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2015-09-08 更新
日本のみならず国際的に不朽の名を残す不世出の大スター、三船敏郎の映画に捧げた人生を映したドキュメンタリー『MIFUNE:THE LAST SAMURAI』。この度、第72回ヴェネチア国際映画祭のヴェネチア・クラシックス:ドキュメンタリー部門に招かれ、残念ながらスティーヴン・オカザキ監督は新作撮影のためヴェネチア入りがかなわなかったものの、三船敏郎の孫にして本作でアシスタント・プロデューサーも務めた三船力也氏と、長年三船と現場を共にした中沢敏明プロデューサーが上映前の挨拶に立った。
まず、三船力也氏は「祖父が『用心棒』(61)と『赤ひげ』(65)で主演男優賞を頂いたこのヴェネチアで本作を上映させていただけることは大変な喜びです。日本映画の黄金期を駆け抜けた祖父の人生を通じて、サムライ映画の神髄にも触れていただけましたら幸いです」と、流暢な英語で挨拶した。
続いて中沢プロデューサーが「私は28年間、三船さんと仕事をしてきました。彼は私生活でもサムライだったと言えます。一生サムライを演じていましたから、私などは毎日、仕事の上で切られていましたね(笑)。三船が生涯サムライを演じていたということは、このドキュメンタリーを観る上で大きな鍵となっています。どうぞお楽しみください」と語った。
本作は、伝統的なチャンバラ映画の系譜を追いながら、全く新たなサムライ映画を生み出した巨匠・黒澤 明監督と、その監督にして「役者にはめったに惚れないが、三船にだけは参った」と言わしめた三船敏郎の、国際的にサムライ映画のアイコンともなった俳優人生の軌跡を、共演者の香川京子、八千草薫、土屋嘉男や親族・関係者の話も交えつつ浮き彫りにしていく。
神風特攻隊として飛び立っていく年端もいかない少年兵たちを、「天皇万歳!なんて言わなくていい。最後は“母ちゃん”と叫んでいいんだぞ」と送り出したと涙ながらに語ったいう、息子・三船志郎氏が明かす逸話、素顔も『七人の侍』の菊千代そのものであったけれども、一方で気遣いの人だったという香川京子、その人となりを一言で表すなら「忍耐の人だった」という(『七人の侍』で利吉を演じた)土屋嘉男の話、あたかも三船の後を追うかのように亡くなった病床の床にある黒澤監督の、盟友に捧げる慟哭を秘めた弔辞などから、華やかで豪放磊落に見えた大スターの繊細で心優しい実像とその魅力を余すところなく伝え、心に深く染み入る一作となっている。
本作は2016年日本公開予定。
(取材・文:Maori Matsuura、写真:オフィシャル素材提供 - la Biennale di Venezia©2015)
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