2022-05-04 更新
「日本におけるイタリア年」をきっかけに2001年に始まり、毎年の恒例イベントとして今年で22回目の開催となる「イタリア映画祭2022」が、東京(4/29ー5/4)・大阪(5/14ー15)にて開催中。
東京会場/渋谷・ユーロライブでは大型連休にあわせて「イタリア映画祭2022」が開幕。初日には開会式や舞台挨拶が行われ、その後もいくつかのプログラム上映後にはリモート形式でゲストが登壇。鑑賞直後の観客とのQ&Aでゲストと交流する場面もあり、東京では3年振りとなるフィジカルな開催に活気づいている。
「イタリア映画祭2022」開会式&トークイベント
会場:ユーロライブ(東京都渋谷区円山町1-5 ユーロスペース内/KINOHAUS 2F)
※Q&A、トークショーはいずれも上映後実施。※★印の回は会場に登壇して実施、その他すべてリモート登壇。
東京会場
4/29 ★14:30~『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』田邊アツシ監督、土田康彦氏(ヴェネチアンガラス作家)
17:15~開会式 アルベルト・マナイ(イタリア文化会館館長代理)、ジャンルイジ・ベネデッティ(駐日イタリア大使)
4/30 10:15~『アッカトーネ』野村雅夫氏(ラジオDJ《FM COCOLO》、翻訳家)
17:40~『3つの鍵』ナンニ・モレッティ監督
5/1 16:10~『内なる檻』レオナルド・ディ・コスタンツォ監督
19:10~『スーパーヒーローズ』パオロ・ジェノヴェーゼ監督
5/2 ★13:10~『笑いの王』高田和文氏(静岡文化芸術大学名誉教授)
5/3 15:45~『そして私たちは愚か者のように見過ごしてきた』ピエルフランチェスコ・ディリベルト監督
5/4 16:00~『ある日、ローマの別れ』エドアルド・レオ監督
19:00~『ディアボリック』マネッティ・ブラザーズ監督
大阪会場
5/14 ★12:15~『ある日、ローマの別れ』野村雅夫氏(ラジオDJ《FM COCOLO》、翻訳家)
初日の4/29には開会式が行われ、アルベルト・マナイ(イタリア文化会館館長代理)、ジャンルイジ・ベネデッティ(駐日イタリア大使)の両名がリモートで挨拶。コロナ禍の中での開催について触れながら、イタリアと日本を繋ぐ架け橋となる本映画祭のラインナップ、見どころなどを解説。日本で未公開の作品や上映権利がなかなか得ることのできないピエル・パオロ・パゾリーニ監督、ナンニ・モレッティ監督の初期作品の上映など貴重な機会を楽しんでもらえたら、と観客へ呼びかけた。
本映画祭の初めての試みであった日本発のドキュメンタリー作品『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』の特別上映には田邊アツシ監督とヴェネチアンガラス作家の土田康彦さんが登壇し、息の合った掛け合いを披露。田邊監督は、長年にわたる撮影の末にようやく撮ることに成功したヴェネチアという土地特有のアックアアルタ(満潮時)の撮影秘話やGLAY・TERUさんによるエンディング曲にいたった経緯、次回作の構想などを明かした。
特集も組まれた今秋新作『3つの鍵』の劇場公開を控えるナンニ・モレッティ監督も日本での初上映に際し、リモート登壇。鑑賞直後の観客から様々な質問が寄せられ、時間の許す限りQ&Aを実施。自身も俳優として自作に出演することも多いモレッティ監督へもし自分以外が演じるなら誰が良いか、との問いかけに「自分と年齢が近い良い役者もいるのだが、監督の意図を汲む一番の理解者は私自身、ですから自分で演じることにしました。本当は他の監督の作品に役者として出演するほうが気苦労も少なくていいけれど、C.イーストウッドが90歳でなお監督&主役をしているんだから……68歳の私もまだまだできるはずです」と少しおどけてみせる一幕も。さらにローマに自身で映画館を作り経営者としての顔も持つモレッティ監督は、配信サービスと劇場との並行した現在のリリース形態についても言及。「(劇場公開は)極めて困難な状況でもあるが、わたしは劇場での公開にこだわりたい。封切りは映画館だ!」と熱く語り、会場をおおいに沸かせていた。
オンライン上映、日程が決定!
1部、2部に期間が分けられ、それぞれ約10作品ずつの配信となる。映画祭で上映されたエドアルド・レオ監督・主演作『ある日、ローマの別れ』など数本の長編映画の他、無料で視聴ができる短編映画作品が取り揃えられる予定となっている。
今後の情報更新などの続報は、公式サイト、公式twitterで告知予定なのでぜひあわせてチェックしてほしい。
<<イタリア映画祭2022 オンライン上映>
1部:5/19~6/19 新作&短編
2部:6/23~7/24 過去映画祭での上映作品&短編
▼大阪会場
会期:5月14日(土)~5月15日(日)
会場:ABCホール(大阪府大阪市福島区福島1-1-30)
上映作品、スケジュール:https://www.asahi.com/italia/2022/timetable_osaka.html(外部サイト)
※あさチケ(https://l-tike.com/st1/asahi-id-top-14/sitetop、外部サイト)にてチケット発売中。
※前売り一般1,400円/学生1,100円、当日一般1,700円/学生1,400円
主催:朝日新聞社、イタリア文化会館、チネチッタ
特別後援:イタリア共和国大統領
後援:イタリア大使館、イタリア総領事館
公式サイト:http://www.asahi.com/italia/(外部サイト)
公式twitter:@italianfilmfes
上映作品ラインナップ
<新作>
『マルクスは待ってくれる』 原題:Marx può aspettare
監督:マルコ・ベロッキオ
出演:マルコ・ベロッキオらベロッキオ家の人々
(2021年、90分)
第74回カンヌ国際映画祭で名誉賞を受賞した巨匠マルコ・ベロッキオのドキュメンタリー。ベロッキオ家の人々や関係者の証言、ニュース映像などを重ねながら、若くして脚光を浴びたマルコとは異なった道を進んだ双子の弟カミッロが29歳の若さで自殺した真相に迫る。また、同時にその死が監督自身の人生やフィルモグラフィーにどのような影響を与えてきたのかも明かされていく。
『キアラへ』 原題:A Chiara
監督:ジョナス・カルピニャーノ
出演:スワミー・ロートロ、クラウディオ・ロートロ、カルメラ・フーモほか
(2021年、122分)
カンヌ国際映画祭監督週間でEuropa Cinemas Label(最優秀ヨーロッパ映画)に輝いた若き俊英ジョナス・カルピニャーノ監督(『チャンブラにて』『地中海』)の第3作。南イタリア、両親と姉妹とともに暮らす15歳のキアラは充実した日々を過ごしていた。だが、姉の誕生パーティーが盛大に行われた直後に、父親が忽然と姿を消す。失踪した理由とは? キアラは自ら父を捜し始める。
『小さなからだ』 原題:Piccolo corpo
監督:ラウラ・サマーニ
出演:チェレステ・チェスクッティ、オンディーナ・クワドリほか
(2021年、89分)
カンヌ国際映画祭批評家週間でプレミア上映され、注目を集める女性監督ラウラ・サマーニのデビュー作は、困難や抑圧に立ち向かう女性の物語。20世紀初頭のイタリア北東部、女の子を死産したアガタは悲嘆に暮れていた。洗礼を受けられずに亡くなった赤子は、永遠に辺獄をさまようと信じられていたからだ。だが、一瞬だけ死んだ赤子を蘇らせ、洗礼を授ける教会があると聞き、苦難の旅に出る。
『笑いの王』 原題:Qui rido io
監督:マリオ・マルトーネ
出演:トニ・セルヴィッロ、マリア・ナツィオナーレほか
(2021年、133分)
19世紀から20世紀にかけてナポリ演劇を代表する劇作家・役者だったエドゥアルド・スカルペッタの栄枯盛衰を、ナポリ出身のトニ・セルヴィッロの圧巻の演技とともにたどる。喜劇王として大人気で、莫大な富で豪邸も建て、成功を収めていたスカルペッタだが、偉大な詩人ダンヌンツィオの悲劇のパロディを上演することで状況は激変する。ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品。
『内なる檻』 原題:Ariaferma
監督:レオナルド・ディ・コスタンツォ
出演:トニ・セルヴィッロ、シルヴィオ・オルランドほか
(2021年、117分)
イタリアを代表する名優トニ・セルヴィッロとシルヴィオ・オルランドが共演。その対決が見応えたっぷりのディ・コスタンツォ監督の第3作。閉鎖が決まった刑務所で、移送先の都合で受刑者12人が一時的に残され、刑務官15人が監視にあたることになる。ケータリングになった食事はまずく、活動を制限され不満を強める受刑者たちと刑務官たちの間に緊張が高まる。ヴェネチア国際映画祭特別招待作品。
『アメリカ・ラティーナ』 原題:America Latina
監督:ディンノチェンツォ兄弟
出演:エリオ・ジェルマーノ、アストリッド・カザーリほか
(2021年、92分)
イタリア映画新世代の台頭の象徴的存在であるディンノツェンツォ兄弟。その第3作は、前作に続いてエリオ・ジェルマーノを主演に迎えたスリラー。中年の歯科医マッシモは、新興都市ラティーナの庭付きのモダンな邸宅で、妻と思春期の娘2人と平穏に暮らしていた。しかしその穏やかな日常は、自宅の地下室に下りていったある日から崩壊していく。ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品。
『そして私たちは愚か者のように見過ごしてきた』 原題:E noi come stronzi rimanemmo a guardare
監督:ピエルフランチェスコ・ディリベルト
出演:ファビオ・デ・ルイージ、イレニア・パストレッリ、ピフほか
(2021年、108分)
笑いと恋愛の中にも巧みに風刺を織り込みながら、労働システムの劣悪化を痛烈に批判するピエルフランチェスコ・ディリベルト監督(『愛のために戦地へ』)のコメディー。企業の管理職にあったアルトゥーロは、自らが導入したアルゴリズムによって解雇される羽目になる。恋人も友人も失い、貯金もない48歳の彼が唯一探し当てた仕事は、グローバルIT企業フーバーが経営する飲食宅配代行の配達員だった。
『ある日、ローマの別れ』 原題:Lasciarsi un giorno a Roma
監督:エドアルド・レオ
出演:エドアルド・レオ、マルタ・ニエト、クラウディア・ジェリーニほか
(2021年、116分)
『いつだってやめられる』シリーズで人気のエドアルド・レオの監督・主演作は、ローマの街並みの美しさを存分に堪能できるロマンチック・コメディーで、長年交際しているカップルの恋愛の難しさを描く。小説家トンマーゾは、本名を明かさずペンネームで恋愛相談コラムの執筆もしていた。ある日、長い付き合いとなった恋人を傷つけずに別れたいという相談が寄せられるが、相談者は恋人のゾエだった。
『ディアボリック』 原題:Diabolik
監督:マネッティ・ブラザーズ
出演:ルカ・マリネッリ、ミリアム・レオーネ、ヴァレリオ・マスタンドレアほか
(2021年、134分)
イタリアの人気漫画が原作のエンターテインメント作品。1960年代、架空の国クレルヴィル。冷酷非道な連続強盗犯ディアボリックは、富豪の夫を亡くし南アフリカから帰国したレディーのエヴァ・カントが持つピンクダイヤモンドを盗もうとするが、敏腕警部ジンコがそれを阻むべく追跡する。ダークヒーローを演じるのは、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のルカ・マリネッリ。
『スーパーヒーローズ』 原題:Supereroi
監督:パオロ・ジェノヴェーゼ
出演:アレッサンドロ・ボルギ、ジャズミン・トリンカ、グレタ・スカラーノほか
(2021年、121分)
世界20カ国以上でリメイクが相次いだ『おとなの事情』のパオロ・ジェノヴェーゼ監督の最新作は、論理的思考の持ち主である物理教師マルコと、衝動的な漫画家アンナの若いカップルの大恋愛劇。しばしば喧嘩し、噓もついたりして危機的状況を迎える2人だが、なんとかそれを乗り越えようとする。主演は、イタリア映画界を代表する顔となったジャズミン・トリンカと人気急上昇中のアレッサンドロ・ボルギ。
<特別上映>
『3つの鍵』 原題:Tre piani
監督:ナンニ・モレッティ
出演:マルゲリータ・ブイ、リッカルド・スカマルチョ、アルバ・ロルヴァケルほか
(2021年、119分)
ローマの高級住宅街。同じアパートに住む3つの家族。顔見知り程度の隣人たちの扉の向こう側の顔を誰も知らない。ある夜の交通事故をきっかけに、それぞれがした選択が、次第に彼らをぎりぎりの淵まで追い詰めていく。扉を固く閉ざしてしまった彼らの、未来への扉を開く鍵は何なのか? 第74回カンヌ国際映画祭正式上映作品。9月、HTC有楽町他全国順次公開。
『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』 原題:Magone – uno studio su “I crocevia del Fato” di Tsuchida Yasuhiko
監督:田邊アツシ
出演:土田康彦、宮脇花綸、臺佳彦、403 architecture[dajiba]、大友香里、TERU
(2021年、96分)
ヴェネチア在住でムラーノ島にスタジオを構える唯一の日本人であるヴェネチアンガラス作家・土田康彦。その作風から「ガラスの詩人」の異名を持つ土田は、調理師としてパリで修行した経歴を持ち、近年では小説家としてもデビューするなど、ジャンルを超えた作家とのコラボレーションでも注目されている。本作はその人物像、創作の秘密に迫るドキュメンタリー。
『息子の部屋』 原題:La stanza del figlio
監督:ナンニ・モレッティ
出演:ナンニ・モレッティ、ラウラ・モランテ、ジャズミン・トリンカほか
(2001年、99分)
カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作にして、モレッティが一躍世界の巨匠の仲間入りを果たした傑作。家族が直面する喪失と再生を優しいまなざしで描く。イタリアの小さな港町で、家族と平穏な日々を送る精神科医のジョヴァンニ。ある日曜日、彼は息子と過ごす予定だったが、急な往診でキャンセルになる。しかしその日の午後、息子は出かけたダイビングで溺死してしまう。
『夫婦の危機』 原題:Il caimano
監督:ナンニ・モレッティ
出演:シルヴィオ・オルランド、マルゲリータ・ブイ、ジャズミン・トリンカ
(2006年、112分)
映画制作の過程で起こる騒動を通じて、家庭や仕事、イタリア政治の危機を描くコメディー。公私共に行き詰まるプロデューサーの元に、監督志望の若い女性が脚本を持ち込む。ある勘違いから制作する羽目に陥るが、それはイタリア首相を糾弾する内容だった。カンヌ映画祭コンペティション部門に出品され、イタリアのアカデミー賞ことダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では作品賞をはじめ計6部門で受賞。
『アッカトーネ』 原題:Accattone
監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
出演:フランコ・チッティ、フランカ・パスットほか
(1961年、117分)
詩人、小説家、脚本家として活動してきたパゾリーニの記念すべき39歳の映画監督デビュー作は、都会の底辺に生き、いらだつ若者たちの姿を映し出す。無職のアッカトーネは、娼婦のヒモとしてローマのスラムをうろつき、無為の日々を過ごしていた。だが、娼婦が逮捕されると状況が一変し、生活に窮する。そんな折に純真な娘のステッラに出会い恋に落ちると、真っ当に生きようとする。
『赤い砂漠』 原題:Il deserto rosso
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:モニカ・ヴィッティ、リチャード・ハリスほか
(1964年、120分)
アントニオーニのミューズで、今年2月に90歳で亡くなったモニカ・ヴィッティ。この名コンビのヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作は、冬の風景に憂いを帯びた女性の孤独と苦悩を浮かび上がらせる。無機質な工場が並ぶイタリア北部のラヴェンナで夫と息子と暮らすジュリアーナ。精神的に不安定な日々を送っていたある日、夫から会社の同僚を紹介されると、次第に心をひかれていく。
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