2020-09-20 更新
ロドリゴ・ソロゴイェン監督
スペイン・フランス合作映画『おもかげ』が、10月23日(金)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショーとなる。
幼い息子を失ったひとりの女性の希望と再生の旅路を描いていく本作は、スペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督が2017年に製作した15分の短編映画「Madre」が出発点となっている。同作は、第91回アカデミー賞®短編実写映画賞にノミネートされたほか世界各国の映画祭で50以上もの賞を受賞し、世界の映画人を驚かせた。短編に続いて本作『おもかげ』のメガホンをとったソロゴイェン監督は、緊迫感あふれるワンシーンのその短編を大胆にも映画のオープニング・シーンとして採用し、息子を失った女性エレナの〈その先〉の物語を描いていく。本作は2019年のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出され、主人公エレナを演じたマルタ・ニエトが女優賞を受賞したほか、スペインで4つもの主演女優賞を獲得。止まった時間を深い失意とともに生きてきた女性の繊細さと迫真さが共存するニエトの圧倒的な演技に、観る者は思わず息を呑むだろう。
公開を来月に控えた9月18日(金)、本作の試写会がインスティトゥト・セルバンテス東京にて行われ、上映後にスペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督がオンライントークを行い、主人公エレナの心の再生への旅路を見事な映像とともに描き出した映画の魅力を捉えた観客から活発に質問が向けられた。
短編映画「Madre」から続く物語として『おもかげ』を作った理由について、監督は、「「Madre」を本当にたくさんの人に気に入ってもらえたこともありますが、このチームで一緒に仕事をした機会が本当に楽しくてエネルギッシュで、皆とまた一緒に仕事をしたいと思いました。それでイサベル・ペーニャ(本作の共同脚本)に声をかけて長編映画を作ることにしました。これまでスリラー映画が続いていたので、別のジャンルで作りたい、もっと自由にいろいろ語れるような映画を作りたいということもありました」と語る。また、短編を本作の冒頭にそのまま使った理由については、「エレナを演じるマルタ・ニエトの時間の経過を感じてもらえるように、短編をそのまま使いました。短編と『おもかげ』の撮影の間隔は2年ですが、彼女自身、体つきが変わるぐらい頑張ってくれました」と答える。
深い人間の心理を描いたこの映画を通じて描きたかったことを聞かれた監督は、「この映画が持つメッセージ……それはもしかしたらないのかもしれません。他の監督も多くがそうなのではないかと思いますが、あらかじめメッセージがあって撮っているのではなく伝えたい物語があるということです。撮った後になって思うのは、映画を撮って何年も経ち自分で分析してみて、“こういうことを言いたかったのかな”ということはあったりします。『おもかげ』については、これを作った頃の自分の心にあったものをまだ充分に理解することができていません。母性、赦しといったことはあるかもしれませんが、まだ自分にも分からないのです」と答える。
本作は、海のすぐそばに森があるという自然にあふれた風景も大きな魅力だが、フランス南西部の海辺のリゾート地ヴュー=ブコー=レ=バンで撮影された。この場所をロケ地に選んだ理由については、「語りたい物語があり、その上でロケ地を探していくうちに少しずつ絞り込んでいきました。私自身、ここを訪れたことが何度かあるんですが、いざ撮影する場所として見てみたら本当にすばらしいと思いました。大自然に囲まれていて、天気によって表情が変わります。例えば嵐の時には恐ろしい風景に変わるかと思えば、天気がいい時はとても美しい場所になる。あるいは、大きな海が広がっているそのすぐそばに森もあります」と答える。さらに、エレナの心情と海や空の色がシンクロしていたことについて聞かれると、「まさにその通りです。エレナの旅、体験……愛している息子が失踪するむごい経験をして10年間地獄のような体験をします。完全な暗黒の状態から光に向かって旅をしていきます。私たちがよく使う表現ですが、彼女は10年間なんとか生き延びてきました。この映画を通じて彼女が再び生きるようになるまでのさまを見せたかったんです。そのために、それを目に見えるありとあらゆるものを使って表現したかったので、おっしゃる通り、時には雨が降るのを待ちながら、天気がいい時を待ちながら撮影を進めていきました」と語る。
最後に監督は、「世界の裏側で撮ったこの映画を、日本の皆さんに観てもらえるのは何より嬉しいことです。どうか皆さんにゆっくりご覧いただき、ゆっくり堪能していただけたらと思います。この『おもかげ』は、私たちが特別な想いで作りました」とメッセージを寄せた。
(オフィシャル素材提供)
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