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2014-06-14 更新
スパイク・ジョーンズ監督、鈴木敏夫プロデューサー(スタジオジブリ)
ケイシー・ストーム(衣装デザイン)
配給:アスミック・エース
6月28日(土) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
© Photo courtesy of Warner Bros. Pictures
スパイク・ジョーンズ監督4年ぶりの長編最新作『her/世界でひとつの彼女』。ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、そして主人公を魅了し、ときに翻弄する人工知能型OSシステム“サマンサ”の声だけの出演にスカーレット・ヨハンソンと、豪華キャストが紡ぐ、誰も感じたことのない愛おしさ、切なさがぎゅっと詰まったラブストーリーだ。
この度、本作の公開を前に4年半ぶりに来日したスパイク・ジョーンズ監督と、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが登壇し、対談トークイベントが行われた。
映画上映後、超満員の観客が待つ中、スパイク・ジョーンズ、衣装デザインのケイシー・ストーム、そしてサプライズゲストのスタジオジブリ 鈴木敏夫プロデューサーが登場すると会場からは驚きと喜びの声が上がった。今日は初対面という二人。スパイクは「ジブリの作品が大好きで、今日お会いできて嬉しいです!」と笑顔を見せ、鈴木さんは「今、『思い出のマーニー』を作っているから、ここに来ている場合じゃないんだけど、僕は昔からスパイクさんの大ファン。だから、今日ここに来ました!」と語り、対面を喜んでいる様子だった。
本作は今年初めに行われたアカデミー賞®授賞式にて脚本賞を受賞。鈴木さんは会場でスパイクのスピーチを聞いていたそうで、「うらやましいなぁと思っていました(笑)」とポツリ。実は『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』を鑑賞したことのあるスパイクは、本作とジブリ作品に共通点があると考えているそうで、「『千と千尋の神隠し』と同じく、この映画の主人公も新しい世界に飛び込むことで、未知なる力を発揮し、チャレンジしていかなければならない。そこに共通点があります」と語る場面も。
鈴木プロデューサーは「スパイクさんの映画はいつもテーマが一貫しているんです。主人公は決してヒーローではなくて、狂気を描いている。そこに共感できるんですよね」と大絶賛し、さらに「スパイクさんは10数年で長編がまだ4本なんですよね? もっとたくさん撮ってくださいよ!」とスパイクに要望を投げかけると、スパイクは「映画を作る作業は時間がかかりますからね。鈴木さんはご存知のはずですよ(笑)!」と返し、会場の笑いを誘っていました。
最後にスパイクは「今日は大好きなジブリの方とご一緒できてとても嬉しかったです。その作務衣スタイルも大好きです!」と、鈴木さんのいつもの作務衣スタイルを褒めながら感謝を述べ、会場を後にした。
【トーク内容】
MC: 映画『her /世界でひとつの彼女』、いかがだったでしょうか? 先ほど、スパイク・ジョーンズ監督も会場に到着しました。早速お呼びいたしましょう! 本作でアカデミー賞®脚本賞に輝き、4年振りの来日となりますスパイク・ジョーンズ監督、衣装デザイナーのケイシー・ストームさん、そしてサプライズ・ゲストに、皆様ご存知のスタジオ・ジブリ鈴木敏夫プロデューサーです! まずはご挨拶をお願いします。
スパイク・ジョーンズ監督: ハーイ! みんな元気ですか? 鈴木さんとケイシーです。今日は来てくださってありがとうございます。日本でこの映画をお披露目できて嬉しいです。ジブリの映画は僕も大好きで、鈴木さんとお会いできることをとても楽しみにしていました!
鈴木敏夫プロデューサー: 僕は本当はここに来ていちゃいけないんですよ。今『思い出のマーニー』を作っているところですから。でも僕はスパイクさんの大ファンで『マルコヴィッチの穴』、『かいじゅうたちのいるところ』『アダプテーション』など全部好きなので、今日ここに来ました!
MC: スパイク・ジョーンズ監督と鈴木さんは今日初めてお話しになるそうですね。お互いの印象はいかがですか? まずはスパイク・ジョーンズ監督お願いします。
スパイク・ジョーンズ監督: 数日前にゲストがどなたかを聞いて大興奮でした! 数分前に初めてお会いしましたが、いろいろと聞きたい気持ちを我慢していました。
MC: 鈴木さんは監督にどんな印象をもたれましたか?
鈴木敏夫プロデューサー: 今年の初めに『風立ちぬ』がアカデミー賞®にノミネートされたから僕も授賞式に行ったんですよ。スパイクさんは脚本賞を受賞して舞台上でスピーチされていたので、うらやましいなぁと思っていました(笑)。
MC: さて、今回鈴木さんには事前に試写会で本作『her/世界でひとつの彼女』をご覧いただきました。映画はいかがでしたか?
鈴木敏夫プロデューサー: 最初にこのストーリーを聞いたとき、人とコンピューターの恋が成立するのか疑問に思っていたんですが、これが素晴らしい作品でした。スパイクさんの映画はいつもテーマが一貫しているんです。主人公は決してヒーローではなく、そして狂気を描いている。主人公にすごく共感できるんですよね。スパイクさんは10数年で長編がまだ4本なんですよね? もっとたくさん撮ってくださいよ!
スパイク・ジョーンズ監督: 映画を作る作業は時間がかかりますからね。鈴木さんはご存知のはずですよ(笑)! 共感してくださったことがとても嬉しいです。ジブリの作品にも同じことがいえると思いますが、マジカルな事であっても、それがキャラクターにとってのリアルでなければ共感できません。そして作り手がキャラクターと同じことを感じなければリアルにはならない。それを描くことが挑戦でした。
鈴木敏夫プロデューサー: あなたの描く主人公はどこか社会から外れていることが多いです。ああいう主人公にするのはなぜでしょう?
スパイク・ジョーンズ監督: そのキャラクターに自分自身が共感するからだと思います。人は悩んだり、チャレンジを繰り返しながら生きていきます。人生はミステリーなんです。『千と千尋の神隠し』でもそうだと思うんですが、千尋は全然違う世界に迷い込むことで未知の力を発揮し、チャレンジしなくてはいけない環境に置かれますよね。サマンサはセオドアの心が離れていくのを恐れてある方法をとります。はたから見るとそれは飛躍しているかもしれませんが、キャラクターにとってはリアルですから。
鈴木敏夫プロデューサー: サマンサ役のスカーレット・ヨハンソンも素晴らしかったですよね。キャスティングは自分でされたんですか?
スパイク・ジョーンズ監督: はい。30人くらいオーディションをしました。鈴木さんもキャスティングの難しさはご存知かと思いますが、声だけで演技してエモーショナルなものを感じさせなければいけない、それが出来るのはスカーレットだけでした。彼女と4~5ヵ月のレコーディングをしましたが、他の女優には出来ないサマンサが出来上がりました。
鈴木敏夫プロデューサー: 僕は元々スカーレット・ヨハンソンが好きなんですけど、最初はなんで声だけなんだろう、顔も見せてって思ってて(笑)。でもあの鼻にかかった声がセクシーで虜になりました。
スパイク・ジョーンズ監督: 彼女は素晴らしい女優であり、この映画で彼女の本質を感じていただけたと思います。彼女は自分を持っていて、自分自身をよく知っている、そしてセクシーです。
鈴木敏夫プロデューサー: この21世紀に映画を撮るためには、やはり孤独を描くことが必要ですか? 昔、映画は公共の多くの人が観るもの、テレビは家族で見るものでしたが、ネットは個人で見るものでしょう? この技術革新で心の内面の在り方が変わってきてると思います。
スパイク・ジョーンズ監督: それは面白い考察ですね。会場の中で自分の親世代より孤独を感じているという方はいますか?
<観客数人が挙手>
スパイク・ジョーンズ監督: 何人かいらっしゃいますね。僕がテーマを考えるときは、その時自分が何に興味を持っているかを大切にしています。この映画ではつながりです。さっき手を挙げてもらったように、コミュニケーションすることが大事なんです。
MC: ありがとうございます。それでは今度は映画をご覧いただいたばかりのお客様より質問を募集したいと思います。どなたかスパイク・ジョーンズ監督に映画の質問はありますか?
観客: 新しい関係というものを見いだせる素晴らしい作品でした。サマンサとセオドアが恋に落ちて夜の営みをするシーンがありますが、画面が真っ暗だったことが新鮮でした。どういう意図であのシーンを撮ったのでしょうか?
スパイク・ジョーンズ監督: 恋愛は誰かとするものですが、自分の中で起きていることでもあります。画面を暗くすることで観る側に暗闇の向こう側を想像してもらったら、よりパワフルなシーンになると思いました。セオドアの気持ちを想像することで初めて共感できるからです。
観客: 素敵な映画をありがとうございます。MVなども撮っている監督ですが、作品の音楽を作るとき、音楽を作ってから作品を作るのか、作品を作ってから音楽を作るのか、どちらでしょうか?
スパイク・ジョーンズ監督: 今回「ザ・ムーン・ソング」をカレンOに作曲してもらい、Arcade Fireとオーウェン・バレットも参加してたくさんスコアを書いてくれました。まず僕が彼らに言葉を伝えます。例えば、「土曜の夜、夏の終わりをとても楽しんだけど、それが終わってしまった時のほろ苦い気持ち」といった感じです。その言葉を元に彼らが曲を作り、撮影がはじまったらそのシーンを観てもらってまた書いてもらいます。脚本で雰囲気は掴めるけど、どんな映画になるか分からない、そんな状況で作ってもらっていました。
観客: サマンサの声は現場で演じたんですか? 後からでしょうか?
スパイク・ジョーンズ監督: サマンサは現場で別の方に演じてもらい、後からスカーレットが録音しました。
観客: 脚本と監督を自分でやることのメリットとデメリットはありますか?
スパイク・ジョーンズ監督: 自分の中で生まれた感情を綴れることはとてもエキサイティングです。でも一人で邂逅し、全部自分で書き直す作業をすることになるので、宿題は誰かとやるのがいいなとも思います(笑)。
MC: ありがとうございます。それでは最後にお二人からメッセージをお願いします。
スパイク・ジョーンズ監督: 今日は来てくださってありがとうございます、鈴木さん。こんなところにいていいんですか(笑)!?
鈴木敏夫プロデューサー: まぁまぁ(笑)。ジブリの映画も面白いですが、『her』はもっと面白いです!
スパイク・ジョーンズ監督: そんな事ないです! 今日は大好きなジブリの方とご一緒できてとても嬉しかったです。その作務衣スタイルも大好きです! お忙しい中、この作品を観に来てくださって本当にありがとうございました。
(オフィシャル素材提供)
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