2021-01-11 更新
震災から10年。震災で大切な人を亡くした人の“心の復興”を描く映画『漂流ポスト』がバルセロナ国際映画祭で審査員賞を受賞した。
“漂流ポスト”とは、「手紙を書くことで心に閉じ込められた悲しみが少しでも和らぎ、新たな一歩を踏み出す助けになるなら」という想いから、被災地である岩手県陸前高田市の山奥に建てられた郵便ポスト。当初は東日本大震災で亡くなった人への想いを受け止めるためのポストだったが、今では病気や事故など、震災に限らず亡くなってしまった最愛の人に向けた想いを手紙に綴り、届ける場所になっている。震災から9年以上経った現在も多くの手紙が届き、その数は500通を超える。手紙は同じ境遇の人々にシェアされ、心の復興を助けている。
2011年3月12日に仕事で岩手を訪れる予定だった清水健斗監督は、自分が1週間前に訪れた場所が津波に流されてしまう様子をニュースで見て、他人事とは思えず、長期ボランティアに参加。そこで直に見聞きした被災者の想いを風化させないために、ニュースで知った“漂流ポスト”を舞台に、心の復興の映画を製作した。
本作は、ニース国際映画祭 最優秀外国語短編映画グランプリ、ロンドン国際映画祭 外国語長編作品部門 最優秀助演女優賞(神岡実希)、ロサンゼルス・インディペンデント映画祭 最優秀外国語短編映画、テキサスのプレスプレイ映画祭 最優秀短編映画及び最優秀監督を受賞し、この度、震災から10年の節目の年に、バルセロナ国際映画祭で審査員賞を受賞した。3月5日よりアップリンク渋谷にて公開されるのを前に、通算6つ目の受賞となった。
この度、清水健斗監督より喜びのコメントが届いた。
◆ 監督・脚本・編集・プロデュース:清水健斗 コメント
まずは一人のクリエイターとして、世界の素晴らしい作品と肩を並べて上映してもらえたこと、結果として賞をいただけたことは非常に光栄です。
それ以上に、東日本大震災から10年の年に、国内だけでなく海外にもメッセージを発信できる機会を与えてもらい非常に嬉しく思います。
3年前に初めて海外で上映された本作は、今回で18回目の海外上映になりました。その間、世界でも様々な出来事が起き、心に傷を負った方々が多くいらっしゃいます。
生きていることのありがたさ、命や日常の儚さ、人との絆の温かさ、不条理な出来事にどう向き合い立ち上がるか……。私たちが東日本大震災で学んだ教訓が、世界でも問われている。そして、今だからこそ伝わるメッセージがあるのだと改めて考えさせられました。
日本だけでなく世界の人々に少しでもいいから勇気を与えられる。そんな作品に本作がなれるように、今後も発信を続けていけたらと思っています。
(オフィシャル素材提供)