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2008-06-5 更新
小林 薫、大杉 漣、柏原収史、門井 肇監督
配給:リトルバード
6月7日より有楽町スバル座・お台場シネマージュ他にて公開
(C)2007「休暇」製作委員会
橋本以蔵の人気漫画を実写映画化した『軍鶏(しゃも)』がいよいよ公開され、ゴールデンウィークまっただ中の新宿・歌舞伎町で主演のショーン・ユー、格闘家でもある魔裟斗、そして原作者の橋本以蔵が舞台挨拶を行った。
『棚の隅』でデビューした門井 肇監督の最新作『休暇』が公開される。吉村昭の短編を原作とした本作は、『まだ楽園』の佐向 大が脚本を担当。新婚旅行用の休暇を得るため、死刑執行での重要な役割を志願する中年の刑務官と死刑囚の姿を描き、先行公開された山梨では予想以上のヒットを記録している。重いテーマながら見応えのある作品に仕上げた監督と主要出演者たちが、完成披露試写の舞台で本作の見どころを観客に語った。
この日登壇したのは、主役の独身刑務官・平井を演じた小林 薫、ベテラン刑務官・三島を演じた大杉 漣、新人刑務官・大塚を演じた柏原収史、そして門井 肇監督。
まずはひとこと挨拶を求められた4人は、「この映画は本当にお金がなくて、時間もタイトで、朝早くから深夜まで山梨の山奥で撮影をしていました。でも、難しいテーマなのに、若い監督とスタッフがよく取り上げたな、頑張ったなと思います。ですから、鋭い批評は控え、心を広く持って観ていただけたら幸いです。よろしくお願いします」(小林)、「今日は、雨が降り足元の悪い中、僕もよくここまで来たなと思います。二の足を踏んで止めようかなと思いましたが、やはり舞台挨拶に来ないと怒られてしまうと思い、来てしまいました。撮影は昨年の11月、僕は刑務官の役ですが、男ばかりでむさ苦しいオヤジたちの合宿みたいな現場でした。それはそれなりに良いかなと思いましたし、こんなに地味なテーマを地味な監督が撮る日本映画も良いかなと思いました。今日は、皆さんにとってちょっとした意味での“休暇”になってもらえば良いと思います。ゆっくり楽しんで下さい」(大杉)、「この映画は、僕の地元の山梨県が舞台で、自分の育った街をスクリーンで観ることができ、懐かしく楽しい感じがしました。刑務官の役をやらせていただくことで、その仕事を知り、死刑についても考えさせられたので、そういったことも考えていただけたらと思います。最後までお楽しみ下さい」(柏原)、「この映画は短い時間で集中して撮りましたが、僕の経験が浅いにもかかわらず、優秀な役者さんたちに囲まれ、たくさんのお力をお借りして、成立しています。おかげさまで、(先行公開した)山梨ではたくさんのお客さんに観ていただいたので、ぜひ東京を中心とした全国でも多くのお客さんに観ていただけるよう宣伝をお願いします」(門井)と、それぞれ全国公開への意気込みを語る。
本作では、長年の内に親しみすら感じている死刑囚・金田(西島秀俊)の処刑に立ち会うことになった刑務官役を演じた小林。演技に当たっての気持ちを聞いてみると、「あまり深刻に考えないようにしました。確かに、人が死ぬ場所に立ち会わざるを得ない場面もありますが、そのことを重く受け止めてもしょうがないと思い、割と気楽にやりました。僕は自分の世界を狭くして生きてきたので、未だに現場ではどうしたらいいのかという気持ちになることがあります。ところが、隣にいる大杉さんは僕と同い年なのに場慣れしていて、いろいろなことを経験されています。場の保たせ方や皆をリラックスさせることに長けていて、自分の経験の貧しさを痛感しました。とにかく、大杉さんが現場をほぐしてくれたので、ずいぶん助けられました」と、撮影を振り返る。
寡黙な中年男・平井を演じた作品を見ての感想を聞くと、「そういうことは、あまり気になりませんでした。何をもって饒舌というのか判りませんし、黙っていても饒舌に伝えることも面白い。台詞というのは、喋ればだいたいの意味は通じますから、あまり重要ではないのではないかと思いました。観てくれる方が、いろいろなシーンを想像してくれたらありがたいと思います」と、自らの演技を語った。
豊富な現場経験が魅力といわれた大杉にとって、今回の現場の感想を聞いてみると、「現場にはいろいろな楽しみ方がありますから。例えば、何もない山の中で、緑を見て、鳥の声を聞いて、どうやって楽しもうかと考えるのも、また楽しみなわけです。皆さんそれぞれに現場に対する見方があると思いますが、僕は現場のムードを作っているように見せかけ、実は自分のムードを作っていたわけです。皆さんのことを考えていたわけではないので……。もう、これぐらいで良いでしょうか(笑)? 嘘ではなくて、現場はすごく楽しかったですよ。男ばかりでむさ苦しいところもありましたが、それもまたいいものでした」と楽しそう。
門井監督とは、デビュー作の『棚の隅』に続いての登板となったが、「この映画と同じく、プロデューサーの小池和洋さん、門井 肇監督と一緒に、連城三紀彦さんの書かれた『棚の隅』という自主映画っぽい作品を作りましたが、多少うまくいったので、2本目が撮れることになったのだと思います。そのことはとてもうれしいですが、映画監督として門井さんに3本目、4本目と撮っていただくためにも、ぜひ『休暇』が上手くいってもらいたいですね。そのためには、皆さんのお力が必要です。ぜひ、応援して下さい」と、エールを送る姿も見られた。
柏原収史にとっては地元である山梨での撮影だが、「今まで山梨が舞台の映画に参加したことがないので率直にうれしかったし、もし参加できなかったらすごく悔しかったですね。現場には実家から通い、母も喜んで差し入れを作ってくれました。高校時代に戻ったような気持ちでした」と、今回の撮影は特に楽しかったようだ。
新人刑務官役を演じるにあたり心がけたことを聞くと、「少し重いテーマの映画だったので難しいかなと思いましたが、僕の役どころは新人刑務官ですから、何も知らずに暴言を吐いたり、周囲に迷惑をかけてしまう役どころなので、多少調べることもありましたがリアルに演じることができました。映画を通じて刑務官の仕事を知っていきましたが、純粋な若者でいようと心がけました」と、にこやかに語った。
門井肇監督にとって本作『休暇』は2本目の作品だが、いきなり豪華顔ぶれの出演者たちと一緒に撮った感想を聞くと、「緊張しなかったというと失礼かもしれませんが、このような皆さんと一緒にやれることが楽しくて。映画の世界で活躍されてきた皆さんから力をいただくと同時に、いっしょに立ち回っていることが出来る楽しさの方が先にあり、撮影期間が短かったので寂しかったですね」と余裕の表情だ。
最後に、この映画を通じて伝えたいメッセージを聞くと、「死刑囚と刑務官が登場するのでちょっと重いような印象もあるでしょうが、そのことはテーマではなく、モチーフだと考えて作りました。あくまで登場人物の生き様に注目し、観ていただきたいと思います。裁判員制度などが話題になっているので、そのようなことを考えようという人たちにも、被害者と加害者だけではなく、刑務官という存在も関わっていることを知らせる意義もあるかと思います。でも、僕としては、ごく普通の娯楽映画の1本として楽しんでいただくのが望みです」と語り、この日の舞台挨拶は終了した。
死刑執行という重いテーマを扱っていながら、命の終焉と人生の再生を描き、心地よい清々しささえ感じる作品となっている。デビュー作に続きクオリティの高い作品を完成させた門井監督。今後の活動にも期待が高まる。
(文・写真:Kei Hirai)