2021-02-01 更新
高橋伴明監督
高橋伴明監督
1949年5月10日生まれ、奈良県出身。
1972年に『婦女暴行脱走犯』で監督デビュー。以後、若松プロダクションに参加。60本以上のピンク映画を監督。
1982年『TATTOO<刺青>あり』でヨコハマ映画祭監督賞受賞。以来、脚本・演出・プロデュースと幅広く活躍。
1994年『愛の新世界』で、おおさか映画祭監督賞を受賞し、ロッテルダム映画祭で上映された。
主な監督作品:『光の雨』(01)、『火火』(04)、『丘を越えて』(08)、『禅 ZEN』(08)、『BOX 袴田事件 命とは』(08)、『赤い玉、』(15)など。
柄本佑主演・高橋伴明監督の、在宅医療のスペシャリスト・長尾和宏のベストセラー「痛くない死に方」「痛い在宅医」の映画化『痛くない死に方』が2月20日(土)より全国順次公開となる。この度、2月18日にブックマン社より発売になる、映画「痛くない死に方」読本(定価:1100円+税)より、監督・脚本の高橋伴明のオフィシャルインタビューの一部が届いた。
責務と言うと大そうなことになると思うのですが、これは本当にひとつの提案であって。何も押し付けるつもりはないんです。観た人がどう受け止めるのかという。誰しも、「死」というものにこの先必ず、関わるわけじゃないですか。だから今作は、ひとつの提案、ひとつの役割になったらいいなと。
それは原作を勝手に読み取って、長尾さんが言いたいのはこういうことなんじゃないの? というところでの発想です。監督商売というのは、想像力。あとはそれに自分の気分を乗っけていく。他の人はどうか知りませんが、自分はそうやってストーリーを作っていきます。
それはやっぱり、「こういう死に方をしたい」という自身の思いが根底にあります。けれどもドーンと重い映画には最終的にしたくなかった。これは人に見せるための映画だということを考えたときに、“川柳モドキ”が浮かんだんです。
監督って、映画表現の中で思いを言いたがるものじゃないですか。それをやっていると映画は終わらないので、ここはこれを言いたいんだよということを、後半に登場する、宇崎竜童演じる本多 彰の川柳で表現したらいいと。これがいちばん苦労したところでしょう。
前半の死のシーンをしっかりとやっておかないと、後半部分に繋げられない。河田の成長を描く上で、前半の死に様や、身近に寄り添う人の心の痛み、その根底にある医療の負の部分をさらけ出す必要がありました。
演じる側も、あんな紙おむつ姿でひたすら苦しむ役なんて、たいていの俳優なら拒否しますよ。それを下元史朗は、俺が伝えた以上に演じてくれましたよね。
下元とはピンク映画時代から40年以上の付き合いがあって、俺は俳優として高く評価しているんです。
苦しみ、悶える父を看取った智美が、河田に「私の心が痛いんです」と怒りをぶつける。このシーンがまさに、映画の肝でした。
智美を演じた坂井さんとは今作が初めてで、役に関して俺からあれこれ伝えることはなかったけれど、「分かりやすい芝居は嫌いなんだよね」みたいなことをチラッと話したと思います。それもあって、彼女は智美の複雑な内面の部分を自分なりに探り、表現していたと思うんです。その抑えた演技の中にも、最後の怒りまで持っていく流れがあって、彼女の表情を見ていたいという興味がすごくありましたね。
直子、良かったね。彼女とも今回の作品が初めてになるんです。今まで仕事をしたことはないけれど昔からの知り合いで、いつかは仕事をしてみたいと思っていました。あいつの人生もチョロっとは知っているし……ああいう、歳をとったからこその人生の機微みたいなものを演じてくれるという確信があった。それに彼女自身が、がんという病と向き合ってきたからね。“私は死ぬまで生きてやる”というような彼女独特の姿勢が、今回のしぐれ役にハマりました。
コロナというのは、「死を考える」というよりは「生き方を考える」ということになったんじゃないかな。今までをどう生きてきたかということをそれぞれが考えるための、ある種の啓示みたいなものなんじゃないかなと俺は思っていますけどね。
高橋伴明作【終末川柳】
※映画「痛くない死に方」読本に掲載されている27句のうち5句を抜粋
痛みなく
悔いなき最期
平穏死
延命の
最期は誰も
管だらけ
延命の
家族愛とは
エゴイズム
尊厳を
遠くの親戚
邪魔をする
自尊心
紙のおむつが
踏み潰す
(オフィシャル素材提供)
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