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2017-09-01 更新
西山 諒
西山 諒
愛知県出身。
文学座附属演劇研究所30期を卒業し、舞台を中心に活動。
現在は、地元の名古屋で自身の劇団を立ち上げ、劇団「パンジャーボンバーズ」の座長として活動している。
佐藤慶紀監督第1作「BAD CHILD」『BAD CHILD』にも出演。
昨年10月に釜山国際映画祭ニューカレンツ部門に正式出品され、そのセレクションが評価されている大阪アジアン映画祭など国内外で絶賛されている佐藤慶紀監督の問題作『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』が、満を持して9/9(土)~10/6(金)まで新宿K's cinemaで公開される。
南カリフォルニア大学を卒業した新進気鋭の佐藤慶紀監督が、10年程前、加害者の死刑を止めようとする被害者遺族がいることを知り、復讐心も湧いてくるであろう中、そのような決断をした理由を深く考えたいと思い、制作した本作。
宗教と出合い、「犯人を許す」と言いながらも、死刑判決は当然のものと考える元夫と違い、死刑を止めることを考え始める被害者の母の心の動きを丁寧に描いた本作主演の西山 諒のオフィシャル・インタビューが到着した。
佐藤監督の長編映画1作目の『BAD CHILD』で、念願の銀幕デビューをさせていただきました。日本各地でその映画の上映が続いていた中、佐藤監督から電話をいただいたのでその話かな?と思いましたら「新作の主演をやって下さい」との言葉。その時、名古屋駅の雑踏の中に居て、最初佐藤監督の声を聞き取るのが大変だったのですが、人生最大のニュースを耳にした途端、全ての音が消え、佐藤監督の声しか聞こえなくなった感覚がありました。
「ズドーン」です。心と肩にズドーンと、言い表しようのないモノがのし掛かりました。
読み始めてすぐに入り込み、時に涙を流しながら一気に読み終えた時には、やり場のない悲しさ、苦しさで一杯になりました。
それと同時に、この素晴らしい作品の中で、私が母として生きられることに心震え、絶対にたくさんの方々に観ていただける映画にしなければ、私が足を引っ張らないようにしなければ、と想いました。
台本を初めて読んだ時から疑問点や自分との相違点がほぼ無く、身体に落とし込めたので、役作りは特にしていないです。役作りをすると、どこかのシーンで嘘臭さが出てしまうとも思ったので、ありのままの自分で体当りするしかないと考えました。
一つ、髪の毛を自分でわざとガチャガチャに切った箇所があります。映画をご覧いただいたらその意図は分かっていただけるかも知れません。
一人娘への愛情です。寝ても覚めても抜けないように、撮影がない日も胸のど真ん中に娘を置いて生きていました。
娘の秘密を知った時のシーンです。その文言は台本には書かれておらず、そのシーンの撮影直前に佐藤監督から伝えられましたが、私が勝手に想像していたモノと違い、佐藤監督が求める世界になかなか行けず苦労しました。
ニコニコと。飄々と。飾らず、優しく、面白く、心の大きな方です。
撮影中もそこは全く変わらないのですが、やはり、監督をする方というのは……特に佐藤監督は瞬時に心の奥まで見抜く人……とビリビリ感じ、佐藤監督の前では日常も演技上の嘘も一切通用しない!と腹を括って、お釈迦様の掌で踊らされる孫悟空のつもりで、本音で生きさせていただきました。
演技に関しては、私の疑問点を聞いて、答えていただくくらいでした。日頃は笑いが起こる楽しい会話を。
一つ気になっていた「どうして今回この役を私にオファーして下さったのですか?」と尋ねたら「こんな大変な役、西山しか受けてくれないと思った。というか、西山さんなら断らないと思った」と言って下さって。それが本当に嬉しくて。俄然私は裸一貫、挑ませていただけました。
目力が半端なくて、見たら負けると思いました。その目は、私に刺さるくらいの光線を出していたり、時には抱擁力のある、私を吸い込む様な瞳になったり。
面会のシーンは全て同じ日に撮影したのですが、目と目で語り、お互いに感じるままに闘わせていただきました。二人ともヘトヘトになりましたが、相手が荒川さんじゃなかったら産まれ得ないシーンとなりました。
顔合わせの時、逢った途端にお母さん役の箱木さんに本当のお母さんみたいに接しているのを見て、私たちはそれぞれ気を遣い合う俳優じゃない。『HER MOTHER』という背景を借りた、本当に実在する人物たちなんだ、と私の覚悟が決まった感じでした。
とにかく、やりやすかったです。初めましての瞬間からお互い遠慮なし。同じ西山という姓もプラスになったのかも知れませんが、驚くほどに他人の感じがしませんでした。この人の前では嘘は通用しない。本気で遠慮なくぶつからせていただきました。
野沢さんの隣はとても居心地が良かったです。姉弟としての愛情。姉弟だからこその気配り。姉弟にしか分からない怒り。最初からそれらがリアルにあって。今でも野沢さんのことは弟のように思っています。
一番顔を合わせたくない方でした。勝ち負けじゃないですが、この方には勝ち目はない。数少ないシーンでしたが、私は母として気負って気負って挑まなければ心が負けてしまう。私一人だけ“演技をしている人”に映ってしまうと思いました。箱木さんの存在感、リアル感は、私があと100年修行を重ねても取得出来ません。
上映後のQ&Aで次々に想いや疑問を投げかけて下さる。これは本当に嬉しかったです。私が着いたばかりの夜に開催された釜山国際映画祭のパーティー会場でも、審査員の方が「ファンスティック! マーベラス! ファビュラス!」と熱く声を掛けて下さって、海外の方の心にもしっかり響く作品だということに安堵と喜びを感じました。
観終わった後、決してハッピーな気持ちになる映画ではないですが、観ていただくといろいろ、本当にいろいろと考えていただけます。「自分がもし誰々の立場になったら…」自分のこと、自分の大切な人のこと、辛い想いをしている人のこと、いろいろな心を想って、その先考え続けていただける映画です。
ぜひご鑑賞くださり、新たな一歩を踏み出していただけたら幸せです。
(オフィシャル素材提供)
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