2020-07-18 更新
原題:Tanets s sablyami木琴の堅い音が激しく鳴り響き、サクソフォーンがエキゾチックな旋律を奏でる20世紀の名曲「剣の舞」。演奏時間はたった2分30秒の猛々しいメロディは日本では吹奏楽で演奏される機会も多く、運動会の徒競走の盛り上げ役としてもおなじみだ。ユネスコによると劇音楽で世界屈指の演奏回数を誇るこの曲は、意外なエピソードから誕生したという。
1942年12月。コーカサス地方のアルメニアを舞台にしたバレエ「ガイーヌ」は、初演を目前だった。ところが、劇団幹部から最後を締めくくる勇壮な踊りの追加が命じられる。時はソビエト連邦に大粛清の嵐が吹き荒れた数年後。命令は絶対であり、失敗したら作曲家人生は終わる。そんな重圧を味方にして、1度聞いたら忘れられない「剣の舞」をひと晩で書き上げたのは、ソビエトが誇る現代作曲家のアラム・ハチャトゥリアン。現在のジョージアでアルメニア人の両親の4男として生まれ、モスクワとニューヨークで作曲を学んだ天才だ。
祖国アルメニアへの思いを音楽で表現する情熱の作曲家アラムを演じるのは、ロシアで舞台やTVで活躍するアンバルツム・カバニャン。宿敵のプシュコフはアメリカのTVドラマ「24」などにも出演してたアレクサンドル・クズネツォフ。
脚本と監督はウズベキスタン出身のベテラン、ユスプ・ラジコフ。本作の制作会社が行ったハチャトゥリアン物語の脚本コンテストで優勝し、映画化を勝ち取った。自伝や記録、遺族の証言から、不本意ながら生まれた「剣の舞」完成前後の2週間に着目し、5年の歳月をかけて史実を元に誕生秘話を執筆した。2018年4月にアルメリアの首都、エレバンの劇場で行った撮影では、ビロード革命が発生。デモ隊に劇場が包囲され、キャストとスタッフは5日間劇場に閉じ込められながらも撮影を強行。同録データにはデモ隊の叫び声や騒音が入っていたため、すべての音を再録音したという。映画も「剣の舞」同様に難産の末に生まれたのだ。
生前、日本でも公演活動を行い、日本人作曲家との交流もあった巨匠ハチャトゥリアン。世界で愛される「剣の舞」に込められた民族の悲しみと世界平和への祈りが、今、明らかになる!
第二次世界大戦中、レニングラード国立オペラ・バレエ劇場はモトロフ市に疎開していた。劇団員たちは軍部の監視、物資の乏しさ、延々と繰り返されるリハーサルなど、様々な困難に耐えながら「ガイーヌ」のプレミア上演に向けて準備をしていたのだった。
突然、上官からクルド人が剣を持って戦いの踊りを踊る楽曲を創るように命じられた巨匠アラム・ハチャトリアン。それは公演のわずか8時間前だった。
彼は軍部の狙いをよそに、ある思いを込めて作曲を始めるが……。
(2019年、ロシア・アルメニア、上映時間:92分)
キャスト&スタッフ
監督・脚本:ユスプ・ラジコフ
出演:アンバルツム・カバニアン、アレクサンドル・クズネツォフ、セルゲイ・ユシュケビッチほか
配給
アルバトロス・フィルム
7月31日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
■ オフィシャル・サイト: tsurugi-no-mai.com (外部サイト)
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