2020-08-13 更新
8月14日(金)より新宿武蔵野館/YEBISU GARDEN CINEMAにて全国公開の映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』より、メイキング写真とともに、監督と作品の出合い、そして制作の裏側を語った秘話が解禁となった。
● ホランド監督と「今」を映し出す脚本との出合い
本作は、当時の歴史的飢餓を生き抜いた自身の祖父、そしてウクライナに実際に足を運び、ガレス・ジョーンズの存在を知った本作の脚本担当のアンドレア・チャルーパから始まった。初めて映画の脚本を執筆したチャルーパは、ホランド監督の歴史的な映画や政治的発言を鑑み、映画化の話を持ち掛けた。普段から歴史上の惨状を題材にした脚本が多く届く中、チャパールの執筆した本作もそのひとつであり、当初監督は気乗りしなかったという。「重要性は評価しますが、あまり気乗りしないものがほとんどです。忠実に再現するのは気が重いし、そういう脚本のほとんどがとても浅薄なのです。今回の脚本も読み始める前は途中でやめてしまうだろうと思ったのですが、ストーリーと登場人物、そしてジョージ・オーウェルの『動物農場』と結びつくコンセプトに惹きつけられました」とホランド監督は語る。彼女は、チャルーパの手掛けたこの脚本が、今の世の中にも通じる要素であること、事実を目撃して伝えた実在した人物が主人公であり、彼の勇気と誠実さ、ジャーナリズムの義務を深く理解しているという説得力があることに大いに興味を持った。そして、ジョージ・オーウェルの「動物農場」と結びつくコンセプトも加わり、揺るがぬ軸を感じたホランド監督は、確固たる期待と信頼を抱き、その結果、多数の脚本の中から本作の映画化を決めて、舵を切ったのだった。
● クリエイティブな撮影現場
ホランド監督は、実話ものや歴史大作にありがちな堅苦しさを避け、あらゆるシーンに観客が共感できる人間味を出すようにした。「撮影監督のトマシュ・ナウミュクとともに、作品に独自のエネルギーを持たせたいと思っていました。トマシュは若く、とてもオープンでクリエイティブです。私は“こういうふうにやって”とは言いません。制作側・役者、皆で協力しあいながらクリエイティブでいられる環境づくりを意識しました」と話す。そんな撮影監督のトマシュ・ナウミュクはホランド監督のことを「とても知的かつ感性が豊かで、ビジネスで映画を作っているという感覚がない。だからアグニェシュカの前では決して手を抜けないんだ。彼女は映画における技術や質などを知り尽くしている。常に最高のシーンのために闘わなくてはならないし、妥協は許されないんだ」と評した。他にもロンドンのシーンを撮影する時はローアングルの照明を多用、その反対にモスクワでは照明を上から当てるといった工夫、一方でウクライナの場面では質素な雰囲気を出すためにツァイス製の古いタイプのレンズを使ったと話しました。
まさに脚本と監督との出合い、そして監督が引き出したクリエイティブな撮影環境は、私たちを戦間期の冷たいソ連の大地へと誘う。だが、ここに描かれる凄惨な物語はフェイクでなく史実だった――。決して過去の歴史物語ではない、玉石混交の情報が飛び交う「現代」にこそ、観るべき『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』は8月14日より全国順次公開。
(オフィシャル素材提供)
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