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記者会見

トップページ > 記者会見 > 『エンジェル』来日記者会見

来日記者会見

2007-12-02 更新

フランソワ・オゾン監督

エンジェル

配給:ショウゲート
12/8(土)、日比谷シャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!!
(C)2006 - Fidelite Films - Headforce 2 - Scope Pictures - FOZ - Virtual films - Wild Bunch - France 2 Cinema

 英国の女流作家エリザベス・テイラーが1900年代初頭に生きた1人の女性の生き様を描いた「エンジェル」が、25億円を投じ、女性映画の名手、フランソワ・オゾン監督の手によって美しい映像で映画化された。監督にとってフランス語ではなく、初めて英語を使用した初のコスチューム劇作品となった。監督は『スイミング・プール』以来3年ぶりの来日。

-----まずは、ご挨拶からお願いします。

 こんにちは。この3年の間、僕は僕なりにたくさんの仕事をしてきた。そして、大切な『エンジェル』と共に日本に戻ってこられたことをうれしく思っているよ。

-----フランス語ではなく英語で作品を作ることなった理由を教えてください。

 この作品は英国の女流作家エリザベス・テイラーの原作で、モデルになったマリー・コレリという女性が実在していた。彼女はとても不思議な人で、僕は彼女に恋をしたような気持ちになったよ。ヴィクトリア朝、エドワード朝を生かした舞台背景がフランスでは見つからなかったので、イギリスを舞台に英語で撮ることにしたんだ。

-----エンジェルを演じたロモーラ・ガライさんについて教えてください。

 16歳から44歳までを演じ分ける女優を見つけるのは大変だった。たくさんの女優をオーディションしたが、ロモーラは特別だったね。いろいろな表情を持っているんだ。とても美しく、平凡に見える部分もあって、チャーミングだ。生意気そうなところもあって、エキセントリックに見える部分もある。エンジェルが持っている長所、短所全てを持ち合わせていた。彼女は見事にエンジェルを体現してくれたよ。
 多くの女優は脚本を読んで、エンジェルという人物に対して「こんな女性は変だ」とジャッジをしてしまうんだが、ロモーラはエンジェルの性格をすぐに把握してくれた。「エンジェルは女優なんだよ、自分自身を演じているだけなんだ」と僕が話すと、彼女はすぐに理解したようだった。彼女との仕事は素晴らしくうまくいったよ。
 イギリスの俳優たちと一緒の仕事は初めてだったが、彼らは全てのセリフを頭に入れてから現場に臨んでくれた。本当にプロフェッショナルで、一緒の仕事はとても楽しかったよ。

-----本作は1950年代を舞台に描かれていますが、その時代への思いを聞かせてください。

 1950年代のハリウッド映画はとても好きなんだ。第二次世界大戦でヨーロッパに居づらくなった監督たちがハリウッドに移民して活躍していた時代だね。娯楽映画のように見えながらも深いテーマを持ち、きちんとした世界観も持っている。そして、テクニカラーを使用して鮮やかな映像を見せていた。エンジェルは夢の世界に生きている人物なので、ピッタリだった。

-----衣装へのこだわりや楽しまれた点はありますか?

 衣装にはこだわりがあった。エンジェルの衣装で彼女の人生、栄光と凋落が現せると思ったからね。栄光の頂点にいる時エンジェルは赤いドレスを着ているが、喪服を着て、最後はボロ服を着るようになる。そんな部分がとても面白かったね。エンジェルはエキセントリックな人で、夢の世界に生きていたから、時代に合わせる必要はなく、自由に表現することが出来て楽しめたよ。

-----あなたが女性を描くときにこだわる部分は?

 これは僕だけの話じゃなく、男性のほうが女性を描きやすいと思うよ。より明晰な視点で、女性を客観的に見ることが出来るからね。確かに、僕の映画には女性の登場人物が多い。僕はヒロインの後ろに隠れながら、自分自身を投影するやり方をしている。僕にとって女性とは、距離をとりつつ、自分を同一化できる存在なんだ。

-----『スイミング・プール』で描かれたような作家と編集者の関係について、映画監督としてどのように思われますか?

 『エンジェル』の原作は『スイミング・プール』を撮る前に読んだが、コスチューム劇ということで僕には無理かなと思っていたし、その頃『8人の女たち』を撮り終えたばかりだったで、次は軽い感じのものを撮りたいと思っていたので、先に『スイミング・プール』を撮ることにしたんだ。小説家と編集者の関係を描くことで、アーティストがどう生きているのかを描いてみようと思った。プロデューサーと監督の関係に重ね合わせている部分もあるね。

-----エンジェルとノラとエスメのトライアングル・ラブは原作にあったのでしょうか? 原作と違う点はありますか?

 3人の出会い方は原作とは少し違っている。最も大きく変えたのはエスメの描き方で、原作ではエスメは才能のない画家になっていた。でも、僕の映画では、エスメは才能があったにも関わらず当時は認められず、死後にはおそらく認められ、エンジェルは生きている間は成功を堪能するが、死後は誰からも見向きされないという設定にし、二人の芸術家の生き方の対比を見せたんだ。
 僕にとって、この問いかけは興味深いものだった。芸術家にとっては、どちらの道が幸せなのだろう? 死後に忘れられるとしても、生前に成功と名声を得たほうがいいのか? それとも、たとえ死後であっても、後世に残るほうがいいのか? あらゆる芸術家は生涯、自分にそうした問いかけをしてるものではないだろうか。


 この後、花束を持って夏木マリさんが登場。オゾン監督と一緒に仕事がしたいと熱烈アピール。
 オゾン監督の印象を「若くて、ナイスな感じ。それでいて、大人の女性のことを良く分かって描いていらっしゃいます」とコメント。もしオゾン監督の映画に出られるのなら、「人生をリタイアしていてちょっと記憶がなくなっているような女をいい男を支えている……そんな役をやりたい」と語った。
 監督は夏木の印象を「とてもエレガントで美しい。マリさんはフランス人男性と結婚できますね」と監督が話すと、「やっぱり~? これからはフランス人のように愛を優先に生きたい!」と夏木。監督は「返事の仕様がないですね……」と苦笑いしていた。

ファクトリー・ティータイム

女性を魅惑的に捉えて描く天才、フランソワ・オゾンの最新作『エンジェル』は究極の女の夢の世界をおしゃれに、皮肉をこめて見事に描いていた。若くして成功を収めたアーティストは自分の世界に閉じこもってしまいがちだが、それではいけないんだ、ということを自分への自戒を込めて作った作品だと語ったオゾン監督の今後の作品がますます楽しみになった。
(文・写真:Sachiko Fukuzumi)


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