このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Media Playerをダウンロードする
2015-09-11 更新
『田舎の日曜日』(84)、『ラウンド・ミッドナイト』(86)、『今日から始まる』(99)などの名作を生み出してきたフランスの巨匠ベルトラン・タヴェルニエ(74歳)が、40年にわたる映画監督としての国際的な業績を称える栄誉金獅子賞を授与され、89年の作品『素顔の貴婦人』の記念上映後、授賞式が行われた。
ベネチア国際映画祭ディレクターのアルベルト・バルベラは「タヴェルニエ監督は完全無欠な映画作家であり、本能的に非順応主義者であり、勇敢なる折衷主義者でもある。一連の作品は、過去40年にわたるフランス映画史において特異な存在感を刻み付けている。映画批評を始めた当初から熱心な擁護者であったにも関わらず、ヌーヴェル・ヴァーグの最もラディカルな時期には属せず、いわゆる「良質なフランス映画の伝統」にも組することなく、とはいえ、そこから幾ばくかの要素を賢明なやり方で進化させ、引き継いできた。ゆるぎない物語の構築、登場人物の作りこみ、心理を深く掘り下げること、文学的な基盤が常に根本にあることなどがそうだ。タヴェルニエにとって、職人気質へのこだわりは、その他の2つの要素と切ってもきれない。一つは、アメリカのクラシック映画への愛で、豊かな表現性を保ちつつスペクタクルを描く方法を学んだ。もう一つは、政治的・社会的テーマに対する一貫して変わることのない情熱で、自身の映画に極めて個人的かつ独創的な色彩を付与していると言えるだろう」と賛辞を贈った。
そして、会場からの温かな拍手で迎えられ、自らのミューズであるサビーヌ・アゼマからトロフィーを受け取ったタヴェルニエ監督は「まずは、私に物事を愛でること、物語の意味を教えてくれた父に感謝したい。妻にも感謝しなければいけない。映画監督と生活を共にするのはとても難しいことなので。そして、フィリップ・ノワレに感謝の言葉を捧げたい。彼なしでは映画を創ることもできなかっただろう」と言い、これまで母国フランスをはじめ、数々の国際的な映画祭で賞を受賞してきた監督ながら、「ロッセリーニ、フェリーニ、リージ、コメンチーニ、スコラなどの監督を輩出したこの国で賞を頂けたのは、とりわけ嬉しい」と大きな喜びを口にした。
フランス映画史に独特の軌跡を残してきた監督だが、そのことに触れられると「正直、あまり興味がない」と言い、「私にとって何よりも大切なのは、自分がこれまで創りたい映画だけを創ってきたこと、自分の自由な裁量で映画を創り、自分で選択し責任を負ってきたことだった」と、控えめながらも確たる自負を込めた言葉で語った。
最後に、冒頭で感謝の言葉を捧げた亡きフィリップ・ノワレについて問われると、「彼は本物の紳士だった。一緒に仕事をしていると、常に大きな喜びを味わされたものだ。俳優という職業に対して厳格な思想を抱いていた人だった。一心不乱に働き、信じられないほど控えめで、極めて繊細で礼儀正しい人物だった。今でも彼のことを考えない日はない」と、2006年に逝去した盟友への想いを明かし、サビーヌ・アゼマと共に舞台を後にした。
(取材・文:Maori Matsuura、写真:オフィシャル素材提供 - la Biennale di Venezia©2015)
関連記事