2021-02-12 更新
役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、西川美和監督
直木賞作家・佐木隆三によるノンフィクション小説「身分帳」の舞台を現代に置き換えて、13年ぶりに刑務所から出所した人生のほとんどを刑務所で過ごした実在の男をモデルに、「社会」と「人間」の今をえぐる問題作『すばらしき世界』。2月11日(木・祝)、初日舞台挨拶に主演の役所広司、共演の仲野太賀、六角精児、北村有起哉、そして西川美和監督が登壇した。
いままでオリジナル脚本で作品を撮り続けてきた西川監督は、本作では原案小説を読んだ際「犯罪というものをこういった角度で捉えたことが今までなかった」と視点の斬新さや自身で取材を重ねていくうちに、実は小説が発表された時代よりも現代のほうが「人生をやり直す」ことが難しく、窮屈なものになってきているのではないかと感じたという。
役所は「佐木さんの男性的な目線で語る物語が、西川監督の目線で脚色され演出されて見事な化学反応を起こして、温かくも美しい作品になりました」と述懐。初タッグとなる西川監督については「なにせ美人ですからね、現場の男たちは皆大好きです」と会場を笑わせつつ、「ときに大丈夫かな?と思わせるところがあって、そうすると皆が監督を支えたい、頑張ろうと思わされる。それは素晴らしい才能のひとつです」とほほ笑む。
西川組、そして役所との念願の初共演となった仲野は「皆さんも周知のとおり……役所さんは本当に偉大な俳優さんです。役所さんの目を見ていると目の奥が寂しそうで、それが役所さんなのか三上の目なのか境目が分からなくなっていきました。写し鏡のように役に向き合われるその姿には、役との深い対話と純粋な思いやりがありました。胸が震えて、自分で制御ができなくなることが何度もあった。役所さんと向き合うことで自分の中で津乃田という役がシンクロしていくのが分かる――それは初めての経験でした。この作品でご一緒する前とこの想いは変わらず、また役所さんと共演することが僕の最大の目標です」と熱い思いを吐露。
続いて、六角は「詐欺師やヘンタイ、おかしな男を演っていることが多いですが、久しぶりに良いやさしい男を演じさせてもらいました。役所さんはすばらしすぎて、勉強にならない俳優さんです」と場を沸かせ、その流れで北村は「「役所さん、3度目の共演ですが本当にありがとうございました!」と感謝を述べつつ、「西川監督の『蛇イチゴ』を観た時から、いつか西川作品に出るぞ、と心に決めていた。これから観る方のハードルを上げるのはあれですが、僕はこの作品がいちばん大好きです」と熱弁。
作品タイトルにちなんで「自分にとって“すばらしい世界”とは?」との共通質問が登壇者へ向けられた。役所は「戦争や紛争がなくなり、地球の二酸化炭素も少なくなって、世界中の子どもたちが夢を持てるような世界は素晴らしい」と世界平和を祈願。さらに今年開催予定のオリンピックにも触れて「スポーツを通して世界中の人間が熱狂している姿を見ると、世界は素晴らしいとつくづく思います」と語った。
仲野は「この映画でも描かれていますが、身近なところに落っこちていたりするのかなと思う、と答えつつ、もっと具体的なことを……と昨年大晦日に行われた総合格闘技『RIZIN』での堀口恭司選手の衝撃的一戦を挙げて、「500日ぶりの王座奪還! あまりにも嬉しすぎて、その年一番くらいの大熱狂をして涙を流した。エンタメからたくさんの感動をもらえることを改めて感じました」と感動を報告。
六角は「コロナ前の世界ですね」と言い、「今はその当時の日常がまったく出来なくなっているので、改めてコロナ前の世界がすばらしい世界だと思いました。少しでも早く戻ってくれたら嬉しい」としみじみ。
北村も「僕も六角さんと同じ意見です。忘年会、新年会、花見。毎年やっていたものがすべて延期。当たり前に出来ていたことができない。コロナ禍前の世界こそがすばらしい世界だったと思う。今の状態が良くなった時は、みんな急に忙しくなるでしょうね~!」と明るい未来に思いを馳せる。
西川監督は「思い返せば、映画の現場は三密の最たるものでした。顔と顔が引っ付きそうなくらい近づいて、喧嘩したり励ましあったり。そんな風景を撮っていました。今は何かを撮るにしても、いろいろなことに気を配り、恐怖感を抱えながらやらなければならないので、どうも100%の気持ちで仕事ができていないんじゃないかと思います。撮影した時のように、またあの熱気の中で仲間たちと映画を撮ることが出来たら。そんな世界こそ、すばらしい世界だと思います」と前を向く。
そして、まもなく迎えるバレンタインデーにちなみ、俳優陣を代表して役所が西川監督へ感謝の意を込めて花束と手紙ならぬ「感謝の言葉を述べます!」と高らかに宣言! ソーシャル・ディスタンスを保ちながら、役所が西川監督に花束贈呈。
「西川組は本当にすばらしいチームでした。すべてのスタッフ・キャストが刺激し合いながら映画の撮影を楽しませてもらいました。たくさんの人に愛される作品に仕上げていただき、この作品に参加できたことを誇りに思い感謝をしています。次に我々が西川組で働ける日がいつ来るか分かりません。たとえ次お呼びがかからなくても、我々はひがまずに応援しています(笑)! 西川監督は日本映画の中で、なくてはならない才能だと思います。これからの作品を楽しみにしています、頑張ってくださいありがとうございました」。
その言葉を受け、「感無量です。本当に言葉がございません……!」と目頭を熱くする西川監督からも返礼と役所に花束を贈呈。「役所さんに主演していただいたのは夢のようでした。役所さんが現場におられると静かなんだけれども場が活性化して、皆が映画を作っているんだ、と感じ始めるんです。映画を作るのってこんなにすばらしいことなんだと全員で感じさせていただきました。映画の映画らしさが、とても分かりづらくなってきて消費されるもののような気配になりつつありますが、10年、20年、30年後に観てもらってもいい作品を作れると、映画に携わっていて良かったと改めて、そういう気持ちにさせていただき本当にありがとうございました」と役所へ、出演者、スタッフ、会場へ万感の思いを伝え、舞台挨拶を締めくくった。
(オフィシャル素材提供)
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