2021-07-17 更新
阪元裕吾監督
社会不適合者な“元女子高生”殺し屋コンビが社会に馴染もうと頑張る異色の青春映画『ベイビーわるきゅーれ』。この度、阪元裕吾監督のオフィシャル・インタビューが到着した。
阪元裕吾監督
2016年、20歳で発表した『ベー。』で「残酷学生映画祭2016」のグランプリを受賞した際に、白石晃士監督(『不能犯』)に「才能に嫉妬する」と言わしめ、サイコ殺人鬼と凶暴兄弟の対決を描いたウルトラ暴力映画『ハングマンズ・ノット』では「カナザワ映画祭2017」で期待の新人監督賞と出演俳優賞のダブル受賞、続く『パン屋を舞台にしたブラック・コメディぱん。』では「MOOSICLAB」で短編部門グランプリ、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で短編コンペティション部門グランプリを受賞、さらに海外映画祭初参加で挑んだ「プチョン国際ファンタスティック映画祭」では審査員特別賞受賞を果たすなど、大学在学中に圧倒的な暴力描写で自主映画界を席巻。
2018年より開催された「夏のホラー秘宝まつり」では、その才能が注目され早くも特集上映が組まれた。
商業デビュー作となった『ファミリー☆ウォーズ』は実際に起こった事件からインスパイアされ、不謹慎だとSNSで大論争を巻き起こしたが、上映の際にはホラー映画やバイオレンス映画のファンが劇場に駆けつけ、残虐さと滑稽さ、血と笑いの絶妙さを絶賛。
現在最新作『ある用務員』(主演:福士誠治)が公開中、『黄龍の村』(主演:水石亜飛夢)が2021年夏に公開予定と、若い世代では最も多くの作品を世に送り出している注目の存在である。
お二人(主演を務める髙石あかりと伊澤彩織)のキャスティングやキャラ造形、戦う風景は元から出来上がっていたんですけれど、普段どうしているかはなかったので、そこからまず詰めていきました。家のシーンで、殺し屋なのに朝起きるのが苦手だったり、殺し屋なのにガス料金を払うのを忘れて止められている、みたいな「殺し屋なのにギャップ」みたいなものを中心に考えていって、どんどん話を膨らませていきました。唯一無二なものにするのは、キャラクターの生活なのかなと思いました。
だいぶ前に伊澤さんが刀を振り回すPVか何かを見て、こんな人おるんやと思って、メールで話しかけました。その時、「スタントでやっていくんですか?」と聞いたら、「ちょっと迷っています」みたいにおっしゃられていました。『ある用務員』で、「まだ女優業をやる気持ちがあり、興味があれば、ぜひ役付きで出てください」と言って出ていただき、今回は主演を……となった時も、「この作品が(役付きでは)最後になってもいい位お互い出し切ってみませんか?」という言い方をしてオファーさせていただきました。
高石さんは、『ある用務員』でちょこっと出ていただいた時に、だいぶ間よくやっていただいて、本作はその映画から派生して生まれています。自分的に二人組やカップルの「この二人だったらこの距離までいくよね」という距離感は、基本役者同士でやって欲しいというのがあるのですが、前作では二人で丁寧に関係を作っていただけたので、この二人だったら全編通して任せられるなという感じがありました。
「女子ならでは」、みたいなことはむしろ自分は考えないようにしました。男性目線で分かったような口ぶりで「こういう女の人いるよな~」「女の人だったらこうするよな~」と描くのってある意味結構危険なことでもあると思っていたので、異性として、女性として、というより、ひとりの人間として描こうと決めていました。演じる人が女の人である以上、自分が「女の人なら」とかを考える必要はないかなと。例えば美術の人が思いついてくれて採用したアイデアで、「まひろは猫好き」というものがあります。だから美術の端々にネコがいるんですが、それにも別に「女の子らしさ」という演出が乗っかっているわけではありません。ただただ、猫が好きなまひろ、なのです。
ありがたいことにキャスティングが完全に決まっている状況で脚本を書けたので、あて書きが出来ました。『ある用務員』の現場では、髙石さんは熱量と冷静の狭間にいるような方で、いろいろな顔を持っているんだなという印象を抱きました。伊澤さんは初めての役付きの演技シーンだったらしく、アップのシーンを一つ撮るたびに不安そうに「大丈夫ですかね……」というような感じで、その2人の様子がまた面白かったので、ちさととまひろのキャラクター造形に入れた感じですね。アドリブはたくさん入れてほしい、とは顔合わせのときに言ったのですが、アドリブと脚本の間がバレないような脚本にしようとは思っていました。例えば最初のコンビニのシーンで2人が店長の「ああいう人って○○しそう」って悪口を言うシーンは、途中からアドリブでしたね。「どこまで脚本で、どこからがアドリブか分からない」と言っていただくことがあり、狙い通りになった!と嬉しかったです。
脚本を書くとなった時に一番最初に入れようと思ったのが、ヤクザがメイド喫茶で「にゃんにゃん」やっていたら、突然何かでブチ切れて、ガシャーンとやるシーンです。それが逆算されていって、「女性差別だぞ」と言うようなキャラになりました。元プロレスラーの前田日明さんとRIZINで活躍されている朝倉海選手が二人でメイド喫茶に行くYouTube動画が元ネタです。「怖い前田日明さんがメイドにブチ切れて、メイド喫茶がすごい空気になったらおもろいやろうな」と思いました。
あとは、“ヤクザギャップ”で、ヤクザが居酒屋でキレるシーンだとか、キャバクラで喧嘩するシーンはよう見るんですけど、メイド喫茶や和菓子屋でキレるシーンって見たことないなと。ちさととまひろもそうなんですが、見たことがないものを2つ掛け合わせる作業を中心に組み立てていきました。
もともと、傍のキャラクターはパッと見てごくごく普通の人を中心に固めたいなと思っていました。そして最初のコンビニの面接のシーンは、その後の荒唐無稽な展開を乗せるためにめちゃくちゃリアルにしたかったんです。そうなったときに大水さんの名前が挙がり、純粋に中学生の頃から好きなお笑い芸人さんだったので、こんなに嬉しいことはないとキャスティングさせていただきました。撮影時間が2人とも2~3時間もなく、あまり話せなかったんですが、もしまた続編とかがあるなら出演していただけたらとても嬉しいですね。
注目してもらいたいのはやはりラストの伊澤彩織VS三元雅芸のタイマンです。(アクション・シーンは)自分が組み立てたわけではないのですが、かなりすごいアクションになっているので、ぜひ映画館で体験していただきたいですね。ここだけで言えばどのアクション映画にも負けていないなと思っています。あとは2人のやりとりや、のんびりとした日常風景は、アクションとのギャップとして「殺しと暮らし」をテーマに作っているので、そこを注目していただけたら嬉しいです。
日本映画ではなかなか見たことない殺し屋映画になっております。2人のやりとりにクスッと笑えて、殺しのシーンではドン引きして、アクション・シーンでは血がたぎる。新しいエンターテイメント映画が完成しました。さわやかに人を殺しまくる2人を見ていたら、きっとあなたも殺し屋になりたくなるはず! ぜひ劇場で!
(オフィシャル素材提供)
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