2022-09-18 更新
松井玲奈、中島 歩、安川有果監督
島本理生の傑作恋愛小説の映画化『よだかの片想い』が公開中。9月17日(土)にはシネ・リーブル池袋で、主演の松井玲奈、共演の中島 歩、監督の安川有果を迎えた公開記念試写会が実施された。
映画上映後にステージに登壇した松井は、映画化を熱望していた本作がいよいよ公開となり「この作品を作るにあたって、たくさんの方が力を貸してくださいました。すごく時間が掛かって企画自体が止まってしまう、なくなってしまうかもしれない、ということもあったんですけど、その中でも映画の製作チームの方々が力を貸してくださって。撮影ができるところまでこぎつけてくださり、そこから撮影をして、劇場公開ができるところまでこぎつけてくださったことがすごくありがたかったので。わたしはその期待だったり、思いに応えたいという気持ちでした」と晴れやかな表情。
本日の登壇者3人はそれぞれ本作のエゴサーチをして、映画の感想に目を通しているという。「めちゃめちゃエゴサしています!」と笑顔で明かした松井も、「ちゃんとハッシュタグありの『よだかの片想い』も調べますし、ハッシュタグなしでも、引っかかるものが変わるので。両方ともちゃんと見ています」とキッパリ。「どれもすごくありがたいな、うれしいなと思っているので、みんなに“いいね”をしています」と明かし、会場を驚かせた。
島本理生ファンを公言する松井は、本作の原作にほれ込み、長らく映画化を熱望してきた。それゆえ、主人公アイコの役作りも、安川監督と意見をぶつけ合いながら作りあげたという。「もちろんわたしも原作は大好きなんですけど、なぜこのタイミングでこのセリフを言うんだろうと、分からなかった箇所があって。脚本の段階でさりげなくそのセリフをなくしていたんですけど、松井さんはパッと気づいて。『なんであのセリフがなくなったんですか?』ということはありました」と述懐。だが二人はそこからいろいろと話し合い、お互い納得の上で、そのセリフを戻すこととなったという。「結果的にそれがすごくすてきなシーンになったので。やはり原作を愛する松井さんのご意見を聞いて良かったなと思いました」という安川監督に対して、松井は「でもすごくうるさかったと思います。毎回オンラインでミーティングをしていたんですけど、毎回毎回最後の方に、何度も言っているんですけど、なんであのセリフがないんですかね?と言い続けて。今思い返すと、本当にうるさかったなと思います」と申し訳なさそうに振り返った。
現場での二人は何でも言い合えるような関係性で撮影を進めていたというが、一方の中島はその様子を「僕は撮影の2週間ほど前に入ったので。ふーんという感じでした。ちょうど休憩時間だったんで、休憩しながらふたりのやりとりを見ていました」と笑いながら振り返るも、「ただ現場は本当にみんなで作っている感じがあって。本読みの時も、のっけから3人とも、思っていることをビシバシぶつけあって。それがすごい風通しがよくて。いい環境だなと思いましたね」と心地よさを感じていたという。
また印象に残ったシーンについて「試写を観てショックだなと思ったのが、(中島演じる)飛坂さんが、アイコが作った唐揚げを雑に食べていたところ」と振り返った松井は、「もちろんそれがお芝居なのは分かっていたけど、知らない瞬間にそういう顔をするんだと思って。ビックリしたシーンでした」とコメント。それに対して中島が「あそこは安川さんが適当にほおばってとおっしゃったんです。僕は性根の優しい男なので、そういうアイデアは出ないと思うんです」と釈明すると会場は大笑い。
すかさず「大丈夫です、だから余計に意外だったんだと思うんです」と松井がフォローを入れるも、「クランクインの前から、ふと出る冷たさとか、適当さ、モテてきたオラオラ感みたいなものみたいなものが出るような演出があったら、監督に言ってねと話したんですよね。それでそういう演出が入ったんです。僕自身は心苦しいなと思いながらやっていて。心を鬼にしてやっていたので、許してください」と頭を下げる中島の姿に、会場は大いに沸いた。
そして最後のコメントを求められた中島は「昨日から始まって今日は2日目ですが、観ていただける方が多ければ多いほどロングランするので。もし気に入っていただければ薦めていただければ」と呼びかけると、続けて松井が「待ちに待った公開ということで、今日はこうして映画を受け取っていただけることができてうれしいなと感じています。皆さんの中で好きなシーンだったり、ここはどういうことだろうということがあればぜひSNSに感想として書いていただけたらうれしいなと思います」とメッセージ。
さらに安川監督が「この映画は顔にアザがある主人公の物語なんですが、それを特別視したというよりは、彼女の日常に寄り添うことを意識しました。何か難しく重いテーマを主人公に背負わせるのではなく、あくまで青春映画の要素があるのがいいんじゃないかと思い、脚本の城定秀夫さんと話し合って作った作品です。こういう作品にもちゃんとお客さんが入るといいなと思っています。感想を書いていただければ、松井さんからの“いいね”がもらえるかもしれないので、よろしくお願いします」と呼びかけた。
あざのあるアイコの顔左側を写したショットがはっとするほど美しく、この女性の「ひと」としての美しさを、観る者の目に焼き付けるかのようだった。もう、それだけで、彼女は確かにそこに「存在」していた。
ラストは、あざを隠すまい、あざがある自分を否定しまいと、かえって頑なに頑張ってしまっていた自分に気づき、そんな自分から解放できた瞬間なのでは。
わたしたちは誰しも多かれ少なかれ、何らかの「あざ」を抱えている。その「あざ」と時々で折り合いをつけながら生きている自分自身をそっと抱きしめたくなる美しい作品だ。
(Maori Matsuura)
(オフィシャル素材提供)
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