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2015-02-17 更新
橋本 愛、森 淳一監督
配給:松竹メディア事業部
『リトル・フォレスト 冬・春』全国公開中
『リトル・フォレスト 夏・秋』DVD&ブルーレイ好評発売中!
© 「リトル・フォレスト」製作委員会
都会で自分の居場所を見つけられない主人公が故郷の山村“小森”に帰り、自給自足の生活をしながら生きる力を充電していく姿を、旬の食材を生かした日々の食事と共に描く映画『リトル・フォレスト』。この度、第65回ベルリン国際映画祭の「キュリナリー・シネマ」部門に正式招待され、現地ベルリンにて、2月10日(現地時間)に「夏・秋・冬・春」の4部作のうち「夏」と「冬」の上映が行われ、主演の橋本愛と森淳一監督が参加した。
上映後にはミシュランガイドにおいて二つ星を得、昨年 German Cook of the Year に輝いたドイツ屈指の有名シェフ、Michael Kempf(ミハエル・ケンプ)氏が作品にインスパイアされて作る特別メニューを供するアフターディナーを堪能した。
<キュリナリー・シネマ部門とは?>
世界三大映画祭であるベルリン映画祭が9年前の第57回より映画祭の目玉として新設した部門。世界各国より「食」にまつわる良作を選出し上映することで、映画関係者だけでなく、世界中の美食家からも注目されている。
【キュリナリー・シネマ部門のプロデューサー:Thomas Struck氏のコメント】
キュリナリー・シネマは「食」というテーマをあらゆる観点から取り扱っている部門であり、とりわけ、地方における持続性のある食文化に注目しています。この食文化を見事に実践しているのが、『リトル・フォレスト』の主人公・いち子です。農作物を育て、手作りのソースや飲み物を拵える――。彼女が取り組む自給自足の生活は“食物連鎖”の本当の意味を示してくれ、美しい四季の移り変わりと共に、私たちを自然の穏やかなリズムの中へといざなってくれます。この心地よいペースは、洗練されたカメラワーク、高い編集技術と演出力、そしてなんといっても橋本 愛のきめ細やかな演技の賜物でしょう。カメラの前で食べるという行為は容易ではないにも関わらず、彼女の素晴らしい演技により、私たちはあたかも自分たちがその食事を味わっているかのような感覚すら覚えました。そればかりでなく、彼女の食べる姿は美しくもあるのです。このようなユニークな映画を制作した松竹、そして主演の橋本 愛に向け、ここにお祝いの言葉を表したいと思います。
上映前舞台挨拶
200席のチケットは売り切れとなっており、開場前の早い時間から大勢の観客が集まった。上映前にキュリナリー・シネマ部門を代表するトーマス・ストラックの紹介により、主演の橋本 愛と森淳一監督が登壇。華やかな着物姿の橋本に観客からは大きな歓声が起こった。橋本の着用した着物は戦前のアンティークの着物で“打ち出の小槌”など日本の昔話に登場するモチーフがちりばめられており、帯は手刺繍で「唐獅子」のモチーフがほどこされたおめでたい柄。
森監督からの作品紹介やエピソードに続き、橋本さんは、完璧なドイツ語で初の国際映画祭に参加したことに関する感謝と、日本の美しさを感じてほしい、というメッセージを伝え、大いに観客を沸かせた。
観客は、40代の男女を中心とした層で、女性同士だけでなく、夫婦や家族での来場も多く見られた。上映中は、料理が画面いっぱいに登場するたびに客席から声が上がり、今まで見たことが無い日本食に驚くと同時に、食事の時間を待ちきれない人々から溜息が漏れていた。そのような中でも、上映中に最も笑いが場内を包み込んだのは、アメリカやヨーロッパではとても人気のあるヌテラ(Nutella)が紹介された瞬間であった。母親役の桐島かれんが自家製でヌテラを作るのだが、娘役の橋本 愛は、それを自分の家のオリジナルだと信じていた中で、ある日、スーパーに山積みされている瓶詰を見つけたシーンだった。また、お腹が鳴ることを「井の中の蛙」ではなく「胃の中の蛙」と間違えるシーン、子供時代のいち子のクリスマスのエピソードなども、笑いを誘っていた。
ちょうど夕食どきの上映だったこともあり、静かなシーンでは、場内のあちらこちらで、おなかを鳴らす音が響くこともあった。上映終了後は、エンドクレジットが流れ始めると共に場内は大きな拍手が包み込み、改めて紹介された橋本と森淳一監督は観客からの熱い賞賛を受け、笑顔で答えていた。
<橋本 愛 ドイツ語での挨拶 日本語訳>
初めまして、橋本愛です。
私にとって初めての海外映画祭参加がこのベルリン映画祭という素晴らしい場所で、この映画を上映する機会をいただけたことを大変光栄に思います。ありがとうございます。そして、今日という日が私にとって忘れられない一日になることを実感しています。
本作で日本の表情豊かな風景と、自然と共生しているからこそ生まれた食の魅力が伝われば嬉しいです。
本当にありがとうございました。
ディナー
公式上映後は、豪華レストラン「Gropius Mirror」に会場を移し映画を堪能した観客200名が来場。ドイツ屈指のレストラン「facil」のシェフで、ミシュランガイドにおいて2つ星を取得、ドイツの有名グルメ雑誌「ファイン・シュメッカー」において「German Cook of the Year」 に輝いたミハエル・ケンプが『リトル・フォレスト』にインスパイアされて作った特別メニューが提供された。
<ミハエル・ケンプのコメント>
この映画の中では、主人公のいち子がお母さんからいろいろな料理を学んでいますが、僕も母から、地味だけれども、大変心がこもった家庭料理の数々を教えてもらいました。
『リトル・フォレスト』は、ひとつの料理本みたいで、観ている人が料理をぜひ作りたいと思う映画だと思います。今夜のディナーは映画のどのシーンというより、全てからインスピレーションを受けました。その中で、部下と話し合ってハイライトとなるような味を実現しました。前菜に、映画に出て来るウスターソースと鱒を使いました。メイン料理は白ナスを蒸したものに生姜とシソをあしらっています。
何といっても注目すべきなのはデザートですね。私は昨年、数週間に渡って日本に滞在したのですが、その時に和食の素晴らしさに惚れ込みました。日本は食材のクオリティーが非常に高い。日本の調理法はヨーロッパとは違い、食品の本来の味を残しています。今夜のディナーは日本食の調理法と、ヨーロッパの食材をあわせてご用意しました。楽しんでください!
<メニューの内容>
つきだし:お米のパフ わさびクリーム添え
前菜:柿と発酵米のウスターソース和え マスの串揚げを添えて
メイン:白ナスのカレーソース掛け(隠し味で味噌を使用) 大根おろしを添えて
デザート(リトル・フォレスト/四季をイメージして):ヘーゼルナッツのクリームケーキ(マンゴーソースと抹茶クリームの2種)、ポレン(花粉を固めたもの)やクコの実のソースをあしらって
<ディナーを食べた橋本 愛の感想>
ミハエルさんを中心にドイツ人シェフの方々が、『リトル・フォレスト』を観て、そこから趣向を凝らして一生懸命作ってくださっているのが、ものすごく伝わってきて、本当にありがたく感じました。日本でよく食べる食材が、いつもとは違う味付けや形、組み合わせとなって出てきたのが面白く、ドイツではこのように調理されるのだろうか、ドイツ人の口にはどう感じられるのだろうか、映画をご覧になった方たちが、この料理を食べてさらに『リトル・フォレスト』を楽しんでくれているといいな等、いろいろと想像するのも楽しかったです。どれもとても味わい深いお料理でした。
トークセッション
ディナーと同じ会場で、橋本 愛と森 淳一監督がトークセッションを行った。
MC: 橋本さんに質問です。一年間で完璧なコックさんになれましたか?
橋本 愛: まあ……そうですねえ(笑)。
MC: 女優として、毎日本当にお忙しいかと思うのですが食事はどうされていますか?
橋本 愛: 地方ロケに行ったりすると、できるだけ現地のものを食べるようにしています。
MC: 映画の中では、近代的で若い女性を演じられていますが、実際に山の中で生活をするのと、都会で生活するのとでは、どちらが良いですか?
橋本 愛: 昔は自給自足の生活に憧れていたのですが、この映画の準備のために自給自足に近い生活をしたんですね。そうしたら、やっぱり都会がいいなと思いました(笑)。
MC: じゃあ、夢が遠のきましたね(笑)。続いて森監督に質問です。日本食は古い歴史を持っていますね。ですが、食事自体が映画の主題になっていることは少ない。この映画は漫画原作ですが、それはどういったモチベーションで作られたのでしょうか?
森 淳一監督: やはり新しいものを作りたい、という思いからですね。
MC: この原作となった漫画は、どのような読者を対象にしたジャンルの漫画なのでしょうか?
森 淳一監督: もともと青年誌に掲載されていた漫画なのですが、その後男女の別なく、幅広い年齢層に読まれるようになっていった漫画です。
MC: 橋本さんへ質問です。食べるところを見られるということはとても抵抗があることだと思うのですが、この映画の中ではそのようなシーンがたくさん出てきますね。橋本さんにとって、食べるシーンを撮られることには抵抗がありましたか?
橋本 愛: そうですね。食べているところを撮られることはそんなにないことなので……。撮影では美味しいものを美味しくたべることをいかに表現できるかということに重きを置いていました。
MC: 森監督へ質問です。映画の中では大変調和した自然というものを見せていて、破壊するような自然、例えば自然災害のようなものは全く映っていません。この映画は、福島のそばで撮られたそうですが、その後日本では何か変化があったのでしょうか?
森 淳一監督: 映画を撮影したのは岩手県で、福島の隣の県になります。映画を撮ったのは山の中なので、そこまで災害の爪痕は見えませんが、岩手県の海岸沿いではもちろん、まだ被害が目に見えるところもありました。
MC: この映画は、モダンな都市である東京を持つ日本の中の、新たな生活モデルと捉えて良いのでしょうか?
森 淳一監督: そうですね。東京の人は、食品がどこから来ているのか分かっていないことがあります、それを意識するためにも、もう一度原点に戻らなくてはいけないのかも知れませんね。
MC: ではこの映画には、ある意味、技術的で教育的な監督の願いが込められているのでしょうか?
森 淳一監督: そうですね。映画というものには、そういうメッセージもあるかもしれませんね。ですが僕は、日本の綺麗な景色、食などを見てほしい、という思いで撮っているので、そこまで強いメッセージは込めていませんが。
MC: 日本の観客の反応はどうでしたか?
森 淳一監督: 都会に住む人は、田舎の生活っていいなという感想でした。田舎の人は、自分たちの生活に対する自信を再認識できたとおっしゃっていました。
MC: この映画祭では、4部作のうちの「夏」と「冬」のみ上映しましたが、最後は一体どのように終わるのでしょうか? 結末を教えてください。
橋本 愛: 最後の「春」で、私演じるいち子が一つの決心をする。その決心と映像のエネルギーがすばらしくマッチしていると思いますので……皆さん是非観てください!
MC: お母さんはどうなりますか? また登場しますか?
橋本 愛: もちろん登場します。ぜひ観てください。
MC: ぜひ観てください!(拍手)
<舞台挨拶&ディナーを終えた橋本愛のコメント>
初めて国際映画祭に参加して、国境に関係なく、人と人として心を通わせることができたのかな、ということがすごく嬉しかったです。
舞台挨拶の時はすごく緊張してたのですが、会場の皆さんが温かい空気を作り出してくださったので、ドイツ語でのご挨拶もまあまあうまくいったかなと思います。
あとは、私たちが撮影で一年間ずっと目にしていた、日本の岩手県奥州市の景色が、ヨーロッパのドイツの映画祭のスクリーンに映し出された瞬間にすごく感動しました。とてもいい体験をさせていただきました。
橋本 愛、初・ベルリンを堪能!
同日お昼、舞台挨拶前には橋本 愛がベルリンの街を観光・散策した!
まずは「ポツダム広場」にある「ベルリンの壁」の前で記念撮影。東西に分かれていた街の歴史をガイドから聞き、感銘を受けた様子。また広場近くにある映画博物館とアーセナル劇場(クラシック作品やアート系の劇場が入っている)に興味深々の様子。現在映画祭に合わせてやっていたヴィム・ヴェンダース監督の特集上映を滞在中にぜひ観たいな、と語り「ベルリンに住んでたら毎日ここに通っちゃいそう」と映画好きな顔をのぞかせた。
「ブランデンブルク門」前では、ヴェンダース監督の代表作である『ベルリン 天使の詩』で有名になった天使の像がある戦争勝利記念塔を見つけ、大興奮。
続いて、ブランデルグ門そばにある有名なカフェ「Tucher am Tor」でランチ。名物のカリー・ヴルスト(カレーパウダーをかけたソーセージ料理)を堪能。「このお料理は、ものすごく好きな味! ようやくドイツらしいお料理が食べられた!」と大喜び。この店のドイツ家庭料理がとても気に入った様子で、他にもRindfleischeintopf mit Gemuese(牛肉と野菜の煮込み料理)、KoenigsbergerKlopse(ケーニッヒスベルグ風肉団子)、Berliner Kartoffelsuppe(ベルリン風ポテトスープ)、Regionale Fischsuppe(田舎風魚のスープ)、Kuerbissuppe(パンプキンスープ)、Blechkuchen(リンゴとクランブルのケーキ、チェリーとチョコレートのケーキ)を楽しんだ。
お腹がいっぱいになったところで、いよいよベルリン国際映画祭の会場へ移動。映画祭チケット売り場では『リトル・フォレスト』の表示を見つけて大喜び。大勢の人たちが並んでチケットを買っている姿を見て「ベルリンの街全体が映画祭一色になるんですね」と感動した様子。メイン会場のBerlinale Palast(ベルリナーレ・パラスト)前で夜の公式上映に向けて思いを新たにしていた。
(オフィシャル素材提供)
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