2022-05-12 更新
ヴィム・ヴェンダース(映画監督)、役所広司(俳優)、安藤忠雄(建築家)、長谷部健(渋谷区長)、柳井康治(プロジェクトオーナー)、高崎卓馬(クリエイティブディレクター)
常に挑戦的に活動、日本でも絶大な人気を誇るドイツ出身の映画監督・ヴィム・ヴェンダースが東京・渋谷を舞台に自身の最新作を撮影することが決定、本日都内で世界発信された。ヴェンダース監督がその趣旨、社会的意義に賛同した「THE TOKYO TOILET プロジェクト」。このプロジェクトでは、世界的に活躍する16名の建築家やクリエイターがそれぞれの個性を発揮して、2020年から東京・渋谷区内17ヵ所の公共トイレを新たなデザインで改修し、現在までに12ヵ所が完成している。それは、従来の公共トイレのイメージを刷新、日々の生活に共存するアートに昇華されており、現在日本だけでなく海外からも大きな注目を集めている。
今回、ヴェンダース監督は現在の東京、渋谷の街、「THE TOKYO TOILET」で改修された公共トイレを舞台に映像製作を行う。2011年以来11年ぶりの来日、東京・渋谷の街並みやプロジェクトの公共トイレ等を視察しながら、シナリオ・ハンティングを敢行。記者発表では、TTTプロジェクトに参加している建築家の安藤忠雄と長谷部健渋谷区長を迎え、小池百合子東京都知事からも東京での撮影に関しての全面サポートを発表した特別メッセージを受領、このアート・プロジェクトの魅力や、監督が改めて見つめる東京・渋谷の変貌、そして“アート”は私たちに何を問いかけるのかを語った。
まずは、記者発表の前にTTTプロジェクトで実際に公共トイレの一つを設計した建築家の安藤忠雄、TTTプロジェクト・オーナーである柳井康治、そしてプロジェクトの責任者である日本財団から笹川順平が参加して、安藤忠雄が設計を手がけたトイレ「あまやどり」の視察を行った。そこでは、柳井氏が「オリンピックのタイミングでいろいろな方が海外から来られるということでその時に、東京いいなって思ってもらえることが最初のきっかけです」と趣旨を紹介、その後、安藤氏が「一般的に、どこでも綺麗なものじゃないトイレが美しかったら、海外から来た人に日本の心は伝わるだろうというコンセプトのもと、光も風も入ってくることで美しさを出せるよう考えました。また急な夕立ちで雨宿りができると良いなと思い設計しました」と説明、最後に本TTTプロジェクトの清掃業務に協力している東京サニテイション・渡邊氏が実際の日々の清掃の様子を来場メディアに説明、なるべく水を使わない清掃手順など、今までの公共トイレとは違う点をいくつか指摘した。
続いて、外での特別視察ツアーが終了した後、渋谷区の某ホテル内にて記者発表会が開催された。本プロジェクトの趣旨を説明する記者会見ではTTTプロジェクトオーナー・柳井康治氏、クリエイティブディレクター・高崎卓馬氏が登壇。まず初めに柳井氏よりTTTプロジェクトに関して「日本財団の笹川順平さんのもとにこの企画を一緒にやってもらえないか相談しに行ったことをきっかけに、THE TOKYO TOILETという名前、日本って、東京って良いところだなと老若男女の方々に思ってもらえるようなことをコンセプトに企画を推進させていただきました。2020年からこの企画を進めてトイレも少しづつ完成していき、多くの方からも概ね好評を頂きましたので、更にこのプロジェクトを広げて行ければと思います」と述べた。
クリエイティブディレクターの高崎は、「プロジェクトが立ち上がり、トイレが出来上がっていった後、柳井さんに声をかけられ、一番最初はトイレをどう維持・管理していくか、そういう意識変化をどうしていくかが企画の最初に入り口でした。そういった人の意識を変える、常識を変えることができるのはやはり「アートの力」であるという考えにたどり着き、アートの力を使って、このTTT プロジェクトを進めていこうと思いました。そして、この企画を誰と実現しよう?となった時にヴェンダース監督の名前が挙がりまして、実現できたらワクワクすることを基準にクリスマス頃に、熱意を込めた手紙を書いてアタックしてみたところ、ご快諾いただき、企画が加速度的に動き出しました。また、シナリオも固まっていない中、清掃員を主人公に役所さんを迎えることができ、ポジティブな力を集めることができました」と経緯を語った。
二人の挨拶後、トークセッションではロケーション視察のためにドイツより来日したヴィム・ヴェンダース監督、役所広司が登場。柳井氏より「ヴェンダース監督が過去に手がけた『パリ、テキサス』や『ベルリン・天使の詩』などが大好きで、毎回作品を通していろいろなものを問いかけていますよね。今回、清掃という行為の尊さ、建物を維持・管理することに清掃員の方の多大な協力があることを、東京を舞台に伝えたいと思った時に、それを実現できるのはヴェンダース監督しかいないと思いました」と述べ、それを受けてヴェンダース監督は「本当にこの場に居られることを大変光栄に思っています。皆さんからお手紙を頂いた時は本当に最高のクリスマス・プレゼントだと思いました。東京はしばらく来ることができず少しホームシックでしたが、今回ようやく来日することができて、そしてこのTTTプロジェクトを実際に目にすることができてワクワクしています」と語った。
高崎氏は「ヴェンダース監督、役所さんという、大好きな二人でここから何が生まれるのか興奮しています」と述べつつ、主演の役所は「この場に立たせていただいて幸せです。柳井さんの発想から生まれた『THE TOKYO TOILET』を舞台にヴェンダース監督が作品を手掛ける……この作品を断る俳優はいないのではないかと思います。ヴェンダース監督の作品に参加できるということで、俳優になって40年この業界にしがみついてよかったと思えるくらい、本当に素晴らしいご褒美だと思います。この作品を通して、日本という国を紹介していきたいです」と感慨深げに語った。
今回のアート・プロジェクトではどんなものを作るのか?という問いに、ヴェンダース監督は「大きなチャレンジであるこの企画では、社会的に意義があるものを、自由な発想で何章かに分けて作り上げたい」と語り、主演の役所については「いろいろな作品を拝見しています。自分というものがありながら、作品や環境によって全く異なるキャラクターを演じ分けることができる俳優だと思っています。私は好きではない俳優とはお仕事ができないのですが、役所さんは本当に最初から好きになりました。悪い役を演じている時でも凄く良いなと思っていたので、なぜここまで私は役所さんのことが好きなのか?ということを知るためにも、ぜひお仕事をご一緒したいと思っています」と役所へラブコール。それを受けて、役所は「今回の作品で監督に嫌われないように頑張りたいです(笑)。先程、物語の話をきいて、トイレという場所を舞台に365日一日3回清掃する男性清掃員の物語とのことで、とても美しい物語になりそうな気がしました」と意気込みを語った。
そんな二人の話をうけて柳井氏は「日本や東京を見続けている監督ですし、今の東京、渋谷をどういうふうに感じられて、どのように撮られるのか関心がありますし、そこに役所さんが加わるということで期待しかないです。作品で描かれるのが、できれば最高の渋谷、最高の東京であったらいいなと思います」と述べた。
ここで、The Tokyo Toilletを設計した建築家・安藤忠雄、渋谷区長が登壇。安藤氏に関して柳井氏は「ユニクロの店頭でオリーブ基金を一緒にしていた繋がりが最初にきっかけで、このプロジェクトについて相談した際も内容も聞かずに“やったるよ”と。ええことやろうとしてるんやったら、一緒にやろう!と二つ返事でご快諾いただきました」と参加の経緯を説明。安藤氏は「最初に柳井さんと笹川さんが意義のあることをしたいといったので賛成しまして、話を聞いてるうちに美しいトイレを通して日本の美意識を発信したいと聞き、参加しました」と述べた。
また安藤氏とヴェンダース監督とは以前から交友があり、久しぶりの再会にヴェンダース監督は「安藤先生の作品は以前から敬愛しています。アメリカ、ヨーロッパでの作品やパリのオープニングにも伺いました。彼とは繋がりを感じていて、真の同世代のクリエイターだと思っています」と語った。ひとしきりのトークセッションが終わったのち、小池東京都知事より、本プロジェクトへのメッセージも寄せられた。
最後には質疑応答も実施。いくつかの質問をヴェンダース監督や役所が応えた後、記者会見は終了した。
【THE TOKYO TOILETプロジェクト】
柳井康治と日本財団が、多様性を受け入れる社会の実現を目的に実施する公共トイレ改修プロジェクト。渋谷区全面協力の下、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレを区内17ヵ所に設置する。趣旨に賛同する16人のクリエイターが参画し、デザイン・クリエイティブの力で、新しい社会のあり方を提案する。
■ TTTプロジェクト(日本財団)特設サイト: https://tokyotoilet.jp/(外部サイト)
(オフィシャル素材提供)
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