2020-06-25 更新
渡辺いっけい、榎本 桜、大山晃一郎監督
遠山 雄(リモート登壇)
2019年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019で観客賞である「ゆうばりファンタランド大賞」の作品賞を受賞した映画『いつくしみふかき』が、新型コロナウィルスの影響での公開延期を経て、6月19日(金)よりテアトル新宿ほかにて公開中。公開記念記者会見では、本作で映画初主演の渡辺いっけい、出演・プロデュースの榎本 桜、本作で長編映画監督デビューの大山晃一郎がフェイスシールド着用で、また撮影地の長野県より本作主演・企画の遠山 雄がリモートで登壇し、本作に懸けた想いや新型コロナウィルスの影響での公開延期を経てコロナ禍の中公開された心境を語った。
渡辺いっけいは、本作で意外にも劇場映画初主演。本作は、もともとは4月17日に公開予定だったが、新型コロナウィルスの影響で公開延期になり、先週金曜日の6月19日からテアトル新宿ほかにて公開となった。公開を迎えた想いを聞かれ、渡辺いっけいは「先行公開という形で、ロケ地だった長野県飯田と僕の生まれ故郷の愛知県豊川で2月から公開してもらっています。インディーズ映画なので、宣伝費がそんなになかったものですから、人海戦術で、実際に映画館に行って、来てくれたお客さんの顔をしっかりちゃんと生で見てお礼を言ったりしていました。ですから、新宿の本公開でも『できれば毎日舞台挨拶したいよね』というつもりでいたのに、コロナの関係で舞台挨拶ができなくなりました。ようやく公開となった6月19日に、イベントが禁止だったので、劇場の外に遊びに行かせていただいたという形でお客さんに『ありがとうございました』と声をかけさせていただきました。今まで舞台挨拶もいろいろ経験しましたけれど、これ程パーソナルな形で携わった仕事は意味があると改めて思いました。(外出)自粛明けで、ソーシャルディスタンスを実行しているので、満員にはならないんですが、見ず知らずの方と一緒の空間で1つの映画を暗い中で観ることの面白さ、映画館で映画を観る楽しさを改めて感じました。そう思うと、自粛明けで僕らの映画を観に来てくれる方は本当に有難いなと思いました。僕の想像以上にお客さんが来てくださっていて、非常に驚きましたし、嬉しかったです。お客さんの反応って、残酷ではありますが、この映画を観て少しその方に変化がある状態で接することになりますから、楽しいです。時間がある限りそれをやりたいと思っています。本作を撮影したのは3年前です。この映画に映っている自分のエネルギー、この子たちと何かやったら面白そうだなという当時の勘が発揮されていて、今3年前の自分に自分は力をもらっている感覚です。それが映画の面白さだと思うし、観てくれるお客さんに必ず何かが伝わる映画だなと改めて思っています。1人でも多くの方に観ていただきたいです」と挨拶。
本作で長編監督デビューとなった大山晃一郎監督は、「完成した後も、劇場公開までいろいろな苦労があって、4月17日にテアトル新宿で公開と決まったときは本当に嬉しかったですが、コロナで延期になってしまいました。オンラインでの公開という選択肢もあったのですが、映画館で観て欲しいと映画館にこだわって耐え忍んできたので、公開日朝一の回をテアトル新宿で観た時は、涙が止まらなかったです。大きな区切りとして、公開できて本当によかったなと思います。」とこれまでの長い道のりを説明。
本作でW主演と企画を務める遠山 雄は、ご本人の知人親子についての話を映画化したいと大山監督に話し、その知人親子が住んでいた長野県飯田市の方々を巻き込んで、本作を成立させた。長野と東京を行ったり来たりするのは新型コロナウィルス感染拡大防止のためによくないということで、ずっと長野県にとどまり、長野県の上映館を回っている。遠山は、「テアトル新宿での公開で舞台挨拶をするのを本当に楽しみにしていました。テアトル新宿で上映するのが夢みたいな感覚でいたので、(舞台挨拶をできなくて)残念なんですけれど、僕が今東京に行ってしまって他の映画館に移動すると不安になる人がいると思って、今は長野県飯田市にいます。(電車で一本の)愛知県の豊川市のイオンシネマ豊川と長野県長野市の長野千石劇場で今上映しているので、ロビーでお客様と交流したり、パンフレットにサインをしたりしています」と辛い現状を話した。
遠山はこの話を映画化したいと思った理由を聞かれ、「僕は本日司会をやっている榎本 桜と同期で19歳から俳優をやっているんですが、無名俳優なので、このまま無名の俳優で終わるわけにはいけないという想いで、自分が主演の映画の企画をスタートさせました。映画の内容に関しては、親しい知人親子をモデルにしたのですが、(以前から)いつか何か形にならないかなと思ってとっておいたお話です」と企画の成り立ちを説明。モデルとのなった知人を演じたことについて聞かれ、「本来の僕とは全く違うタイプの人間です。普段どういうことを考えているかを把握しづらいタイプの人なんですが、(今まで)彼と過ごした時間があったり、撮影の前後も会ったり電話したりも可能だったので、人間観察を含め、自分に落とし込んで、すごく時間をかけて心の方を作っていきました。撮影時は体重を絞っていたので、本来の僕とは違う人間になれたのかと思います」と役作りについて話した。
監督は、親子というテーマを描くにあたり、覚悟が必要だったそうで、「自分自身も父親といろいろあった家庭なので、初監督の題材が父親というのは避けたかったテーマなのですが、一度この映画をきっかけに、昔の自分と父親に一度向き合ってみようと思いました。また、自分が父親を描く時に、簡単に肯定したくないというか、『小さい頃の自分に怒られないように、安易な描き方をしたくない』と、慎重に自分が思っていることを、グレーな気持ちをグレーなまま描こうと思いました」と述懐した。また、ポスタービジュアルについて聞かれ、「父親と息子と血の繋がりというテーマを初監督映画のテーマとした時に最初に思いついたのがこのシーンです。服を着たまま向かい合っているシーンを撮るためにこの映画を撮ったと言っても過言ではない」と話した。
渡辺いっけいは、この2人から映画主演のオファーを受けて、どうして引き受けたか聞かれ、「9年位前の連続ドラマでチーフ助監督が大山くんでした。ある回で、チンピラの役で非常に面白いとぼけた役者が来て、大山くんに『あの子誰?』って聞いたら、「うちの劇団の遠山といいます」と言ったので、何度も芝居を見に行くようになりました。主役だから受けたというわけでなく、プロットだけ聞いて引き受けました。面白いのができそうだなと思ったんです。役者として表現が分かりやすいのをベースにいつの間にかやっている役者になっているなと思っていました。僕はテレビ中心にやっているのですが、テレビは不特定多数の方を相手にするものなので、分からないものはダメなんです。自分の中で閉塞感が生まれていた時期なので、これはタイミングがいいなと思いました。そのままポシャる可能性もありましたが、たとえ失敗したとしても、何の傷も受けないと思い、楽しみました」と話し、大阪出身の大山監督はすかさず「悪いっけいが出ました」とツッコミ。
大山監督は本作で長編映画デビューだったが、完成した映画を観た感想を聞かれた渡辺いっけいは、「撮影前にショートムービー『ほるもん』のDVDを見たんですが、出来がよかったんです。1本見れば、どのくらいできるか分かるじゃないですか。できる監督というのは分かっていたんで、信頼していました。自分が演じた役が、僕自身が演じたことがないタイプの役だったし、撮影現場でも自分の計算で演じていないところが多かったです。それまではこんな感じで映っているなというのが分かって演技をしていたんですが、本作では正直に言ってどんなふうに映っているか全く意識しないで演じていたんです。なので、試写会を観た時、びっくりしました。自分のこんな顔、見たことがないなというカットが多かったんです。それがすごく新鮮で。観た人にも『本当にいっけいさんですか?』と言われるので、新しい面を映してくれたので感謝しています」と監督の手腕を絶賛。
息子役を演じた遠山に関しては、「親子の役ですけれど、意思疎通ができないという設定なので、撮影現場ではほとんどしゃべってないです。いい塩梅だったと思います」と遠山は撮影中、役に入っていたと証言。
舎弟役を演じていた榎本 桜については、「普段はとても気を遣って、それも『気を遣ってますよ』というオーラを出さずにさりげなく気を遣えるできた人間なのに、役者になると本当に気を遣わないで、自分の役に集中するというなかなかいないタイプだと思います。役者の資質としていいなと思いました。僕もベテランの人とやる時にどこか躊躇するころがあって、それがつまらないなぁと思うんですが、榎本くんはそういうところがないので、これから大化けする可能性があると思っています」とこちらもベタ褒めした。
金田明夫演じる牧師の教会で、渡辺いっけい演じる父親と遠山演じる息子が、お互い親子だと知らないまま共同生活を送るシーンは、一転コミカルになる。渡辺いっけいは、「金田さんとはテレビドラマで何度か共演がありました。ところが、絡んだことが実はほとんどなかったんです。僕と金田さんとは役者としてのカテゴリーが似ているので、金田さんと僕が一緒にいて何かを起こすというテレビドラマがなかったんです。初めて芝居を交わして、ことのほか楽しかったです。それぞれ仕掛けて、それぞれ受けて」と話し、榎本は「ベテランの遊び!」と嬉しそうにツッコミ。遠山は、「僕は自分の出番がないシーンも見させていただきましたが、何パターンも用意されていて、『こんなのもあるよ、監督どう?』といろいろな演技プランをどんどん出していく俳優さんで、感銘を受けました」と話し、大山監督は、関係者試写で本作を観た金田が、「いい! 金田がいい!」と自画自賛していた裏話を披露した。
本作には飯田市の市民がエキストラとしても参加している。冒頭の渡辺いっけい演じる広志が悪魔として村から追い出されるシーンについて聞かれた大山監督は、「長野県飯田はフィルムコミッションもない映画に慣れていない場所だったんですけれど、助監督が『自分の家から1つ武器を持って来てください』と言ったら、皆『映画の撮影だ!』とお祭り感覚で来ていたんです。そのシーンは、広志を追い詰めているシーンなのに、チェーンソーとかを持って談笑をしているんですよね。僕は腹が立って、『なんで笑っているんだ! 自分の家族が傷つけられて、傷つけた男がこの近くに潜んでいる。自分の家族が傷つけられて、あなたたち笑えるんですか? 笑っている奴は帰れ!』と言ったら、さっきまで笑っていた人たちがすっと顔が変わって、『俺、許せない。見つけるぞ!』となり、熱気がありました」と、一緒にストーリーを体感してその気持ちになるというエキストラの演出方法について話した。
締めのメッセージとして、榎本は、「売れない俳優と売れない監督が大先輩に乗っかって作った映画です。僕と遠山と大山が同期で、芽が出ないまま17年かかりました。本作は『6年かけて作った映画』と謳われていますが、僕らにとっては、17年間の集大成。17年の想いがこもった映画です」と熱弁。
大山監督は、「どんな手を使ってもいいから、1人でも多くの人に観て欲しい。コロナの時代ですけれど、なんとかできることを最大限やっていろんな人に届けたいです」、遠山は、「自分の役者人生を懸けて撮った作品です。本当に最後のつもりでこの企画に挑みました。本作は無名のお金のない俳優がやるような規模ではなかったのですが、満を持しての公開の時にこういう事態になってしまい、どうしたらいいか全く分からない、まだ暗闇の中にいるんですけれど、いろいろなところで上映が決まってきています。少しでも多くの人に観てもらえるように、最後の上映が終わるまで頑張ります」と決意を改めて表明。
渡辺は、「この映画は、洗練されたエンタメ作品ではありません。好みが分かれると思います。でも何かしらどこかひっかかる映画だと思っています。実際に何度も観てくれる方がいらっしゃって、『観れば観るほど味が出る』と言ってくださっています。僕もそう思っています。自分の作品を宣伝するのは苦手なタイプなのですが、この映画は損はさせない映画です。もしちょっとでも興味がありましたら、映画館に足を運んで頂けると嬉しいです」とアピールした。
(オフィシャル素材提供)
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