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2019-08-15 更新
高橋ヨシキ(映画ライター)、てらさわホーク(映画ライター)
頭から上は常人と変わらないにも関わらず、AI「STEM」に身をゆだねることで機械的かつ斬新なアクションが繰り広げられる前人未到のハイ・ディメンション・SFアクション『アップグレード』。メイン館である渋谷シネクイントが1周年を迎えたことを記念したイベント「樽出し生映画祭」のオープニング作品に選ばれ、そのジャパンプレミアに映画ライターの高橋ヨシキ氏とてらさわホーク氏が登壇した。
映画の感想について高橋氏は「ゴマすってるわけじゃなく結構理想の映画だなって思ってて。サイズ感とか話がややこしくなくて、見せ場が豊富でそれなりにかっこいいし。ケチをつけたらきりがないですけど(笑)。何の情報も入れずに観はじめて、これはもしかして難病ものかとビックリしたんだけど、すごい面白かった」と印象を語った。また会場を埋める観客を見て、当日が花火大会などで渋谷に浴衣を着た人がたくさんいたことに触れ、「この映画のほうが花火より面白いと思います(笑)」と、来場者を沸かせた。
てらさわホーク氏も「思いがけずという感じの映画じゃないですか、皆さんもご覧になったばっかりラストに驚愕していると思いますが、こういう映画を思いがけず観たいですよね」と予想外のラストに触れつつ、掘り出し物映画を見つけた喜びを語った。
主演のローガン・マーシャル=グリーンのマシンのような動きのアクションに注目した高橋氏は「AIチップのステム君は首から下しかコントロールできないから、顔に攻撃がくると腕を使って顔を動かして攻撃をよけるんです」と解説。さらに「携帯電話に付いているモーション・センサーが付いた装置を主人公に持たせておいて、それと同期するカメラのシステムを作ったみたいで、それで動きに合せたカメラワークが実現している」と斬新なアクション・シーンの仕掛けを明かした。
加えて「CGとかも上手いですよね。あとカメみたいなフォルムの車とかちょうどいい塩梅、なんか頑張りすぎると遠い感じがするでしょ。これくらいだと近しい未来という感じがする」と褒めつつも、そのっまあ雲の形をしたクラウドが出てくるシーンに、「そういうことじゃないだろ」と突っ込む一幕に会場からは笑いが起こった。
監督が80年代の映画に強い影響を受け撮影に臨み、特に『ターミネーター』を意識したと話していることについて、てらさわ氏は手術のシーンが印象的だったらしく「そこまで見せなくてもいいのでは?というところもちゃんと見せてくれる。そこら辺はあの頃(80年代)を思い出させてくれる、立派だなと思った」と分析した。
本作のSF的な要素について、高橋氏は『アリータ』とか『攻殻機動隊』を引き合いに出し「言っちゃえばサイバーパンクですよね、低予算の中でも最大限できるサイバーパンク感を出してる映画だと感じた」、てらさわ氏は「予算の制限があるほうがサイバーパンクって上手くいくんじゃないかってこの映画で思いました」と限られた予算内でのアイデア勝負の演出を気に入ったようだった。
映画ファンの中で親しみと尊敬を込めて“恐怖の工場”と言われる本作の製作会社でもある「ブラムハウスプロダクションズ」の映画製作について、てらさわ氏は「『パージ』シリーズにしろ『パラノーマル・アクティビティ』シリーズにしろ、ぼんやりしてるとすごい数作ってきますよね、でもえらいなぁって、結果を出してるな」と、その凄さを改めて感じたようで、高橋氏も「ディズニーが何もかも持っちゃってるでしょ? そういう時に超大作じゃない作品ってどうしても埋もれちゃうんです。でもこういったサイズの作品が観たい。超大作じゃない分、いろいろな実験もできるしヘンテコな映画を作れるから、そういった意味では救世主ですよね」と絶賛した。
最後に「デートに最適だと思うのと同時に、このくらいのサイズの映画っていうのは、シネコンでグイグイかかる作品とはまた違うから、こうやって観に来てくれるお客さんの力が無いとあっという間に紛れてしまうので、これからもみんなでこういった映画が観られる状況が続けばいいなと思います」と高橋氏。てらさわ氏は「主役の彼がトム・ハーディーかと思ったら違ったという。でも頑張ってますよね、彼みたいな役者が主演で頑張るっていうのはすごく評価されるべきだと思いました」と締めくくり、終始笑いの絶えないジャパンプレミアは幕を閉じた。
映画『アップグレード』は10月11日(月)より渋谷シネクイント、新宿シネマカリテほか全国ロードショー。
(オフィシャル素材提供)
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