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2019-09-20 更新

原題：江湖儿女

イントロダクション

　31歳の若さで初めてカンヌのコンペに選出された『青の稲妻』(02)。ヴェネチアでサプライズ上映され、金獅子賞（グランプリ）に輝いた『長江哀歌（エレジー）』(06)。ターニングポイントとなった２作を踏襲しつつ進化させた『帰れない二人』は、ジャ・ジャンクーの５作品目となるカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作。本作の出品をもって、中国人監督のカンヌコンペ出品数最多を誇るチェン・カイコー監督と並んだ。カンヌでの公式上映には世界中から有名俳優・有名モデルが駆けつけ、「皮肉と華麗さを兼ね備えたロマンチックなフィルム・ノワール。ジャ・ジャンクーは中国の偉大な映画作家だ」とテレラマ誌は本作を絶賛、ル・モンド紙、ポジティフ誌が最高点をつけた。

　『プラットホーム』(00)以降、ジャ・ジャンクー作品のミューズとして主演し続けてきたチャオ・タオが『青の稲妻』のチャオと『長江哀歌』のシェン・ホンという二人のキャラクターを、『帰れない二人』ではチャオという一人の女の心の変遷として丁寧に演じ直している。そして、『薄氷の殺人』(14)でベルリン国際映画祭銀熊賞（主演男優賞）を中国人俳優で初めて受賞したリャオ・ファンが、もうひとりの主人公ビンの17年間に渡り繊細に変化していく“男の強さと弱さ”を体現した。また、シュー・ジェン、フォン・シャオガン、ディアオ・イーナン、チャン・イーバイら中国を代表する監督たちが俳優として物語の脇を固めるのも一興だ。

　撮影はオリヴィエ・アサイヤスやウォルター・サレス作品で知られ、是枝裕和監督最新作『真実』も手掛けているフランスの名撮影監督エリック・ゴーティエ。言葉の壁を越え、３つの時代とロケーション、人物の距離感を見事に活写した。音楽を手掛けたのはジャ・ジャンクー作品を何作も彩ってきたリン・チャン。登場人物たちが言葉に出せない想いを音楽にのせて観客に伝える。