2021-03-11 更新
雪中梨世、清水健斗監督
3月10日(水)、『漂流ポスト』のアップリンク渋谷での公開を記念し、本作の撮影前に祖母を亡くし、本編で使われている主人公が東日本大震災で亡くなった親友に手紙を書くシーンで、祖母に対して手紙を書いたことで救われたという主演の雪中梨世と、長期ボランティアに参加して被災者の声を聞き、監督・脚本・編集・プロデュースを務めた清水健斗監督がトークイベントを開催した。
東京での公開を迎えた想いを聞かれ、雪中は、「この作品は、スタッフの皆さんが震災を風化させないという想いで作った作品なので、公開されて光栄です」、監督は、「震災10年という年にこの作品が皆さんの目に届くところで上映できること、非常に嬉しく思っています。風化が叫ばれていますが、震災当時のことを思い出してもらえるように、この作品が伝わればいいなと思います」と挨拶。
監督は、漂流ポストについての映画を作りたいと思った理由を聞かれ、「私自身は当時CM制作会社で働いていて、2011年に岩手で撮影を控えていて、3月12日にも岩手に行く予定だったんですが、前日に震災が起こって、自分が見てきた場所やお世話になってきた方が苦しんでいるのを目の当たりにして、ボランティアに参加して、避難所とかで被災者の方々の声を直で聞きました。映像に関わっている人間としては、映像で被災者の今を伝えていかなくてはいけないと思い、制作しました」と説明。
実際に漂流ポストを管理している赤川さんからお聞きして脚本に取り入れたことがあるか聞かれた監督は、「取材していく中で、今回の作品の(脚本に書いた)設定と同じような方がいらっしゃったとお聞きして、そこから脚本を肉付けしていきました。ポストの前でなかなか手紙を出せずうろうろしてしまったりだとか、天を見上げるという行動は、手紙を出しにきた方々はよくすると分かりました」と話した。
本作は、ドキュメンタリー的に撮ったシーンがあるとのことで、監督は、「主人公が手紙を読むシーンがあります。(劇中に出てくる手紙は)漂流ポストに届いた実際の手紙を使っていまして、そのシーンは、雪中さんに実際に撮影しているということを言わずに、(雪中さんが手紙を)一番最初に読んだところを本編で取り入れています」と裏話を披露した。
漂流ポストに届いた手紙を実際に読んだ雪中は、「手紙に綴られている一文字一文字が、それまでに資料として見た映像や本だったりとは違う重みを感じました。それを見て、手紙を綴った方々の一歩を踏み出した勇気というのは、絶対に伝えていかなきゃなという覚悟の気持ちになりました」と当時の決意を吐露。「手紙を書くシーンでは、実際に撮影前に亡くした祖母に宛てて書きました。園美と同じ心情だったので、一文字一文字自分の思っていることを書くにつれて、やり場のない気持ちだったのが不思議と感謝に変わったんです」と、撮影前に肉親を亡くした雪中だからこそ経験した変化を共有した。
最後に雪中より「この作品は、3.11を風化させないという大きなテーマがあるんですが、大切な人への思いを風化させないということにもなるんじゃないかと思います。この作品で一人でも多くの方が、大切な人へ想いを馳せる時間を過ごしていただければと思います」、監督は「直接被災していないという方でも、何かしら影響を受けているでしょうし、そういう人たちが『忘れない』ということが僕らがやらなくてはいけないことなのではないかと思っていますので、この作品がその手助けになればと思っています」とメッセージを伝え、舞台挨拶は終了した。
(オフィシャル素材提供)
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