2022-05-20 更新
村上リコ、森 直人
第74回カンヌ国際映画祭をはじめ、世界中の映画祭に出品され高評価を獲得し、第88回アカデミー賞®6部門にノミネートされた『キャロル』のプロデューサーが贈る最新作『帰らない日曜日』が2022年5月27日(金)に日本公開となる。この度、公開を記念し、トークショー付き試写会が開催された。英国文化とメイドに詳しいライター・翻訳家の村上リコと映画評論家・森 直人が、舞台となったイギリスの時代背景や作品について徹底解説し、大盛り上がりのイベントとなった。
村上リコ氏は19世紀から20世紀初頭にかけてのイギリスの日常生活、特に執事やメイドなど家事使用人に詳しいライター・翻訳家。著書に「図説 英国メイドの日常」(11)、「図説 英国貴族の令嬢」(14)などがあり、19世紀英国のメイドや執事を描いた大人気TVアニメ「英國戀物語エマ」や「黒執事」の考証も務めている。
上映後、満席の会場から大きな拍手で迎えられた村上リコと森 直人。アカデミー賞®6部門にノミネートされた『キャロル』などを手掛けたイギリスの敏腕プロデューサーが手がけ、カンヌ映画祭などで絶賛された本作。この映画の魅力について、村上は「原作よりさらに女性の視点が大事にされている。時代の移り変わりが繊細に描かれている点がよかった」と語り、森は「『バハールの涙』のフランス人女性監督、エヴァ・ユッソンがイギリス映画を制作したということで、意外だったのですが、社会的にも奥行がある作品でした」と続けた。
本作の舞台は、第一次世界大戦後の1924年のイギリス。村上は当時のイギリスについて、「イギリス労働党が政権を取った時代。上流貴族が牛耳っていた過渡期ということで、ここに焦点を当てています」と解説。森は、ポールが抱える絶望感が本作のポイントになっていると語り、上流階級に属しているポールも弁護士を目指していたことから、貴族も戦後困窮している姿が描かれ、時代背景と戦争が残した爪痕が明らかとなった。
また、人気ドラマ「ダウントン・アビー」と時代背景が重なるなど共通点も話題に。
当時のイギリスでは、ジェーンとポールのように、階級違いで愛人関係になった人もたくさんいたのではと村上は予想する。森は「裸のシーンも多いですが、裸と着衣が対比的に描かれている。衣服というのは社会的象徴ですものね。本作では身分の違う二人が裸の時だけ対等になっているという見方もできる」とコメントし、とくにジェーンが無人の邸で裸でパイを食べ、げっぷをするシーンがお気に入りだと言う。ここから原作との違いについて話が及ぶと、森は「1948年、書店員になったジェーンが、ドナルドと出会うシーンがありますが、原作ではドナルドは白人男性でポールに似ているという設定でした」と、映画ではドナルドが黒人男性で描かれている点に触れると、村上は「このシーンもとくに違和感なく観ましたが、監督の意思を感じられたシーンです」と印象を明かした。加えて、イギリスの女性作家、ヴァージニア・ウルフについて語られるのもメイドから小説家になるジェーンにとって深い意味を持つシーンとなっている。
オデッサ・ヤングとジョシュ・オコナ―の瑞々しい演技、そして、脇を固めるアカデミー賞®受賞俳優のコリン・ファースとオリヴィア・コールマンの重厚感ある演技が見どころのひとつ。キャストの魅力について、森は「コリン・ファースが演じるニヴン氏ら、親側の視点もよく描かれている」と語り、村上も「オリヴィア・コールマンの演技も息子を亡くした母親の感情を表していて、物語に奥行きが足されていた」と豪華俳優陣の演技を絶賛した。
アカデミー賞®受賞スタッフの一人であるサンディ・パウエルが手掛ける煌びやかな衣装も魅力の一つだが、村上がとくに感銘を受けたシーンがあると言う。「当時のメイドの制服が堪能できるのは魅力的。映画の衣装は実際のものよりカラフルかもしれないけど、駅で大勢のメイドが色とりどりの衣装を着ているシーンは原作にはなく、ぐっときました」とお気に入りのシーンを明かした。
最後に森は「いろいろ掘っていくと時間がなくなりますが、今日は楽しかったです。ありがとうございました」と締め、貴重なエピソードが満載で観客も大満足のイベントは大盛り上がりで幕を閉じた。
(オフィシャル素材提供)
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