2022-01-30 更新
ウウェス・アンダーソン監督、野村訓市 ※ビデオ参加
『グランド・ブダペスト・ホテル』でアカデミー賞®4部門受賞したことでも知られるウェス・アンダーソン監督待望の最新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』が、1月28日(金)より全国公開中。この度、本作の公開前日の1月27日(木)に前夜祭ファンイベントを開催した。
ウェス・アンダーソン本人がライブ配信でイベントに登場するということもあって、会場には熱狂的なウェスファンが大集結。まさに最新作を鑑賞した上映後のイベントということで会場の興奮も冷めやらぬ中、まずは、前夜祭を共に迎えるにふさわしいスペシャルゲストとして、ウェスと長年にわたる親交があり、日本を舞台とした前作『犬ヶ島』では、原案、キャスティング、声の出演も担当した野村訓市がスクリーンに登場。ウェス・ファンにとってもお馴染みの人物ということもあって大きな拍手で迎えられた。
約4年前にウェスが『犬ヶ島』で来日した際もプロモーションを共にしていた野村。MCに当時のエピソードを聞かれると「彼は2、3週間ほど日本にいて、ほとんど毎日一緒に過ごしていたんですが、ホテルに迎えに行ったときにバスローブでタイピングをしていて。何をしているのか聞くと、“次のアイデア(『フレンチ・ディスパッチ』)だ”と言っていて、もう働いているの?と会話をした記憶があります。その後、最初のシーンを撮っているときに私もちょうどパリにいて、一緒に食事に行ったときにオーウェン(・ウィルソン)が“僕のシーンはもう撮り終わった”と。どんな映画なの?って聞いたら、“分からない。ウェスの映画というのはウェスが全部を知ってて、僕らはパズルのコマで、撮り終わった後に自分たちがパズルの素材として、どのようにして大きい絵にハマるのか、それが楽しみなんだよ”と言っていたんです」と貴重なエピソードを明かしながら、『犬ヶ島』来日から最新作の撮影までを振り返り、そして実際に完成した本編の完成について問われると、「ザ・ニューヨーカーをモチーフにしていると聞いたのですが、彼がザ・ニューヨーカーが好きで、バックナンバーを揃えているということも知っていたので、どのような作品になるんだろうと思っていたら、雑誌というものの内部を映しながら、(各ストーリーを通して)長い年月もカバーするし、想像しなかった形で一本の映画になっていて、試写で観たときはびっくりしてしまいました。観れば観るほどいろんな角度で観れるので、10作目にふさわしい映画だなと思っています」と絶賛!
そしてMCの呼び込みによって、待望のウェス・アンダーソン監督が登場! MCから客席へ映画を観たリアクションを求めると、客席からは万雷の拍手も巻き起こるなか、ウェスは「このような状況の中でも劇場へ足を運んでいただけて嬉しく思います。このようなイベントが実施できたのもサーチライト・ピクチャーズのチームのおかげで感謝いたしますし、参加してくれたクン(野村訓市)にもありがとうと言いたいです」と胸いっぱいの様子でご挨拶! 続けて、「日本に行くチャンスというのは絶対に逃さない自分なので、通常であれば皆さんと一緒にいられるはずなのですが……」と日本に居られないことを惜しみながら「2018年の『犬ヶ島』で来日をして皆さんと作品を分かち合うことができました。日本に滞在するときはいつも最高の気持ちなのですが、そのときも最高の日々を過ごし、日を置かずにまた行きたいと思っています。実はクンと秘密のプランを練っていまして、1年滞在し、古い旅館をリストアして旅館ビジネスに参入!というようなことも考えています!」と相変わらずの日本愛を炸裂。一方、旅館ビジネスというまさかの発言にMCが思わず、「映画を撮るのではないのですね!?」と突っ込むと、ウェスは「今はちょうどスペインで新作を撮り終わって編集中という状態ではあるのですが、もし日本で1年滞在となればその体験からなにか映画的なものが生まれるということは想像に難くないですね」と笑顔で明かした。ウェスと秘密裏にプランを組んでいる張本人である野村は「まずは良い物件がありましたら、ぜひサーチライトを通してご一報いただければ僕とウェスで改造して、僕らは無料で泊まり、皆さんはお金を払って止まるというWINWINの関係が築けるかと思います(笑)!」と語り、会場を沸かした。
普段から交流があるというウェスと野村だが、顔を見て話すのは今年は今日が初めてということで、MCが改めてウェスの前で作品の感想を尋ねると、野村は「本当に素晴らしい映画で、ウェスの映画は毎回特徴があると思いますが、こちらが想像したものを超える新しい作り方を見せてくれて、それが毎回楽しみなんです。とにかくウェスの頭のなかには映画のアイデアが20~30個あると思うのでこのまま年1ペースで吐き出し続けて欲しいです」とコメント。ウェスは「ありがとう。スペインで撮影した作品の編集はほぼ終わっているんですが、実はこの物語、スペインで撮影しているのですが、舞台はアメリカです。それが終わった後にすでにイギリスで、大変興味深いイギリス人のキャストとともに短めの作品を撮っています。数ヵ月待っていただければ一本の完成した映画と、さらに次のプロジェクトも作業が進んでいるという状況になりますね」と野村の言葉通り、溢れ出るアイデアをまさに今も次回作に注いでいる様子。MCが会場に「楽しみですね!」と語りかけると、客席からも期待の拍手が巻き起こった。
本作はウェス・アンダーソン監督の記念すべき長編第10作品目。10本を振り返りながらウェス作品の魅力を一言で表すと?と尋ねられた野村は「一言で言うのはなかなか難しいですが、作家性があって、話がとてもおもしろくて、私はインテリア・デザイナーでもあるのですが、セットも素晴らしいし、音楽も素晴らしい。そのような映画を作る人がもう今の世の中ウェス以外いないんじゃないかと個人的には思うほどで……。とにかくウェスしか頼りにしてません」と絶大な信頼を寄せながらコメント。その様子を笑顔で聞いていたウェスは「ありがとう! 私自身、自分の作品を一言で説明をしてと言われたら、難しいです(笑)。アメリカで映画の企画を立ち上げるときにピッチといって、プロデューサーや出資者の方に、自分はこういう作品が作りたいと作品の説明をするのですが、数年間そういうことをしなくて済んでいます。もし、それをしなくちゃいけないとしたら、映画を作れていないと思います。というのも、自分の作品を先回りして、こういう作品だと説明できないからなんです。(私の作品では)多くの場合、出来上がった作品を観て、自分でも驚くことが多いです。自分で予測していない要素がミックスされていることが多いんですよね」と語った。
ここで、客席がウェスに直接感想を伝え、さらには質問もできるQ&Aのコーナーへ。貴重な機会ということもあり、客席からは続々と挙手が! 最初に当てられた方が「監督の作品が一番好きでずっと楽しみにしていたので、今回やっと映画館で観られて幸せでした。今作は監督の特徴的なショットも多かったと思うのですが、一方でアニメのシーンが多かったり、手持ちのカメラで撮影しているシーンがあったり、白黒のシーンも効果的に使われていて、新しい要素が多かったという印象なのです。今回の作品で初めて試みた撮影方法や演出方法があれば教えていただきたいです」と質問すると、ウェスは「まずは質問してくださった方にありがとうございますとお伝えしたいです。そして、皆さんが映画館で観てくださったことを嬉しく思っています。映画館で観ていただくために作った作品です。質問についてですが、映画を作るときには新しいことをやってみたいと毎回思っています。今回の場合は、アンソロジーという形でいくつかの物語があったために、非常にたくさんのキャストとお仕事できました。今までずっとお仕事したかったけど出来なかったベニチオ・デル・トロや、ジェフリー・ライトと組むことができました。(撮影では)キャストからワクワクするような新しいサプライズが生まれることがあります。自分の作品の新しさというのは、自分自身がコラボーレーションしている方に適用していくなかで生まれてくることが多いなと思っています。ジェフリーはスペインでの作品にも出演していらっしゃいますし、ベニチオともまたタッグを組むアイデアが自分の中にあります」と答えた。
その次の方が「すごくウェスの作品が好きでずっと観たいなと思っていたので映画館で観ることができて嬉しいです。ありがとうございます。質問ですが、ウェスの作品は音楽がとても素敵に使われていると考えていて、ウェスが音楽を使うときにどういうことをポイントにしているのか教えてほしいです」と尋ねると、ウェスは「今回の作品の場合、パートで物語が分かれているので、それぞれに楽曲をイメージしていきました。音楽担当はご存知のように『ファンタスティック Mr.FOX』からずっとタッグを組んでいる作曲家のアレクサンドル・デスプラです。オープニング(「自転車レポーター」)は、フランス映画の劇伴を担当しているジョルジュ・ドルリューにインスパイアされたバロック調の楽曲ではじめました。その次の画家の物語(「確固たる名作)」はエリック・サティのような静かめのフランスの楽曲のイメージ。ジェフリーの物語(「警察署長の食事室」)は形容しづらいのですが、いろいろ模索しながら進化させていき、ニューオリンズ的な楽曲で着地しました。アレクサンドルとの仕事は本当に楽しくて、彼のスタジオに行くのはいつも楽しみなんです。そして、ティモシー・シャラメやフランシス・マクドーマンドの物語(「宣言書の改訂」)は、既存のフランスの音楽を使っています。モリコーネも使っているんですが、60年代にドキュメンタリーのために彼が描き下ろしたもので、本当に大好きで前々から使いたいと思っていました。もう一曲、クリストフとジャーヴィス・コッカーの『愛しのアリーヌ』という楽曲は、映画全体の鍵となる楽曲だったんじゃないかなと思っています。ジョルジュ・ドルリューが作曲した楽曲もこちらで使用しています。クリストフが亡くなったのはご存知かと思います。カンヌ国際映画祭で『愛しのアリーヌ』の演奏してもらうということも考えていましたので、クリストフが亡くなって非常に残念に感じています。前々から大好きな楽曲でした」と並々ならぬ音楽愛とともに語った。
最後の方が「美しい作品でした。役者の方も本当に素晴らしかったのですが、キャスティングするときは何を役者の方に求めますか?」と質問すると、ウェスは「役者さんの選び方や求めるものはそれぞれによって違ってきます。今作はアテ書きのキャラクターも何人かいたのですが、ベニチオ、フランシス、ジェフリーがそれにあたります。フランシスは以前も仕事をしたことがあるのですが、ベニチオは以前からご一緒したいと思っていて、ものすごくパワーを持っている、スクリーン上で強き存在感を放つ、さらに驚かされる、そのような役者だと思っています。『ボーダーライン』も素晴らしかったのですが、続編で手話をするシーンがちょっと奇妙なシーンで、私は心を動かされました。それについてベニチオに聞いてみると、実はあのシーンは手話でやりたいと自分からリクエストした、と聞いたんです。そのように自分で何かを生み出す力、発明力を持っている方が好きです。ジェフリーは映画はもちろん舞台も何度か拝見していまして、彼の言葉が持つ表現力というものに以前から感銘を受けていました。非常に長いテキストであっても命を見事に吹き込むことができる方です。今お話した役者さんでも、それぞれ役者さんとして響いてくる部分というのは違ってきます。だからこそキャスティングするということ、役者さんとお仕事するということはとてもワクワクするんです」とリスペクトたっぷりにキャストの魅力を語った。
イベントが終盤に差し掛かり、フォトセッションの時間へ。マスコミ用にスクリーン上で、片手をあげてポーズを取るウェスと野村。ふたりで「シンメトリー!」と言いながら、左右対称の手をあげ、サービス精神たっぷりなポージングに客席からは笑顔もこぼれた。マスコミが終わると、観客の方のフォトタイムに! スマホを手に思い思いに写真を押さえる観客の皆さんだったが、ウェスもテンションが高まるあまり「ありがとうございます! 私にも観客の皆さんを撮らせてください!」とスマホを用意し、画面に映る観客の皆さんの姿をパシャリ! 気付けばお互いを撮り合うという可笑しな展開になるなど、日本とパリの遠い距離を感じさせないアットホームな雰囲気で、映画公開を祝うに相応しい最後まで大盛り上がりの前夜祭ファンイベントとなった。
(オフィシャル素材提供)
関連記事
・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門 レッドカーペット
・ストーリー予告(宣言書の改訂編)&場面写真&メイキング画像一挙解禁!