのかということになりますけど、確かに今回の作品に比べたら、前回の『THE有頂天ホテル』なんてもう、ストップだらけの作品だったと思ってください。すごくハイテンポな作品になっていると思います。台本は、本当に自分で言うのも何なんですけど、ずっと舞台・テレビ・映画を書いてきまして、たぶんコメディとしては一番質の高いものが出来たんじゃないかなと思っています。先ほど、「読んでいて笑いを噛み殺すのが大変だった」とおっしゃっていましたが、別に噛み殺さなくても良かったんじゃないかと(笑)。笑っていただいて良かったんですけど。俳優の皆さんも、台本を読んでくださって快く出演を承諾してくださいまして、本当に魔法のような台本になっていると思います。それを今度は映画にするわけで、今回は本当に初めてコメディを作るつもりでやっております。前回は1分間に3回笑わせると言ったんですが、正確には3分間に10回は確実に笑う作品になっていると思います。ざっと計算しますと、1回増えてるんですけど……(笑)。ぜひ、楽しみに待っていてください。よろしくお願いいたします。
三谷幸喜監督:そうですね。とにかく、セットが素晴らしくて、種田陽平さんが作ってくださったんですが、一つの町を創り上げまして、かなりお金のかかったセットで、その分どこを切り取っても画になるという。実際、今まで撮った分も見たんですけど、こういう映像は日本映画で見たことがなかったなみたいなシーンがたくさん出てくるんで、それは僕の力というよりか、種田さんとそのスタッフの力がかなりあると思うんですけど、そこを見ていただくだけでも元は取れるんじゃないかなっていうくらい素敵な町になっています。
三谷幸喜監督:“マジックアワー”というのは、前回『THE有頂天ホテル』のときにカメラマンの山本英夫さんに教えていただいた映画用語で、一日の内で夕方日が沈んだ直後のごく短い時間帯なんですが、この世界が最も美しく映る瞬間なんだそうです。というのは、太陽が沈んだ瞬間なので、日は残っているけど光源がないから影が出ないんですよね。世界中に影が無くなる瞬間、でもまだ暗くなくて明るい、そういうすごく幻想的で素敵な瞬間で、必ず一日に1回はある瞬間というのを“マジックアワー”というらしいです。日本の古いスタッフの方たちは“白暮(はくぼ)”とおっしゃっているみたいですが、タイトル的に“白暮”にするか“マジックアワー”にするかということになったら、躊躇なく“マジックアワー”にさせていただきました。まあ、人生にたとえたときに人間にもそれぞれ一番光り輝く、短い瞬間があるんじゃないかと、そういう人生のマジックアワーにもかけてあります。
三谷幸喜監督:すごいですよね。寺島さん、隣に座ってますけど、『THE有頂天ホテル』に続いて2回目なんですが、やっと慣れてきたといいますか、そんなに怖い人じゃないんだということがおとといくらいに分かって(笑)。他の皆さんんも素敵な方々ばかりで、佐藤浩市さんは素晴らしいコメディアンです(笑)。佐藤さんもそうだし、妻夫木さんも深津さんも、今までにない役どころだし、全く新しい一面を見ていただきたいなと思っております。西田さんはもう、本当に昔から尊敬している俳優さんで、とにかく西田さんとはたくさん仕事をしたいなと思っていまして、またこういうご縁があったことに感謝しております。今回のテーマは「アドリブは言わない」という、過酷な禁じ手を加えさせていただきました。むしろ、控え目に抑え気味にやって、そこで盛り上がって笑ってしまうみたいな、そんな西田さんを見たいなと思っています。あとの人はいいね(笑)? 綾瀬さん! 綾瀬さんは本当に素敵な方で、とても肌の綺麗な方だなと思っております。綾瀬さんに関しては、リハーサルもたくさんやらせていただいて、かなり良いお芝居になっていると思いますので、その辺が見どころかなと思っております。
佐藤浩市:村田大樹、“だいき”と濁らず“たいき”と読む役なんですけど、(監督のほうを向き)設定としては3年前まで“だいき”だったんですよね?
三谷幸喜監督:あ、え? 聞いてなかった(笑)。
佐藤浩市:僕の役ですけど、3年前まで“だいき”だったんですよね?
三谷幸喜監督:あ、そうですよ。
佐藤浩市:「あんまりにも仕事がなかったので改名して、濁らずに“大器晩成”の意味もこめて“たいき”と彼は改名をしたんです」と監督から説明がありまして、非常に分かりやすい説明を受けて僕なりに解釈したつもりなんですけど、先ほどおっしゃったように、台本が本当に面白いんですよ。台本が面白いということはその反面、役者に対して極度のプレッシャーを強いるということであって、この面白さをどうやって三次元にしてお客さんに伝えるかというプレッシャーがすごくありまして、数十年ぶりくらいに胃に穴が開くんじゃないかと思うくらいプレッシャーを感じながら、毎日現場を何とか過ごさせていただいております。本当に楽しい映画になって、皆様の前に送り届けることができると思いますので、ぜひ期待してください。よろしくお願いいたします。
佐藤浩市:何をやっても結局はコメディだと思っているんですが、三谷さんが笑われるプロではなく、笑わせるプロだと思っているので、三谷さんの微に入り細に入る演出をどれだけ僕なりに感受できるかなというのがテーマで、コメディが持っている怖さというのかな、その怖さを十二分に感じながら現場にいる感じです。
佐藤浩市:「新撰組」は脚本だけだったんですけど、演出は今回で2本目で、ものすごくいろいろ考えていろいろおっしゃってくださるんですが、若干抽象的すぎる時があって、三谷さんのお考えをつかもうとは思うんですが、難しいときがあるんですけど、あれは本当に真面目に考えているんですかね?
三谷幸喜監督:僕は人を選んで、言葉も選んでます(笑)。寺島さんにはすごく具体的に説明します(笑)。
妻夫木聡:今回は三谷さんの作品に初めて参加させていただくことになったんですが、僕が最初に三谷作品を肌で感じたのは、「温水夫妻」という舞台を初めて戸田さんとやられたときに「観に来て」と言われて観に行ったのが最初で、舞台を観ていて“これがコメディなんだな”というのをすごく感じました。それから三谷さんの作品が大好きになり、毎回観させていただいているんですが、今回こうしてこの場にいられるなんて夢に思えるくらいうれしいですね。毎日緊張してやっているんですが、皆さんに迷惑をかけながらも、これからも良い芝居が出来るように頑張っていきたいと思いますので、ぜひご覧ください。
妻夫木聡:ディズニーランドに匹敵するくらいすごいんじゃないかと。もし僕に子供がいたら、たぶん連れて行きたくなるようなセットなんですよね。それくらい良いセットで、映画の撮影が終わっても残しておいてほしいなといつも思うんですが、そうもいかないんだろうな、と(笑)。本当に細かいところにまで凝っていて、全部カメラで写してほしいと思うくらい素晴らしいものに仕上がっています。
深津絵里:本日は暑い中、本当にありがとうございます。今回、この魅力あふれる共演者の皆様の仲間に入れていただいて楽しく撮影を進めております。今回、三谷監督とこうやって一緒に作品を作ることができてとてもうれしいです。やっと参加できて本当にうれしいなと思っております。
深津絵里:すごく楽しいですね。自分のことばっかり考えていればいいので、楽しいです(笑)。ただ、魔性と言ってもいろいろなタイプの魔性があると思うんですけど、今回は三谷さんの思う魔性の女性が描かれているはずですので、その辺も楽しんでいただけたらと思います。
三谷幸喜監督:僕が一番振り回されたいタイプの女性……ふ・深津さんじゃないですよ(笑)、役がね。で、深津さんが期待以上に演じてくださって、深津さんとも初めてだったんですけど、かなり入り込むタイプの方だなというのは感じますね。男を言葉で誘惑するようなシーンを撮る日は、もう朝から様子が変ですし、目もイッちゃってる感じで(笑)。“これは入ってるな”と感じますね。
綾瀬はるか:今回は三谷監督とすごい先輩方に囲まれて、日々緊張しながら撮影をしていますが、思いきりよく夏子役が演じられたらいいなと思いますので……頑張ります。
綾瀬はるか:すごく丁寧な演出をされていて、私に対しても細かく分かりやすくご指導いただいて、ありがたいです。微妙なニュアンスとかが……分かりやすいです。
小日向文世:10年ほど前、ドラマの衣装合わせに僕の女性マネージャーとある某テレビ局に初めて行ったときに、スタッフの方が僕の顔を見ながら「マネージャーの方ですか?」って言ったんですよね(笑)。それで今回、マネージャーの役が来て“来たな!”という感じがしました。黙って立ってればマネージャーに見えるのかなっていう……(笑)。まあ、役作りはあの時の気分を思い出しながらやってます。ちなみに去年、京都で時代劇をやっている時、ロケで僕はヅラをかぶってたんですけど、見物の方がやって来て僕の顔を見ながら、「誰が出てるの?」と言ったんですよ(笑)。“俺が出てる!”って言いたかったんですけど、“マネージャーっていうのはこういう気分かな……”って思いながら、役作りはバッチリです。楽しんでやらしていただいています。
小日向文世:佐藤浩市さんとは初めてなんですけど、間近で見ているとつい、マネージャーっていう仕事を忘れて、一ファンとして見てしまうというか……。でも、こんないい男がもし売れなかったら、ホントに切ないなと思いながら、何とかコイツを売りたいなという気分で役と重ね合わせてやっています。
戸田恵子:マダムということでして毎日厚化粧で……、実を申しますと私はもう撮り終えていまして、今日はちょっと遊びに来たような感覚で再びこの格好をさせていただいていますけど、ほくろの位置も毎回変わるようになっておりますので、そこを中心に見ていただければと思います(笑)。
戸田恵子:話し合った記憶は全くございません(笑)。まず撮影に入る前に、“蘭子の部屋”というのがありまして、ご覧になる機会がありましたらぜひご覧いただきたいんですけど、自分の過去の写真をものすごく貼っている女なんですね(笑)。そのスチール撮影のために、別日で2日来ました。もう、素晴らしい作品になっております。その部屋は本当に壊してほしくないな~と今から思っているんですけども、とにかく七変化というか、たくさん衣装も着せていただき、鬘(かつら)も毎回変えていただいて、非常に楽しい仕事でした。ただ、「厚化粧をしろ」ということばかりで、監督とはその他の細かい話は一切しておりません。
寺島 進:自分は『THE有頂天ホテル』に続いて二作目なんですけど、『THE有頂天ホテル』の時、三谷監督は一度も目を合わせてくれなくて(笑)、演出の時も下を向いてボソボソと言うだけだったんですけど、やっと2週間くらい経って、おとといくらいから目を合わせてくれるようになり、やっと具体的な演出が生まれまして、今日なんか午前中、もうメンチ切るような感じで凝視されて演出されて(笑)、だんだん三谷さんの世界が分かってきたというか、感じちゃってきているというか……。本当に本も面白いですし、自分の黒川裕美という役もすごく素敵な役なので、推薦していただいて心から感謝しております。
寺島 進:怖いとかカッコいいとかは全然意識していませんが、刑事とかやくざなどの役は今まで多くて、そういうイメージをもたれている方も多いと思いますが、今回は三谷監督の演出の下、43年間の人生の中で初めての役と言ってもいいくらいの、引き出しを無理やりこじ開けられている過程でございまして、本当に楽しみです。現場でも客観的に見るくせがあるんですが、本当に面白いですから、今ビリーズ・ブートキャンプなどでシェイプアップしている方がいると思いますが、この映画は本当に腹筋を鍛え上げて臨まないと観られないんじゃないでしょうか。観終ったらたぶん、ウェストが3cmくらい細くなるんじゃないかなというくらい、相当楽しいですね。
西田敏行:お暑いなか、ありがとうございます。今日は終戦記念日……黙祷(笑)。監督をはじめ、スタッフ・キャストの我々がアイデアや知恵を紡いで、この『ザ・マジックアワー』を創っていこうということで、意気込んで初日、撮影現場に入りましたが、開口一番、「なるべく面白いことをしないでください」と言われて、大変残念な結果になっておりまして……(笑)。これほど無口な男になっている現場はございません。……残念です(笑)。
西田敏行:はい、もう溜まりに溜まって、昨日もちょっと居酒屋でホザいていました……すみません(笑)。
佐藤浩市:皆さんはもう、セットをご覧になったんですか? まだですか。じゃあ、あまり煽るようなことは言うのを止めますが、本当に素晴らしいセットが建っています。やっぱり、美術部の愛情というか……。話は飛びますが、西田さんの天塩商会というビルの一室で今日も芝居があったんですが、そこの机の上に置いてある判子にまで、ちゃんと“天塩商会”と彫ってあるんですよね。そういう物の一つひとつ、この映画を創る美術部の愛情、スタッフの愛情と、そのセットのゴージャスさ……そういうものも全てプレッシャーになってしまう男なんで、“ノミの心臓”と言われているんで(笑)、セットを見るだけで“これに負けないように気張ってやっても、また空回りするな~”と思いながら、いろいろと考えつつ演じている毎日です。
佐藤浩市:何だろうな~。要は、スカイライン……でしょ?
三谷幸喜監督:どうぞ、スカイラインとは言わないように(笑)。
佐藤浩市:人生のマジックアワーは……どうなんでしょうね、それは今かもしれないし、それがいつなのか、僕には分かりません~(笑)。すみません……妻夫木くん、何とかしてくれ(笑)。
妻夫木聡:はい……マジックアワーですよね、どうなんでしょうね。や~僕自身、何回も言うようであれなんですが、三谷さんの作品、好きだったんで、今現在もこうやって三谷作品に関われてるというのが、自分のとってのマジックアワーなのかな、すごく光る瞬間なのかな……と思っています。現にこう、毎日撮影に挑んでいて、今までとは違う新しい自分に出会えている気がすごくするんですよね。それはもちろん、三谷さんに導いていただいているんだなとすごく感じているので、たぶん、撮影が終わって作品を実際に観た時に、“あぁ、やっぱり自分にとってのマジックアワーはこれだな”って思えるんじゃないかなと今は思っています。
三谷幸喜監督:勝てる自信がないとやりませんからね。……そんなにないです(笑)。また、ジブリさんがいらっしゃるらしいという……。どこまで付きまとうんだって……(笑)。いえ、共に力を合わせて映画界を発展させていきたいなと思っております(笑)。
三谷幸喜監督:邦画にコメディって、実はそんなにないんですよね。しかも、これだけお金をかけて、これだけのメンバーで創れる作品って唯一無二だと思うので、そういう意味ではライバルはいないですね。
佐藤浩市:やはり、ジャンルの中で一番難しいと思っています。あとは、流されないということですよね。もう、何十回、何百回と台本を読んで、きっちりと自分の押し引きを決めて、どういう現場のノリがあったとしても、自分のラインを守る、自分の決めた線までたどり着くという。抽象的な表現ですが、きっちりと周到に計算しなければいけない、そこまでもっていかなくてはいけないということですね。それと、軸がブレてはいけないということだと思います。
とにかく、素晴らしいセットだった。昔のフランス映画の香りがしつつ、昭和的な懐かしさも感じさせる佇まいで、しかも、到底映像では捉えきれない細部、例えば宿の箪笥の中に納められたマーク入りのスリッパや、石畳の隙間に挟まっているタバコの吸殻などなど……驚くべきこだわりで造られた巨大セットの中を歩いて、しばし陶然となった。
この見事なセットの中、豪華キャストがハジけまくる待望の三谷作品、劇場は爆笑の渦となっていることだろう。
(文・写真:Maori Matsuura)