2020-07-18 更新
ユスプ・ラジコフ監督
ユスプ・ラジコフ監督
1957年6月5日ウズベキスタン タシケント生まれ。
脚本家であり映画監督である彼の代表的な作品には、『TURKISH SADLE(英題)』(17年)、『SHAME(英題)』(13年)、『ERKAK(原題)』(05年)などがある。
2002年、日本で開催されたウズベキスタン映画祭で来日し、『演説者』(99年)、『女の楽園』(00年)が上映された。
世界屈指の演奏回数を誇る「剣の舞」。クラシック界の若き巨匠アラム・ハチャトゥリアンがひと晩で書き上げた名曲の誕生秘話『剣の舞 我が心の旋律』の監督・脚本を務めたユスプ・ラジコフのオフィシャル・インタビューが到着した。
「仮面舞踏会」「剣の舞」など数々の名曲を残したアラム・ハチャトゥリアンが、若き日にたったひと晩で書き上げた20世紀の名曲「剣の舞」に込めた民族の悲しみと世界平和への祈り、その知られざる真実が、今明らかになる!
アラム・ハチャトゥリアンは、ソビエト連邦の多文化芸術を象徴する人物でした。民族問題は常にイデオロギーと文化創造現象に結びついています。その一方で人々の感情的記憶、各国の近現代史などともつながりがあり、それらはすべてのソ連の人々が身近に感じられるものです。同時に映画のプロットに様々なドラマが含まれていることに気づいたことも映画化を決意した理由の一つです。
もちろんです!
ハチャトゥリアンの人生と仕事に関係するものすべてを調べ、研究しました。映画で描かれた時期の詳細を調べるのは苦労しました。というのも彼は私生活を公にしない生き方をしていたので。というわけで彼が抱えていた問題の多くは一般に知られることはありませんでした。最も良く知られているのは、ハチャトゥリアンがサルバドール・ダリと会っていたことです。しかしながら、私はすぐにこのエピソードを重視しないことに決めました。ハチャトゥリアンを理解するために、このエピソードを中心に置くべきではないと考えたからです。
確かにハチャトゥリアンは、「剣の舞」「仮面舞踏会」などの作品で大変有名ですが、アルメニアではカルト的な地位を築いています。まさに民族の誇りを大きく掻き立てる存在と言えるでしょう。
制作中にある歴史的な出来事が起こりました。その時我々はエレバン中心部にあるアレクサンドル・スペンジアリャン国立アカデミー劇場でバレエのシーンを撮影していました。ちょうどアルメニア革命(※)の只中で、街は混乱しており、人々が通りに集まっていました。そして撮影が終わった日に、セルジ・サルキシャン首相が辞任したのです。
(※注 2018年4~5月にアルメニアで起きた政変。当時10年もの間、大統領を務めたセルジ・サルキシャン氏による政権延命政策への抗議で大規模なデモが発生した。この結果リベラル派のパシニャン首相が誕生。80年代チェコスロバキアで起こった平和的革命(ビロード革命)になぞらえている。
2018年4月にアルメニアの首都、エレバンの劇場で行った撮影では、ビロード革命が発生。デモ隊に劇場が包囲され、キャストとスタッフは5日間劇場に閉じ込められながらも撮影を強行。まさに映画も「剣の舞」同様に難産の末に生まれた。)
ロシア映画に関して言えば、プロデューサー主導で作られる映画が出てきたことと、新しいジャンルの映画が出てきたことでしょうか。
「剣の舞」は非常に複雑な振付の踊りです。第一に我々にとって難しい時期だったこと、そして42年後に標準的なバージョンに落ち着かせるのは無理なことなのです。そもそもそのようなバージョンは存在しないのですから。例えばピンクガールズの踊りは完全にゼロから修復する必要がありました。そしてこの傑作が現在の姿に至る過程で関与した力や出来事を理解する必要がありました。その結果が最終的な編集になったのです。
架空のキャラクターたちは、ハチャトゥリアンが実際に出会った実在の人物たちを基にしています。架空のキャラクターたちは、アレクサンドル・クズネツォフ演じる文化省の責任者プシュコフ、ハチャトゥリアンが恋するバレリーナであるサーシャ、そしてもう一人重要なのが、ハチャトゥリアンの従者であるゲオルギーです。彼はいわば(ドン・キ・ホーテにおける)サンチョ・パンサのような役割を担っています。彼を加えたのは、子が親に対して持つような忠誠と、天才のビジョンを象徴する特別な存在を置く必要があったからです。禁欲的な現実の裏には、鮮やかで深く織り込まれた背景があったのです。
この映画で私が最も気に入っているシーンの一つは、ピンクガールズの踊りです。幻のような軽やかな動きに、雷鳴のような決死のバトルが続きます。華奢で柔軟なバレリーナたちの踊りの背景に、アラム・ハチャトゥリアンの天与の音楽が流れます。
日本の観客の皆さんが私たちの映画を楽しんでくださることを楽しみにしています。そして厳しい日本の皆さんが私たちの作品を観て評価されることを嬉しく思うとともに、大変わくわくしています。ありがとう!
(オフィシャル素材提供)
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