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『みとりし』
オフィシャル・インタビュー

2019-09-04 更新

榎木孝明


みとりしmitori
© 2019「みとりし」製作委員会
写真提供/佼成出版社
配給:アイエス・フィールド

榎木孝明

 1956年1月5日、鹿児島県出身。
 1978年に劇団四季に入団し「オンディーヌ」(81)で初主演。退団後、連続テレビ小説「ロマンス」の主演でドラマ・デビューを果たす。
 95年にスタートした「浅見光彦シリーズ」は2002年まで主演を務める大ヒット・シリーズとなる。
 主な映画出演作に『天と地と』(90)、『天河伝説殺人事件』(91)、『半次郎』(10)、『マンゴーと赤い車椅子』(04)、『きばいやんせ!私』(18)などがある。



 200人以上を看取ってきた日本看取り士会の柴田久美子会長の経験を基にしてフィクションを加えて制作した映画『みとりし』。この度、主演・企画の榎木孝明のオフィシャルインタビューが到着した。


十数年前に日本海の小島で出会った柴田久美子さんから初めて「看取り士」について聞いたそうですが、映画にしたいと思った理由はどこにありますか?

 最初は先方の希望で、看取り士の認知度を上げるために映画化をしたいとのことでした。以前話題になった『おくりびと』は納棺師の話でしたので、同じように映画で観ていただければ分かりやすいと思いました。


主演だけでなく企画も携わったそうですが、改めて「看取り士」という題材が映画に向いていると思った点はありますか?

 (看取りについて)考えるべき時期になっているような気がしました。自殺者の数が数年前まで毎年3万人を超していたそうです。電車の人身事故が日常にすぎなくなってしまっている。本作の冒頭のシーンにも入れましたけれど、飛び込むことは異常行動だと再認識したほうがいいのではないかと思っています。自殺が私たちの身近で起きているのに、意識がない時代になっているように思います。


脚本も担当された白羽監督が、柴田さんのこれまでの人生を、少女期、バリバリのキャリア時代とその挫折の時代、そして看取り士時代という3つに分けて、それぞれをみのり、柴、つみきみほさん演じる看取り士の3つのキャラクターに割り振ったというのが面白いと思いましたが、最終的な脚本を読んで、いかがでしたか?

 本人が生きる気力をなくした男という出だしは分かりやすいと思います。本人の気づきから看取り士に辿り着くというのは、最初から看取り士で出発するよりもはるかに説得力があります。


本編では主に3つの家族の看取りの話が出てきますが、エピソードはどのように選んだんですか?

 そこは私の判断ではないです。柴田さんは何百人も看取っていますので、その中の3家族に絞られたのではないかと思います。


劇中で成長していく新人看取り士は女性ですね。

 村上さん演じるみのりは若い人の代表です。今実際に19歳位の若い看取り士さんもいるそうです。もっと多くの若い方たちに興味を広げていただければと思います。


この映画に出合うまでは、死は怖いものという印象だったのですが、最初の看取りのシーンの直後に新人の看取り士のみのりが「変な言い方かもしれないですけれど、穏やかな気分です」と言い、柴が「いいね、それでいい」と返すのを見て、衝撃を受けました。日本看取り士会が実行している「看取り」の象徴的なシーンだと思いましたが、演じる上で心がけたことはありますか?

 柴田さんとはたくさん話をしましたし、看取り士の研修を受けさせてくださいとお願いして、初級と上級を受けて、実際に看取る役と看取られる役と両方やらせていただいたんで、自分の中でシミュレーションができました。覚悟というほど大げさではないかもしれないですが、看取り士の方たちは、みんな研修を受けて、その意味を分かった上でこの職に就いているわけですから、そこは外せない体験でした。
 看取り士の方々との交流が結構あったので、話を聞くこともできました。明るい方が多いですね。その辺からも、あまり暗く演じるものでもないんだなと思いました。


mitori

村上穂乃佳さんとの共演はいかがでしたか?

 本当に看取り士みたいで、一緒にいて心地よかったです。ほわっとした性格の方でした。


柴は看取りの後リンゴを剥く、というのもいいシーンでした。

 リンゴを剥くというのは落ち着きを取り戻すということと、役の中で娘がアップルパイを……というところに思いを繋げて脚本を読んでいて、これでいきたいと思いました。何か表現することで、より伝わればいいなと思います。


本作で一番難しかったところはどこですか?

 難しいっていうことはないです。本職の方々も、感情から一歩離れたところで俯瞰する気持ちを大事にしているのではないかと思いました。


特に注目してもらいたい部分はありますか?

 思い入れは全てにありますが、最後のエピソードでお母さんが亡くなっていく辺りの子どもたちとの関係は、悲しい話ですが、温かみのある最期がいいですね。


撮影前もしくは撮影中のエピソードは何かありますか?

 白羽監督も柔かい方なので、声を荒げることもなく、皆が良い雰囲気で、看取りの現場みたいな撮影現場だったと思います。
 昨年7月、撮影予定だった岡山県の高梁市が豪雨の被害に遭い、高梁市以外で撮るという選択肢もあると言われたんですけれど、プロデューサーも私もそこで撮ると決めたから、最後までそこでやったほうがいいと言いました。役者もスタッフも想いは同じだったと思います。


読者の方にメッセージをお願いします。

 死は皆避けて通れないので、最期看取るにしても看取られるにしても、覚悟をするきっかけになる映画だと思います。看取りの概念が芽生えるきっかけになる映画になっていますので、ぜひ多くの皆さんに観ていただきたいです。



(オフィシャル素材提供)




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