2022-07-23 更新
阿部 寛、内田英治監督
8月26日(金)より全国公開となる阿部 寛主演『異動辞令は音楽隊!』が、アメリカ・ニューヨークで開催中の20周年記念ニューヨーク・アジアン映画祭(NYAFF)にて、現地時間の22日(金)にワールドプレミア上映され、主演の阿部 寛と監督の内田英治が登壇。さらに本映画祭にて、阿部 寛がアジアで最も活躍する俳優に与えられる【スター・アジア賞】を受賞。過去にイ・ビョンホンやカン・ドンウォン、ドニー・イェンら名だたる名優が称された賞で日本人初の受賞となった。
「今年のニューヨーク・アジアン映画祭は、20周年記念な上に、コロナ後、観客を100%入れて初の開催となったものすごく特別な年なんです」と熱く語ってくれたのはこの映画祭のエグゼクティブ・プロデューサーにして財団の社長でもある、サミュエル・ジェイミア氏。今年『異動辞令は音楽隊!』のワールドプレミアが行われ、さらに主演の阿部 寛が日本人として初の【スター・アジア賞】を受賞した、NYアジア映画祭は、映画祭にとっても、観客にとっても、様々な意味で特別な年となった。
そのため、NYは日中30度を超える蒸し暑い日となったが、NY伝統の映画、オペラ、バレエ、クラッシックの中心地と言えるリンカーン・センターで開催中のこの映画祭で、阿部 寛も授賞式で駆けつけるとあり、『異動辞令は音楽隊!』のチケットはすでに売り切れていたのだけど、当日券を並んで待つ観客が早くからいたくらいだった。
★ レッドカーペット登場に映画ファン集うNYの会場は熱気の渦に
この日は金曜日でもあったためレッドカーペットには、その他の人気ある作品の監督や俳優が次々に登場したが、しかし阿部 寛が登場した際の熱気と盛り上がりがやはり最大だった。会場で日本映画が大好きだからと言ってボランティアをしていたアメリカ人の20代前半の若者も、「阿部さんはとにかく是枝監督の『歩いても歩いても』が素晴らしいばかりか、『海よりもまだ深く』も素晴らしく、でも『異動辞令は音楽隊!』ではまた新しい演技が発揮される気がするから観るのが待ちきれない。彼はすでにアジア映画のアイコンであり、レジェンドと言える人だから、この賞をもらって当然だと誰もが思っていると思う。自分もチャンスがあったら一緒に写真を撮ってもらいたい」と敬意を持って熱く語ってくれた。
もちろんこの映画祭などが20年間世界とアジア映画を結ぶ役割を果たしていた成果でもあるが、現在世界的に、日本映画、アジア映画が人気だし、高い評価を受けている。とりわけ、NYにおいては、リンカーン・センターという伝統的な場所柄、長年の日本映画ファンである年配の人々も多いのだが、昨今の傾向は、その中に、非常に若い、新たな日本映画ファンが増えていること。彼のように、オタク並みにものすごく詳しいファンが多い。この日の会場も同様だった。
阿部 寛が全身黒のシャープなスーツと靴に、襟に何気ない光沢とポケットチーフをアクセントにした姿で現れると事前にいたメディアのみならず、彼を待っていただろうファンがどっと押し寄せてレッドカーペット前は、ものすごい熱気となった。思わず歓声まで上がり、どこに立ってもカメラのスクリーンで前が見えなくなるほどだった。しかし、阿部と同様に全身黒でおしゃれなスタイルの上下を着て登場した内田英治監督も、終始にこやかな笑顔で対応。阿部は、手を振るファンに笑顔で手を振り返すなど、短いながらも、NYのファンにとっては非常に貴重な直接の交流を楽しんでいたように見えた、微笑ましいレッドカーペットだった。
★ スター・アジア賞受賞式に登壇! 満席の会場で喜びを英語でスピーチ
満席の会場で、映画祭のエグゼクティブ・プロデューサーである、サミュエル・ジャミア氏がまず挨拶し、この受賞式で何より感動したのは、阿部がなんとここでも笑顔で、そして心がこもったしかし堂々としたスピーチを英語でしたこと。会場からの拍手が何よりその驚きと感動を伝えていたと思う。
「私を阿部 寛さんと間違えないでください」と軽くジョークを言って会場を笑わせた後で、「今夜のこの特別な場に集まってくれて皆さんありがとうございます。日本映画というのは、私たちの映画祭において常に中心的な存在であり、長年数多くの日本映画を上映してきました。それはとにかく日本映画が素晴らしいからです。それは、これから上映する日本映画にも言えていることで、今回ワールドプレミアをするこの映画こそ私たちがここで長年日本映画を紹介してきた理由を象徴していると言えます。この映画は、多くの人たちを魅了する作品であり、笑える作品でありながらも、この作品にはさらに深さがあります。『ダーティハリー』を彷彿させる警察が主人公のコメディありながら、だけど彼は人生で中年になったことと向き合っています。それについて心当たりがいる人もいるかもしれませんね(笑)。つまりここには誰もが直面するような人生における困難や、世代間の違いなどとも向き合っているのです」とサミュエルが挨拶したのち、阿部に賞を授与するために韓国からわざわざやって来た『スクリーン・インターナショナル』のジーン・ノー(Jean Noh)が登場し阿部を紹介した。
「ニューヨーク・アジアン映画祭で、スター・アジア賞を授与するために韓国から来ました。この賞は、類稀なる才能を発揮し、しかも独自で本物の才能を持った人に授与するものです。また、批評家にも高く評価され、観客からも愛される俳優に贈られます。今年その賞は阿部 寛に贈られます。ここにいる人たちは、全員彼のことはすでに知っていると思います。是枝裕和の『歩いても 歩いても』から、『海よりもまだ深く』ばかりか、英語の作品では『夕霧花園』など、また、私個人の一番好きな作品でもある『テルマエ・ロマエ』もあります。この賞は、彼の多才さ、国境を越える魅力と国際性、それから彼がこの30年にも及ぶキャリアにおいて、出演して来た作品のジャンルの幅広さも、評価されて贈られます。しかも、彼は今回主演した内田英治監督の主演作『異動辞令は音楽隊!』をこの映画祭でワールドプレミアしてくれます。この作品をパンデミックの最中に1ヵ月半で何も問題なく撮影したと聴いて感動しています。おめでとうございます。それではお待たせしました。阿部 寛さんに登場していただきます」。
大きな拍手で迎えられた阿部は、英語でゆっくりと喜びを噛みしめ、その言葉を観客にしっかりと伝えるように堂々とスピーチした。
「どうもありがとうございます。この素晴らしい賞をいただけて本当に嬉しく思っています。また、今世界が大変な時期に、こうしてニューヨークに来られて最高です。今日ここ、ニューヨークアジア映画祭に来てくださった皆さんの顔が見られて、今ものすごく幸せに思っています。それから、この映画祭に尽力くださったスタッフの皆さんにもお礼申し上げます。また、私のこれまでの作品に手掛けてくださった、全ての監督、俳優の皆さん、スタッフの皆さんにもここで改めてお礼を言わせてください。本当にどうもありがとうございます」。ここで笑顔となり、会場が割れんばかりの長い拍手となった。
また、内田監督も紹介され、続けて拍手が送られた。内田監督は「今回は、ニューヨークに招いていただいてありがとうございます。僕は、30年くらい前にニューヨークの五番街にあった“ナニワ”という日本食レストランで、皿洗いのバイトをしていました(笑)。なので本当に懐かしい街なんです。今回、阿部さんが主演で映画を撮らせていただきました。皆さんご存知のように阿部さんは本当に特別な俳優なので、現場で撮影しながら主人公は阿部さんしかいないなあと気持ちで撮影していました。NY市警にも有名な音楽隊があるので、僕の夢は、阿部さんが、NY市警の音楽隊と対決する『パート2』を考えています。皆さんぜひこれからこの映画をお楽しみください」と上映前の観客を笑わせながら、スピーチした。
★ 上映後のQ&A
そして映画の上映が終わると大拍手となり、再び阿部 寛と内田監督が大歓声の中迎えられた。モデレーターの質問の後、観客も質問をした。あまりに多くの人たちが質問したため、残念ながら全員分を回答できないくらいだった。非常に和やかなムードのなか行われた。
阿部 寛: ドラムは今まで全く叩いたことがなくて、楽器自体を触ったこともなかったのです。それで最初はこの台本をいただいた時、ちょっと断りたいなあと思ったんですけど(笑)、監督も実際ドラムなどをやったことがなくて、監督と一緒に挑戦していくという、一緒に作っていくという。ぜひ一緒に仕事したかったので、それで引き受けました。
内田英治監督: 小説は映画とほぼ同時に、先月発売されました。脚本自体は5年以上前から書いているものがあって、オリジナルの脚本というのは日本ではなかなか作りづらいというのがあって、またドラムを叩ける俳優さんも少ないですし、なかなか進まずに5~6年かかって、そして去年阿部さんと撮影できたんですけど。やっぱりこういったタイプの役は難しいので、なかなか役者がいなかったんですけど、その中で阿部さんが目の前に現れてくれて、作品が無事完成しました。多分ドラムの練習に関しては想像以上のすごく苦労したんじゃないかなと思います。
阿部 寛: 僕は『ミッドナイトスワン』という監督の作品を観て、監督がすごく評価されていて、その時にちょうどこの作品の話をいただいたんですね。だから、非常に監督にとってもすごく挑戦する作品だと思ったんです。そういう作品で僕を選んでくれたことを非常に光栄に思ったし、自分で脚本を書かれている作品に出るということで僕が選ばれたというのも非常に光栄だったし、そんな監督と一緒にぜひやってみたいなあと思って、嬉しかったです。
内田英治監督: 僕は、長くインディーズ映画をやっていまして、いつも1000万円位の映画をずっと作っていたので、阿部さんはやっぱり本当に大活躍している役者さんで、僕の中では、テレビや映画館で見る存在で、この脚本でオファーをさせていただいて、やってくれるらしいよ、みたいな(笑)、話をいただいて。最初はそう言っているけど、最終的にはやらないでしょ、みたいな(笑)、疑っていたんですけど、最終的には目の前に現れて、ちょっとびっくりしました。
内田英治監督: 田舎で撮影したことがあって、阿部さんがカブトムシとかクワガタ好きみたいで、休憩室で『これ採ったよ』ってポケットから出して来たんです。クワガタも。今の日本でクワガタは珍しいので、わ、すごい、と言ったら、『これも』って言ってまた左のポケットからまた出て来たんです。ポケットの中にクワガタとかカブト虫を採ってまして。何匹も入っていたんです。その時は可愛い阿部さんを(笑)、スタッフみんなが驚きを持って見ていました。昆虫が好きだというのを初めて知りました。
阿部 寛: あれは、夏の撮影だったので、照明に飛んできたんです。それを捕まえたのを誰にも気づかないようにしていたんですよ。でも照明さんが気づいて、その人たちが僕にみんなくれたんです。それを家に持ち帰ったら30匹くらいに増えちゃいました。
阿部 寛: いや、似てないと思いますよ(笑)。でも彼も50を過ぎて、新しい世界に挑戦していくという意味では共感しました。自分もだいぶ俳優をやっていますけれども、自分のステージを考え、いろいろな世界に挑戦してみたいなんて気持ちもあるので、あれだけ堅い人間が柔軟になれたというのは、すごく共感しましたね。
内田英治監督: もともとのすごく昔の脚本では、もっとラブ・ストーリーの部分が強かったんですね。居酒屋のシーンは、その頃からあるシーンで、だんだん対立するという脚本に変わっていった時に、ああいう形になりました。居酒屋はその関係性を強調するために使いました。ニューヨークにも居酒屋はたくさんありますけど(笑)。
阿部 寛: 2ヵ月くらいですけれども、最初はスティックの叩き方から全く分からなくて、もういつになったらできるんだろうって。初めて自分が役作りで半分諦めかけたんですけど、1ヵ月半くらい過ぎてから、みんなと一緒に合同で練習して、とりあえず最後までやってみようと言って、“宝島”という曲を、最後まで無理やりやったんですね。その時にやっぱりそれぞれ下手だけど、一緒に助け合いながら、やれたんですよね。そこからなんかつかみ出して、そこからのびが早く、学びが早くなりました。
内田英治監督: 吹替え無いんですよ。
内田英治監督: そうですね。僕の撮影している頃からプロデューサーにずっと言っているんですけど、このパート2は、ニューヨーク市警の音楽隊もとても有名でよく日本にも来るので、成瀬がニューヨーク市警の音楽隊で成瀬さんが対決をするという――(笑)。
阿部 寛: それ無理じゃないですか? 相当ハードル高いですよ(笑)。
内田英治監督: どこに行ってもその話をしています。
阿部 寛: でも、まあやれと言われればやります。
内田英治監督: NYPDに知り合いがいる人はぜひ言っておいてください。
阿部 寛: なんでもやります。古代ローマ人も挑戦したし(笑)。なんでもやります。
阿部 寛: 次の作品は……、今回の役は強い男の役でしたが、次は本当に何気ない、オタク的な人間の役を今やることになっています。それは、もしかしたら海外の人も観ることができる作品になるかもしれません。
阿部 寛: ありがとうございました。
涙と笑いの人生大転換エンターテインメント『異動辞令は音楽隊!』は8月26日(金)公開!
(オフィシャル素材提供)
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