2022-01-08 更新
杉田協士監督、荒木知佳(主演・沙知役)・東 直子(作家・歌人/原作短歌)
前作『ひかりの歌』が口コミなどの評判により全国各地での公開へとつながった杉田協士監督待望の長編第3作『春原さんのうた』。作家・歌人の東直子による第一歌集『春原さんのリコーダー』(ちくま文庫)の表題歌「転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー」をもとに、ある喪失感を抱えた女性が、日々のささやかな暮らしを続ける姿をただ見つめていく物語。
31音の短歌から生まれた本作は、第32回マルセイユ国際映画祭(フランス)にて日本映画初となるグランプリとともに観客賞、俳優賞(荒木知佳)の3冠、マンハイム=ハイデルベルク国際映画祭(ドイツ)にてライナー・ヴェルナー・ファスビンダー賞スペシャルメンションを受賞。そのほか、サン・セバスティアン国際映画祭(スペイン)、ニューヨーク映画祭(アメリカ)、釜山国際映画祭(韓国)、サンパウロ国際映画祭(ブラジル)、ウィーン国際映画祭(オーストリア)、ベルフォール国際映画祭(フランス)など世界各国での旅を続け、11月の東京フィルメックスでのジャパンプレミアを経て、日本での劇場公開を迎えた。
この度、1月8日(土)にポレポレ東中野にて初日舞台挨拶が行われ、杉田協士監督、主演の荒木知佳、原作短歌の東 直子が登壇した。
満員の客席を眺めながら、杉田監督は「(国際映画祭への選出で)ありがたいことに作品に注目していただいて、受賞後の第1作をすぐに作らなきゃいけない空気を皆さんから感じるんです。本当はゆっくりしていたいんですけれど」と挨拶。監督と世界各地を回った荒木も「2019年9月3日に『春原さんのうた』の撮影がスタートし、無事に完成して、去年は杉田さんと一緒に海外をたくさん回らせていただいた。今日、こうして初日を満席の中で迎えられることが嬉しい」と笑顔を浮かべた。
するとここで、マルセイユ国際映画祭で荒木に贈られた俳優賞の賞状を掲げた杉田監督。「この賞状、実は今日までわたしの家にあったんです(笑)。荒木さんに渡そう渡そうと思っていて、なかなか会えずにいましたが、やっと渡せます」と賞状を渡し、会場からは拍手が送られた。
作家・歌人の東は「1996年に作った短歌が、まさかこんなに素敵な2時間の映画になるなんて夢にも思っていませんでした。作ってからこんなに長い年月を経て映画になり、しかも世界にまで渡って……なんて長い旅をしているんだろうと、今でも夢を見ているようです」と感慨深げ。杉田監督は「東直子さんの短歌をお預かりして映画を作るとなった時、選んだのは1首でしたが、東直子さんの短歌以外の本も読んだり、原作が生まれた90年代後半にお住まいだった街を一緒に散歩したりしながら、自分の中に落とし込んで行きました」と述懐した。
最後にメッセージを求められた杉田監督は「撮影に入る前、『短歌を映画にするなら35分から45分ぐらいでしょうか』と自信を持って言っていたんですが、2時間の映画になってしまいました。でも長くなってしまったのは、それだけ東直子さんの短歌に“広がり”があるからこそだと思っています」と締めくくった。
(オフィシャル素材提供)
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