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2008-07-14 更新
小林 薫、西島秀俊、門井 肇監督
配給:リトルバード
6月7日より有楽町スバル座・お台場シネマージュ他にて公開
(C)2007「休暇」製作委員会
『棚の隅』の門井 肇監督の最新作『休暇』がヒットを飛ばしている。6月7日に全国30館で公開されながら、その後約1ヵ月を経ても動員に陰りが見えず、8月以降全国の劇場約70館での公開が決まった。多くの観客の指示に感謝し、初日舞台挨拶には参加できなかった西島秀俊と、小林 薫、そして門井 肇監督が有楽町のスバル座で舞台挨拶を行い、ファンの皆さんに感謝すると共に、更なるヒットを祈願した。
歓声に囲まれて登壇した3人。まず挨拶を求められ、「有楽町スバル座では5週目に入ったそうですが、今はなかなか映画にお客さんが入りにくい世の中なのにこんなにたくさんの方に観ていただき、たぶん関係者の方が良い意味での意外な喜びを感じていると思います。小池プロデューサーにはギャラの還元をお願いしておきました(笑)」(小林)、「(先行公開の)山梨で舞台挨拶をして以来ですが、今回またこうやって直接皆さんとお会いできてとても嬉しいです」(西島)、「公開後5週目に入ったのにこんなに多くのお客さんに来ていただいて、嬉しい誤算ではないですが、本当に嬉しく思っています」(門井監督)と、皆本当に嬉しそうだ。
改めて撮影や役どころについて聞くと、「西島君以外にも、大杉 漣さんとか大塚寧々さんとか菅田 俊さんとか柏原収史君とかが出ていましたが、本当に過酷な現場が似合う役者たちばかりを揃えたなというか、ギャラには見合わないですがそういう現場をつい選んでしまう役者ばかりを上手く集めたなという気がしました。本当に良い共演者の方たちに恵まれたなと思っています。おそらく、本物の刑務官にとっては公務ですから、私情を挟むと仕事も上手くいかないだろうと思ったので、自分の演技でも西島君が演じた金田に感情移入するのはなるべく避けようと思いました。ですから淡々とした芝居・押さえた演技と言われたのですが、現場でも監督から“もう少し感情を出して下さい”といった指導はなかったので、ただそのままやっただけです」(小林)、「実際の独房などは見ていないので現実味がなかなか持てなかったですし、実際の死刑囚が何を考えどう感じているのか? もちろん想像することは出来ますが、知り得ない部分もあるのですが、小林さんから“ここはこうやってもらった方がやりやすいのではないのか?”とか、いろいろ助けていただきました」(西島)と語る。
すると小林から、「そんなことないよ。だって、西島さんだけはいつ死んでいくのか判らない運命の役なので。大杉 漣さんとか刑務官たちは待機場所の部屋で一緒にくだらない話をしていましたが、西島君まで引き込むと次の瞬間に切り替えるのが大変だから、放っておいたんですよ。そういう意味では大変な時間だったと思いますね」と、先輩としての西島への気配りを披露。それを聞いた西島も「何となく現場で僕が外れていたのはそのせいか(笑)。何か、皆楽しそうに話しているなと思っていたのですが。ありがたかったです。すごく集中できる現場で良かったです」とにこやかに語る。
このやりとりを横で聞いていた門井監督は、「こんなに公開から時間が経ってもお客さんがどんどん来てくれるというのは、製作者側としてはすごく嬉しいことで、それが全国にこれから広がっていくというのはとても嬉しい気持ちです。時代的なものもあり、モチーフにしている部分から注目されることもありますが、あくまでそういう状況にある人たちが一生懸命生きている姿を描いたつもりなので、観ていただいた人たちにそこが少しでも気に入っていただけたらなという気持ちです」と、作品への想いを披露。
あらためて門井監督と作品についての印象を聞かれた二人が、「もっと大きな予算があれば時間をかけて撮れたと思いますが、短期間でやらなければいけないシーンばかりで、本当に直球で撮られたと思います。シュールに逃げたりする映画は逆に楽ですが、このように逃げ場がなく直球で押さないといけない映画を、門井さんのような若い監督の元に若いスタッフが集まって撮りきったという意味では、監督の心意気をすごく感じました」(小林)、「脚本の佐向さんが監督をされた『まだ楽園』という作品を観て、監督としていつかお会いしたいなと思っていました。この作品の脚本を佐向さんが書かれたと聞き、読ませていただくとすごく面白かったので、ぜひ参加させていただきたいということになりました」(西島)と答えると、すかさず小林が「監督、ここにいない佐向さんが書かれたから出たと言っていますよ」と突っ込み、場内は爆笑に。
最後に、これからこの作品を観ることになる全国の皆さんへのメッセージを求められると、「(これほどのヒットは)予想をしなかったというか、ちょっと暗いかなと思っていたので、今の観客に受け入れられるかなと僕自身半信半疑だったのですが。何人かの知り合いに“チケット下さい”と頼まれ渡しましたが、後から“本当に良かった”と言ってくれたので、それがすごく嬉しかったですね。自分にも判らないんですよ、観てくれた人が感動してくれたり、すごく良かったと言ってくれる理由が。上映が全国に拡大してより多くの人に観ていただけることは、監督も同じだと思いますが、役者の我々としても本当に嬉しいのひとことに尽きるます。これからもたくさんの人に観て欲しいので、観終わってそんなに良い気持ちで帰れるわけではないと思いますが(笑)、今日来ていただいた人たちもお友達に勧めるとか、こういう映画もありますよということで、薦めていただければありがたいです……ということを、監督に代わって何で僕が言うのか(笑)? まぁ、そういうことです(笑)」(小林)、「あらかた薫さんに言われてしまいましたが(笑)、徐々にたくさんの観客の皆さんが来て下さっているというお話を聞いて、本当に本当に嬉しいです。この映画を観て何かを感じたり、受け止めたことがあったら、周囲の方にそのことを言葉で伝えていただければとても嬉しいです。よろしくお願いします」(西島)、「今、お二人に言っていただいたことがだいたい全てです。本当に小さい予算で短い期間で撮った作品ではありますが、他にもたくさん魅力ある作品がある中で、また違う意味で少し目立つ作品になったのかもしれないなと、今は思っています。“こういう映画もたまにはどうでしょう?”ということで、皆さんに提示してみたのですが、もしよろしければ宣伝をしていただいて、また多くの人にこの作品が触れられたらいいなと思っています。今日はありがとうございました」(門井監督)と語り、この日の舞台挨拶は終了した。
最後に、この映画を通じて伝えたいメッセージを聞くと、「死刑囚と刑務官が登場するのでちょっと重いような印象もあるでしょうが、そのことはテーマではなく、モチーフだと考えて作りました。あくまで登場人物の生き様に注目し、観ていただきたいと思います。裁判員制度などが話題になっているので、そのようなことを考えようという人たちにも、被害者と加害者だけではなく、刑務官という存在も関わっていることを知らせる意義もあるかと思います。でも、僕としては、ごく普通の娯楽映画の1本として楽しんでいただくのが望みです」と語り、この日の舞台挨拶は終了した。
続発する凶悪犯罪や、某新聞の「死に神」問題といった社会の追い風もあるが、本作のようにバジェットは小さいながらクオリティの高い作品がヒットすることは非常に嬉しいこと。全国各地のスクリーンで観ることのできるこの機会を逃さないで欲しい。
(文・写真:Kei Hirai)
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