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『サバ―ビコン 仮面を被った街』
アフタートークイベント

2018-05-06 更新

ピーター・バラカン

サバ―ビコン 仮面を被った街suburbicon

配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー中
© 2017 SUBURBICON BLACK, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 ジョージ・クルーニー監督、ジョエル&イーサン・コーエン脚本最新作『サバ―ビコン 仮面を被った街』が、5月4日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー中! クルーニーが監督・製作・脚本、コーエン兄弟が脚本を手がけた本作は、2017年のべネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』と人気を分け合った話題作。

 この度本作の公開を記念し、ゲストにピーター・バラカンが登壇、トークイベントが実施された。音楽をはじめとして様々なカルチャーに造詣の深く、また、報道番組「CBSドキュメント」の司会を長らく務めたバラカンが、実際に起きた人種差別暴動をモチーフに入れ込みつつ、50年代のアメリカンカルチャ―が印象的な本作を様々な視点から話した。


 会場に登場したバラカンさんは「今日は50年代代表として来ました(笑)。コーエン兄弟の作品はよく見ていて、ひねくれたブラックなコメディが多いんですが、今回はあまりにもブラックで、声に出して笑えないおかしさがありましたね」と映画の感想を話した。

 まず最初に1951年イギリス・ロンドン生まれのバラカンと1959年設定の本作の登場人物ニッキーはほぼ同世代であることから、当時の時代に関しての話に移ると、「当時のイギリスとアメリカは、全く違いますね。アメリカに憧れる面もありましたが、イギリスはもっと小さい国でしたし、生活ぶりも質素でした。イギリスにニュータウンは50年代にはなくて、イギリス式のものが60年代に出来始めたと思います。50年代は戦争の傷跡がまだ残っていましたね。まだまだこれから戦争から復興するという時代。劇中では男の子たちがジーンズにTシャツを着ていますよね。僕が初めてジーンズをはいたのは60年代。50年代当時のイギリスの小学生は短パンを履いていました。長いズボンは9~10歳の子が履いていたと思います。劇中のニッキーもあまり服を持っていないようですが、子供たちがあまり甘やかされる時代ではなかった」と服装の点も交えつつ、イギリスとアメリカの違いを振り返った。

 劇中でマット・デイモン演じるガードナー・ロッジの一家の話になると、「劇中のロッジ家はいわゆるサラリーマンの、中産階級ぐらいの家庭ですね。サバービコンも実際の街がモデルになっていますが、こういった街は、もうちょっとワンステップアップしたい人に向けて売り出していたと思います。ロッジ家に置いてあるテレビのリモコンのシーンを観た時は、「え、待てよ、50年代にリモコンあったの?」と思いました。僕の家にリモコン式TVが初めて来たのは80年代でした。このリモコンが出るシーンはちょっと面白い、話題になるディテールですね」と、劇中のこだわり抜いた家具についても話が出た。

 また、バラカンならではの、50年代の音楽の話になると、「50年代が終わる頃に小学生だったんですが、親がレコードプレイヤーを初めて買ったのは60年代だったから、50年代はラジオで音楽聴いていました。音楽を聴いていたけど、積極的、というよりは子供向けのリクエスト番組を週末に聴いていた、という感じですかね。テレビも観ていましたが、当時のイギリスのテレビのチャンネルは民放とBBCワンチャンネルずつしかなかった。テレビではよく西部劇のシリーズものをやっていましたね。『ローン・レンジャー』とか、『リン・ティン・ティン』とか。いっぱいありました。タイトルがスラスラなぜか思い出されますが、やっぱり小さい時の体験って忘れないですね(笑)。遡って観ると、50年代のアメリカの映画は面白い作品がたくさんあった。割とコメディと真面目なドラマが混ぜたものが普通だった。今は、真面目なものは賞をとるかもしれないけど、あまり一般の人は見てないっていう印象がありますね」と当時の自身の経験を振り返りつつ、語った。

suburbicon 50年代のミュージシャンの話になると「いま50年代を思い出すとロックンロールのイメージが強いですね。エルビス・プレスリーは54年にレコード・デビューして56年頃にヒットします。その後もリトル・リチャード、チャック・ベリー、バディ・ホリーやいろいろなミュージシャンが出てくるんですが、皆2年くらいでほとんどいなくなります。南部では悪魔の音楽だ、と言われてレコードを割って燃やされたり、事件が起こります。そこで、59年となると、割とアイドル歌手の時代になります」と解説し、会場からも感嘆の声が上がった。

 また、当時の人種差別の話になると、「50年代に有名なアラバマ州のバスのボイコット事件があって、これをきっかけにマーティン・ルーサー・キングが出てきて、公民権運動に繋がりますね。でも50年代はまだ進んでいないかな。一つ、画期的な最高裁の判断が54年にあったんですが、同じ学校に白人も黒人も通うのは、60年代になってから。南部には50年代にはまだまだ酷いことがありました。アメリカは社会的に進んでいる面もありますが、基本的に保守的な国だな、と思うことも多いです。どこの国でも田舎に行けば行くほど保守的になりますが、今、まさに拍車がかかっているような気がしますね」と当時の社会背景を解説した。

 本作が、コーエン兄弟が書いたロッジ家のコメディ・スリラーの脚本に、レヴィットタウンの実話をプラスして、監督のジョージ・クルーニー監督が成立させたことについて、バラカンは「ジョージ・クルーニー監督が最初はオスカー・アイザックの役をやらないかと言われて、コーエン兄弟の脚本を持っていたんですよね。そこから、何年か経って、何を監督しようかと思った時、思い出したのが本作。そこにレヴィットタウンの事件を組み入れるのは監督ならではの面白さですね。ジョージ・クルーニーは娯楽作品にもよく出ますが、最近は真面目な映画に多く出ていますね。『グッドナイト&グッドラック』が本当に名作ですよね。子供の2人が素晴らしい最後を彩りますよね」と監督の手腕を褒め称えつつ、映画の結末にも言及。

 ジョージ・クルーニー監督が何故、今、この作品を撮ろうと思ったのか、考えを尋ねられると、「結果的にどの程度意図したかは別として、今のトランプ時代のアメリカを思わせますね。アメリカに限らず、世界中でそんな雰囲気になっていますが、監督はそういったことをみんなに考えてほしい、と思ったんでしょうね」と話した。

 また、オスカー・アイザックがインタビューで「“アメリカを再び偉大に”と言って、かつての輝かしいアメリカに戻ろうとする動きがある。本作はそんな時代にこそ観てほしい作品だと思う」と話したことに話が移ると、「どこが輝かしいんだ、って感じですね(笑)。トランプが輝かしかったって思い込んでいるのは、実はこの話のことだった、ということですよね。古き良き時代、というのは結構洗脳されていると思う。あと最近日本では伝統についての話が多いな、と感じるのですが、みんなが伝統と思い込んでいるのは新しいものだったりします。“伝統”だと思い込んでいるということです」と、今の日本の社会にも通じる部分があることを指摘した。

 実際のドキュメンタリー映像も作品で使われていることについては、「まさにレヴィットタウンの事件のドキュメンタリーの本物の映像が使われているんですよね。ただ、実際のレヴィットタウンの事件では、抗議に行動に出ていた人はそんなに多くなかったらしいですね。抗議行動に出ている人の声を大きく見せていたみたいです」と最後まで様々な知識を駆使した話に観客は真剣な面持ちで聞き入り、イベントは幕を閉じた。


(オフィシャル素材提供)



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