2022-02-23 更新
第77回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門オープニング作品として選出され、さらにケイト・ブランシェットが作品に惚れ込み、完成後にもかかわらずエグゼクティブ・プロデューサーに名乗りを上げたクリストス・ニク監督のデビュー作『林檎とポラロイド』が3月11日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開となる。公開に先立ち、ひと足先に本作を鑑賞した各界著名人からコメントが寄せられた。
記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界――。
それでも男は毎日リンゴを食べる。
「お名前は?」「覚えていません」————。バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。治療のための回復プログラム「新しい自分」に男は参加することに。毎日リンゴを食べ、送られてくるカセットテープに吹き込まれた様々なミッションをこなしていく。自転車に乗る、ホラー映画を見る……――—新たな経験をポラロイドに記録する。ある日、男は、同じプログラムに参加する女と出会う。言葉を交わし、デートを重ね、仲良くなっていく。「新しい日常」に慣れてきた頃、男は以前住んでいた番地をふと口にする……。新しい思い出を作るためのミッションが、男の過去を徐々に紐解いていく。
奇抜なアイデアと人間への優しい眼差しに満ちた本作へ、「静なる大エンターテイメント」「何度も見返したい」「決して忘れることのできない映画の記憶」と、俳優・映画監督・アーティスト・写真家・歌人・科学者……各界から続々コメントが到着!
クリストス・ニク監督、鮮烈なるデビュー!
細部に散りばめられた哀愁とユーモアにやみつきに。
初めてかじった林檎のような、鮮烈な才能のほとばしり! 揺れる記憶を手がかりに「もう一人の自分」に出会う人生のロードムービー。現代アートのように魂を惹きつけ、心の故郷まで連れていってくれる。
茂木健一郎(脳科学者)
与えられた物語は、誰からの贈り物? 体の奥底の葛藤と向き合うために、滑稽さを携えて物語を超え生き抜こう!! 観るたびにこの映画は姿を変えるので、みんなであれこれ話したいな。
佐野史郎(俳優)
例えば猫がかわいい、自転車に乗った時の疾走感、忘れていったら? 記憶力の低下、固有名詞が出てこない、この映画が誰にでも起こり得る記憶について寓話的に描いて観る人の心に静かに問いかける。記憶を失ってからの人間らしさ、幸せ、孤独との向き合い方。随分こういう感触の映画に触れてこなかった。久しぶりに味わいました。いい映画。
岡村靖幸(音楽家)
ヌーヴェルバーグの映画を観て、映画におけるインテリジェンスを知った学生時代の原風景がフラッシュバックしました。久しぶりに「鑑賞力」を試される映画。何度も何度も見返したい。
シトウレイ(ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト)
一体、自分は何を観ているんだろう?”と思い始めた矢先、ぼんやりと流れていた時間がクッキリと輪郭を持ち始めた。主人公のとある“決意”を知ったうえで、もう一度ファースト・シーンから観たくなる。
山下敦弘(映画監督)
フレームサイズ、花束、新しい自分、丈の合わないジーパン、歩き、美味しいスープ、そして林檎……脚本、演出、映像シーン全てにその意味と拘りを感じます。セリフに頼らない作品作りがサイコーです! 観終わって直ぐ主人公に感情移入したくなって、もう一度観ちゃいました。
が~まるちょば〈HIRO-PON〉(マイム・アーティスト)
日常のさりげないことが不確かな「私」に輪郭を与えていることを知った。この映画を観ると「発見」の意味が変わる。りんごの皮を剥く感触や甘酸っぱさほど確かなものはないと思うようになった。
鈴木康広(現代アーティスト《りんごのけん玉》)
消えていく記憶には消えていく理由がある。忘れてはならない記憶は絶対に消えない。見つめていくのだ、消えていくその日まで。この映画は消せない記憶となりうる静なる大エンターテイメントだ。
筧 利夫(俳優)
なんて悲しい話だ、と車の中で言うシーンがある。悲劇的な思い出と生きることは不幸だろうか、という問いかけのように受けとめた。彼らに短歌を捧げたい。《ポラロイド一枚一枚撮るたびにあなたをおぼえていく林檎たち》
枡野浩一(歌人)
ブルーグレーを基調とした画面の中に一人の男がいる。それだけの、そして巧妙な物語。観る者に添ってシリアスにもコメディにもなるだろう。忘れたい現実に直面した時、日常茶飯事が最強のミッションになってくれる。
佐野未央子(佐野未央子)
生きていると、忘れたい記憶・消したい過去がゴマンとある。この映画は、計算されたシンプルで無駄のない構図の美しさに惚れ惚れすると同時に、必要最低限のものしか置かれない寂しさや冷たさが常にある。 ふと思う。もしかしたら、無駄で邪魔に思えるようなことの積み重ねが、人生の彩りを生むのかもしれない。
佐野史郎(俳優)
与えられた物語は、誰からの贈り物? 体の奥底の葛藤と向き合うために、滑稽さを携えて物語を超え生き抜こう!! 観るたびにこの映画は姿を変えるので、みんなであれこれ話したいな。
枝 優花(映画監督/写真家)
なんとも考えさせられる。記憶喪失を発症させる奇病が蔓延する孤独社会。ところがパンデミックSFの記憶は辿らない。これは人生のリセットなのか? 喪失は再生なのか? 記録は記憶なのか? 記憶は人生なのか? 本作はそう問いかけ、SNS時代を滑稽に嚙りながら、芯を深く遺す。決して忘れることの出来ない映画の記憶が産まれた。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
静謐なトーンで淡々と描かれる喪失と再生の物語。記憶を失った男がシュールな記憶再生プログラムを通して得たものとは……。胸の奥に隠していた哀しみ(のようなもの)をそっと癒やしてくれる美しい映画です。
川上健太(CDジャーナル編集長)
ポラロイドを撮るという行為によって、過去を失った主人公の現在ですらも過去であることを突きつけられる。ユーモアに溢れた物語と、静かで美しい映像の調和が素敵でした。
嶌村吉祥丸(アーティスト/フォトグラファー)
光の捉え方が繊細で印象的な色の記憶が残った。「人はすぐ忘れる」という言葉が強く印象に残っている。写真を撮ろうが撮るまいが人はいつか忘れてしまうと思う。その時写真が残るか残らないかだけの違いだと思った。身体的なことは全て体が記憶している。
東海林広太(写真家)
記憶とはなんと曖昧なものなのだろう。写真などなかったなら、過去の記憶というものは本当に自分が体験したことだと自らに証明することはできるのか。いや、きっと不可能なことだ。だからこそひたすらに今を生きるのだ。
蓮井元彦(写真家)
窓を開ける、林檎を剥く。繰り返されるシーンのなか、いつも感じる怖さと面白さが何度も頭の中をよぎる。繰り返すことは、人の記憶を変化させていく。写真に写る私は、私なのだろうか。写真に写る私は、あなたにとって私なのだろうか。
前田エマ(モデル)
(オフィシャル素材提供)
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