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『明日に向かって笑え!』
オフィシャル・インタビュー

2021-08-02 更新

セバスティアン・ボレンステイン監督


明日に向かって笑え!asuniwarae
©2019 CAPITAL INTELECTUAL S.A./KENYA FILMS/MOD Pictures S.L.
配給:ギャガ

 第82回アカデミー賞®外国語映画賞を受賞したスペイン=アルゼンチン映画『瞳の奥の秘密』(09)の脚本家エドゥアルド・サチェリ×主演リカルド・ダリンの名タッグで贈るヒューマン・ドラマ『明日に向かって笑え!』。2001年のアルゼンチン金融危機<債務不履行(デフォルト)>を背景に、現実の鬱憤を晴らす痛快な物語が観客の心をつかみ、2019年アルゼンチン映画国内動員№1という大ヒットを記録! この度、セバスティアン・ボレンステイン監督のインタビューが到着した。

セバスティアン・ボレンステイン(監督・脚本)

 1963年4月22日、アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれ。
 数々の賞に輝いた経歴を持つ脚本家兼監督。2011年、“Un Cuento Chino”でゴヤ賞最優秀スペイン語外国映画賞を受賞。
 その他、ライオンズゲートとグルポ・テレビサ製作“Sin Memoria”(08)の監督・脚本(共同執筆)、“La Suerte Está Echada”(05)の監督・脚本も務めた。
 長編映画監督前にはアルゼンチンのテレビ界を代表するプロデューサー、監督、脚本家として活躍していた。

本作を制作することになった経緯を教えてください。

 本作のプロデューサーでもあるリカルド・ダリンとは、これまで長い間仕事をしてきました。友人でもあり、彼が権利を獲得したこの作品を一緒にやろうということになりました。そして、エドゥアルド・サチェリ氏の原作を読んで、登場人物たちに感銘を受けて、監督の仕事を受けることにしました。


リカルド・ダリンやチノ・ダリンとの映画作り、また原作者でもあるエドゥアルド・サチェリとの脚本づくりはいかがでしたか?

 作品を作るきっかけになった、リカルドそして(彼の息子の)チノと仕事をするのは楽しみでした。それにリカルドとはこれまでいろいろな作品を一緒にやってきて、人生を共にしてきた時間も多いので、彼の考えはとても理解できます。そして二人のことをよく知っていることもあり良いチームで作品を作ることができましたし、楽しかったです。
 エドゥアルド・サチェリ氏と脚本を執筆するのは、原作者はいわゆる生みの父親であるということもありますから、正直、予想以上に大変難しかったです(笑)。


主人公フェルミンの妻リディア役を演じたベロニカ・ジナスさん、アルゼンチン・アカデミー賞最優秀助演女優賞も受賞し、とても印象的な演技でした。

 本当に素晴らしい女優さんで、個人的にも良く知っているのですが、この役は彼女しかいないと思い、キャスティングしました。身を捧げて演じる彼女のお陰で、リディアという役がより良いものとなり、彼女の存在自体がこの作品にとって重要なものとなりました。本当に彼女の演技は素晴らしいものでした。彼女が現場にいるだけで、撮影は明るいものになり、かけがえのない存在となりました。


本作の原作は“La Noche de la Usina”(発電所の夜)ですが、映画のタイトル(原題)を”La Odisea de los Giles”(まぬけたちの一連の長い冒険)というタイトルにした意味を教えていただけますか?

 原題の“Giles”というのは勤勉実直で、まっすぐな一般の人たちのことを表わします。それは、この映画の特徴を表わしていると思います。そんな真面目に日々コツコツと生きている人たちに困難が降りかかり、波乱万丈の物語(オデッセイア)が展開するということを表現しかったのです。時代の生贄(スケープゴート)となってしまった人たちがどのようにその困難を乗り越えていくのかをドラマにしたかったんですね。アルゼンチン人にとって、“Giles”(日本語訳:まぬけものたち/バカ正直者)という言葉は、愛情をもって表現する人物像なのです。だから彼らが、「エリート」(エスタブリッシュメント)と闘う物語を描きたかったのです。


本作は2001年のアルゼンチン危機〈債務不履行(デフォルト)〉を背景にしていますが、実際当時はどんな状況だったのでしょうか?

 あの頃のアルゼンチンは全てが止まり、全てが終わり、世界の終わりでした。初めての経験で、死に等しいと感じるぐらいの困難が続いて、本当に苦しい時でした。人々はユーモアも忘れ、それまでの場所がなくなり、人によっては国を去っていかなければならないくらいでした。未来を感じることができずに、暗闇の中にいるような感じでした。だからこそ、そこから抜け出せるきっかけを探していたのかもしれません。


アルゼンチンでの大ヒット(2019年アルゼンチン映画動員No.1)は予想されていましたか?

 正直とても驚きました。この困難な時代の中で、アルゼンチンで200万人以上の観客が映画館に来てくれたことにとても感謝しています。公開したタイミングが2019年なのですが、2001年から時を経て、アルゼンチンの人々が受け入れられる時期だったのかもしれません。


コロナ禍の日本では外出自粛やソーシャルディスタンスなどで人との接し方が希薄になってしまったところもあり、本作で描かれる家族や友人同士の親密さ、助け合う姿を見て、改めてその大切さを感じる部分もありました。世界的なパンデミックで不安定な時期ではありますが、監督は本作からどのようなことを感じ取って欲しいですか。

 まず映画製作のチーム全体が、世界的に難しいこの時期に日本をはじめ他の国で公開されることをとても嬉しく思っています。この作品を観て、映画館を出る時に少しでも希望をもっていただければとても嬉しいです。そしてアルゼンチンの文化が、日本の観客の皆さんにどのように受け止められるかは分からないですが、少しでも「クスっ」と笑ってくれて、少しでも楽しい時間を映画館で過ごしてくれることを願っています。



(オフィシャル素材提供)




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